DIME MAGAZINE
個人情報を狙う偽オペレーター
「あ、えっと……○○という、サ、サイトの料金が未納ですので、ま、まずお、お客様のお名前を……」
明らかに訓練を受けた本物のオペレーターではないことが分かってしまうほど、拙く自信のない口調。ちなみに筆者が未納しているという有料サイトの「○○」だが、これは男の発音がかなり下手というか適当だったせいで聞き取れず、「○○」と表現するしかないことを断っておきたい。
オペレーターは、とにかく筆者の名前を聞きたいらしい。とりあえず筆者は「澤田」だから、そこから即座に連想した「澤田源内」を名乗ってみた。
この名前を知っている人は、かなり斜め上な方向性の歴史オタクである。江戸時代初期に実在した偽書作家沢田源内から名前を拝借したというわけだ。
「さ、さわだ……げ、げ、げんない？ 源内様？ えぇ、それじゃあ次は住所を教えていただけますでしょうか？ それと、電話番号も念のため…」
そうか、奴さんの目的はやっぱりこれか！
筆者の個人情報を詳しく聞き出し、別の詐欺にもつなげようという思惑だろう。やがては筆者の銀行口座とその暗証番号も問うてくるかもしれない。
とりあえず、その手口を知ることができれば男に用はない。
筆者は不意を突くように電話を切った。折り返しの電話をかけてくるのかな、とも思ったがその気配はない。そして今に至るまで、偽NTTファイナンスからの連絡は一切ない。
君たちの命運はもうじき尽きる
特殊詐欺の電話は、こちらが「お前が特殊詐欺だと知っている」という態度を明確に示してやると、それ以降は連絡をしないらしい。
つまり、彼らは突然の連絡で動揺してしまった人のみをターゲットにしているのだ。
料金を請求したり、いきなり「法的措置に出る」と警告する内容の電話はすぐさま切るに限る。が、自分自身はともかく実家の両親がこうした電話を鵜呑みにしてしまったら……という心配を抱いている読者は、決して少なくないのでは。
そこが特殊詐欺対策の難しい点でもあるのだが、こちらが何かしらの料金を払うという段になったら「ワンクッション置く」という態度が必要だということを、実家の両親に説明しなければならないだろう。そのワンクッションの間に家族みんなで相談すれば、かかってきた請求の電話が限りなく怪しいことはすぐに判明するはず。
特殊詐欺の電話には、必ずどこかに「粗」がある。本物を装おうとして装い切れていない粗雑な部分が絶対に存在し、それは事前に身につけた知識があれば高確率で見抜くことができる。
最後に、筆者と言葉を交わした偽オペレーターへ。君たちの手口は、既に広く知られている。たとえ君が海外にいたとしても、日本の警察はここ数年で海外の捜査当局との連携を強化している。それは我が国の外交努力の賜物だが、いずれにせよ君たちの命運はもうじき尽きることを忠告しておこう。
【参考】
ニセ電話詐欺の新たな手口？ ＮＴＴファイナンスかたる不審電話の音声公開 岐阜県警-岐阜新聞Web
https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/207840
「NTTファイナンス」をかたった不審なSMSや訪問及び自動音声による電話にご注意ください-NTTファイナンス
https://www.ntt-finance.co.jp/news/221111.html
取材・文／澤田真一
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