現在の様々な社会事象を分析する土台にもなり得る5作品
清水眞希
DIME本誌編集を経て、@DIMEで主に新製品記事を担当。今回は選外としたが、格闘技系では昭和史の裏側も覗ける『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』もおすすめ。
現在のMMA戦線を考える上でも貴重なドキュメント
完本 1976年のアントニオ猪木
著/柳澤 健 文藝春秋 1012円
2022年10月に79歳で亡くなったプロレスラー・アントニオ猪木。1976年にリアルファイトで行なわれたというW・ルスカ、M・アリ、P・ソンナン、A・ペールワンとの4試合を軸に描く。現在のMMAを考えるうえでも貴重なドキュメンタリーとなっている。
スマホもネットのない時代に書かれた記号論を振り返る
ロラン・バルトによるロラン・バルト
著/ロラン・バルト みすず書房 5280円
学生時代、ゼミにおける記号論のテキストのひとつだった。スマホもネットのない時代に書かれた本書だが、訳註付きの新訳が刊行されているので、再挑戦してみたい。ひとつの単元(エピソード)はそれほど長くはないので、興味のある部分から読み始めるのもあり。
ウクライナ情勢と重ねながら平和や国家について考える
同志少女よ、敵を撃て
著/逢坂冬馬 早川書房 2090円
第2次世界大戦でドイツ軍に母親を奪われた少女が、女性狙撃兵となり……。2021年11月の刊行だが、現在のウクライナ情勢と重ねて読んでしまう。適宜エンタメ要素も織り交ぜながら、平和や国家について考えさせられる作品。2022年本屋大賞受賞も納得。
緻密な画力と大胆な構成は時の流れを感じさせない
AKIRA
著/大友克洋 講談社 全6巻 1650円ほか
第3次世界大戦から37年。再建途上にある東京を舞台に描かれるSFコミック。金田や鉄雄の言動には読み返すたびに考えさせられるものがあり、連載開始から40年を経た作品とは思えない。年月を重ねた分、東京オリンピック開催など、現実と被る設定も魅力のひとつに。
作中に登場する生体素子も現実的に思えてくる
ブラッド・ミュージック
著/グレッグ・ベア 早川書房 1188円
遺伝子工学の天才ウラムが自らの白血球から作った知能を持つ細胞が進化。やがては人類を脅かす存在になっていく……。今読み返すとこれも変異を続けるコロナウイルスを連想させる内容だ。作中の生体素子コンピューター〝ヌーサイト〟も現実的に思えてくる。
文/編集部