ローカルバブル(局所泡)
広大な宇宙全体からすれば、〝十分に小さい〟ということらしく、天文学では太陽系周辺を「ローカル(局所)」と表現する。そこで発生した「ローカルバブル」という現象が、星の誕生の秘密を握るとして1970年代から研究が進められてきた。
その全貌が今、観測技術の向上やAIを使ったデータ解析により、明らかになりつつある。
国立天文台台長特別補佐の平松正顕さんがこう解説する。
「私たちのいる太陽系の周りにある宇宙空間は非常に高温で希薄なガスで覆われています。これがローカルバブルです。70年代からその存在は指摘されていたのですが、成り立ちがわかっておらず、形も観測できていなかった」
ところが昨年、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究チームが、ローカルバブルとその境界面で誕生する星々を精密に観測、過去のデータと照合することで、成り立ちを明らかにした。
「ローカルバブルの広がりと星々の誕生には深い関係があり(下図)、太陽もはるか昔にバブルによって誕生したかもしれない。一歩ずつではありますが、私たちが暮らす宇宙のルーツが解明されつつあるのです」(平松さん)
バブルの周りで無数の新しい星が生まれている
約1400万年前の超新星爆発によりローカルバブルは誕生。さらに、ローカルバブルが広がることで周囲のガスが高密度に圧縮され、星が誕生する。バブルは宇宙空間の至る所にあり、現在のものはたまたま太陽の近くに存在している。
観測を可能にした欧州発の超高精度衛星
2013年、欧州宇宙機関(ESA)により打ち上げられた宇宙望遠鏡。全天的な観測をし、これまでに18億個以上の天体データを公開している。私たちの住む太陽系を含む、天の川銀河の地図を作ることをミッションとしている。
取材・文/峯 亮佑