君は『アフターバーナー』を知っているか!?
RCカーに設置された360度カメラの映像をVRに転送し、同時に車の動きを『シンクロアスリート』の卵型座席にも反映させる。RCカーのジャイロセンサーからの情報を認識し、それを基に複数の軸を可動させることで「車に乗っている感覚」を忠実に再現する仕組みだ。
このように字面で説明すると、いささか分かりづらいかもしれない。しかし、筆者と同世代かもう少し上の世代の人には通じるであろう類似例がある。
かつて、ゲームセンターにセガの『アフターバーナー』というアーケードゲームがあった。
これは戦闘機F-14を操縦するゲームで、まるで本物のコクピットのような操作系統が特徴だった。操縦桿にスロットル、機関銃やミサイルを発射するボタン。そして何と、ダブルクレイドル筐体はF-14の動きに合わせて前後と左右の軸が動作した。
『アフターバーナー』の登場は1987年。当時は「自分が操縦した通りに座席も動く筐体」そのものが斬新だった。『シンクロアスリート』は、『アフターバーナー』よりも更に可動軸の多い筐体……と表現すればいいだろうか。
壁に衝突しまくった筆者
説明はこの辺にして、実際にRCカーを操縦してみよう。
まずは『シンクロアスリート』の座席にどっかり腰を下ろし、VRヘッドセットを装着する。RCカーのリモコンを手渡されると同時に「画面が出たらスタートしてください」との指示。
しばらく待機した末、筆者の目の前に現れたのはRCカーから見たサーキット内部。おおっ、これは確かにRCカーの運転席に座っているかのようだ!
ところが、実際に操縦してみると壁にゴッツンコの連続……。RCカーからの映像を低遅延で通信しているということは分かったが、それがかえって運転の難易度を上げている。距離感覚や遠近感を把握しないまま「本物のような視界」を得ているせいで、少し走ってゴッツンコ、バックをしてゴッツンコ、カーブに差しかかったところでゴッツンコ。これ、マトモにゴールすらできねぇぞ!?
散々醜態を晒した筆者がVRヘッドセットを外し、悔しさと恥ずかしさのあまりに会場の隅で体育座りをしていたその時。筆者に代わって卵型座席に座った地元テレビ局の女子アナが、RCカーを上手に操って制限時間60秒以内でコースを1周してしまったではないか。
こ、これって天性の運転センスが容赦なく反映されちまうんだな……。
交通安全教育に最適
「若者の車離れ」という言葉が言われて久しい昨今だが、このシステムは小中学生対象の交通安全教育にも活用できるのではないか。
『シンクロアスリート』で得られる視界は360度。つまり、首を振って左右後方の確認ができるということだ。
路上を走る自動車のドライバーは、どのような景色を見ているのか。それを小中学生に疑似体験させることで、「横断歩道の渡り方」や「自転車の安全な乗り方」などを学ぶことができるはず。
リアルタイムの大容量通信は一人称視点の疑似体験を可能にし、我々の住むこの世界をより良い環境にしようとしている。
【参考】
シンクロアスリート
https://synchroeye.com/
取材・文/澤田真一