ペロブスカイト太陽電池
2015年のパリ協定の採択をきっかけに、脱炭素社会の実現が世界共通の課題となった。そんな中、桐蔭横浜大学発のとある技術、ペロブスカイト太陽電池が世界的な注目を集めている。
ペロブスカイト太陽電池とは、ペロブスカイト型と呼ばれる結晶構造を持つヨウ素を含む化合物を半導体材料に用いた電池のこと。既存のシリコン系太陽電池と比べて製造コストが安価で、屋内など弱い光でも発電可能。また、この化合物は有機溶剤に溶ける特性を持つ。そのため、薄く柔らかいフィルムなどに印刷すれば、しなやかで軽く、設置場所の制約が少ない太陽電池を作ることができるのだ。現在、ペロブスカイト太陽電池の発電効率は、シリコン系に匹敵する25.7%に達するという。
様々な活用法が話題となる中、同技術の生みの親である桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授は、どのような未来を思い描くのか?
「日常生活の中で、電池の存在を気にしなくなるような社会になるかもしれません。ペロブスカイト太陽電池と蓄電器、ワイヤレス充電器を併用すれば、屋内のいたる場所で発電できますから、スマホのバッテリー切れの心配がないオフィスの実現も夢ではありません」
ペロブスカイト太陽電池は、低コストで薄く、軽量、曲面にも設置できる利点を持つ。EVからスマホまで、あらゆる製品の進化を加速するイノベーティブな技術となりそうだ。
しなやかに曲がる試作モジュール。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構は2025年度末までの実用化を見据える。
今年2月、東急、東急電鉄、桐蔭学園、横浜市の4者は、東急田園都市線の青葉台駅でペロブスカイト太陽電池の実証実験をスタートした。積水化学工業、パナソニックHD、アイシンなどが研究開発に取り組む。
取材・文/渡辺和博