静岡ホビーショー2023に登場の「シンクロアスリート×RCカー』
一人称視点。ゲームでは一ジャンルを築いてしまったこの概念は、もっと他の可能性に満ちているのではないだろうか?
東京工業高等専門学校の学生が開発した『シンクロアスリート』は、視界だけでなく身体全体で一人称視点を体験するVRシステムである。
モータースポーツやスピードスケート、カヌー、車椅子競技等の選手が競技中に何を見ているのか、どのように全身が揺れ動いているのかを物理的に再現する。
そんな『シンクロアスリート』を使ってラジコンを楽しもう、という企画が今年の静岡ホビーショーで催された。
RCカーと「WiGig」
静岡ホビーショーは、静岡市に国際色をもたらしてくれる一大イベントである。
ところが2020年はパンデミックの影響で中止、2021年は業者向けの開催のみ。2022年からようやく一般向け公開が再開されたものの、その規模はパンデミック前よりも縮小した。そして実のところ、今年の静岡ホビーショーも「かつての盛況」を取り戻してはいない。
一般公開日は事前予約制で、定員も設けられている。COVID-19は既に「5類感染症」になったが、それにもかかわらず2022年のような分散来場も実施された。5月10日と11日はメディアを含む業者招待日、12日は小中高生招待日、そして13日と14日が一般公開日である。
此度の『シンクロアスリート』の報道発表会、厳密に言えば静岡ホビーショーの周辺イベントであるRCカーフェスティバルは、メイン会場ツインメッセ静岡の隣に位置する静岡市南部体育館で行われた。これも恐らく、来場者を分散するためだろう。
体育館の片隅に設置されたRCカー用のサーキット。このRCカーは静岡市の誇る模型メーカー・タミヤの製品だが、サーキットの横には『シンクロアスリート』、そしてこのイベントの広報を担当するのはどういうわけかNTT西日本の関係者である。
「あのRCカーにはカメラが搭載されています。そのカメラの映像は『シンクロアスリート』に無線送信されます。使用している通信規格はWiGig(ワイギグ)というもので、60GHz帯の電波を用います」
NTT西日本静岡支店広報室長の池ヶ谷弦氏は、筆者にそう説明した。
「サーキットの四隅をご覧ください。あれはWiGigのアンテナです。この通信規格は大容量のデータを転送できますが、通信距離はせいぜい10mと非常に短いのが欠点。それを補うために、アンテナを4基設置しています」