敬語として使われる「仕る」という表現。普段見慣れない言葉のため、読み方や意味がわからない人も多いはず。そこで本記事では、「仕る」の読み方や意味について解説する。最後に解説する英語表現もこの機会にチェックしておこう。
「仕る」の読み方と意味
「仕る」は「つかまつる」と読む。主に相手に対して謙譲の意を表す際に使われる言葉だ。
「仕る」には大きく分けて3つの意味があるが、いずれも尊敬語ではなく謙譲語として使われているため使い方を誤らないように注意が必要だ。ここからは、「仕る」が持つ3つの意味についてそれぞれ詳しく見ていこう。
「する」「行う」の謙譲語
「仕る」は「する」「行う」の謙譲語として使われる。目上の人のために何かをする、また自分の「する」動作に対してへりくだる気持ちを込めた丁寧な言い方だ。この意味で使う場合は「いたします」と言い換えられる。
「仕える」の謙譲語
「仕る」は「仕える」の謙譲語でもある。日常生活の中で使われる機会はあまりないかもしれないが、古語として「(高貴な方のところに)お仕え申し上げる」「仕えり給えり(お供する)」という意味で使われていたことから、時代劇などで見聞きされる用法だ。
謙譲の意を表す補助動詞
「仕る」は、サ変動詞の語幹や動詞の連用形について、謙譲の意味を表す言葉として使われることもある。この場合は「ご…申し上げる」「…いたします」と言い換えられる。
「仕る」の使い方
次に「仕る」の使用シーンや例文を見ていこう。ただし、「仕る」自体が現代ではあまり使われない表現のため、使える場面は皆無でないものの、稀有だろう。なかなかイメージが難しいかもしれないが、想像しながら読み進めてほしい。
使用シーン・例文
【尊敬している人と試合をする時】
「その試合のお相手、私が仕ります」
【引退した××社長の側近である○○さんを紹介する時】
「××社長に長年にわたりお仕え申し上げた○○さん」
【上司を送っていく時】
「私が上司をお送り仕ります」
【上司から受け取った資料をすぐに確認できない時】
「書類を受け取りましたが、現在外出中のため戻り次第すぐに拝見仕ります」
「失礼仕る」「承知仕る」のような使い方も
先ほど紹介した通り、「仕る」は「する」「行う」を意味する謙譲語。そのため、「失礼する」「承知した」の「する」「した」を「仕る」に置き換えて以下のように表現することもできる。
「失礼する」…「失礼仕る」
例文:それでは、お先に失礼仕る(お先に失礼します)
「承知した」…「承知仕った」
例文:先ほどお話していただいた件、承知仕りました(承知しました)
どちらもやや古風な表現で、現在では使われる頻度は少ない。しかし、相手に敬意を示すことができる言葉として、正しい意味や使い方を知っておいて損はないだろう。
英語で相手への敬意を表す表現は?
ここまで相手へ敬意を示す言葉として「仕る」を解説した。最後に、英語で相手へ敬意を表す表現を紹介しよう。
疑問文での丁寧表現
“Would you~?”と“Could you~?”は何かを相手に尋ねたり、頼みごとをしたりする際に使われる英語表現。それぞれどのような違いがあるのかを理解しておこう。
“Would you~?”は相手の意思を尋ねる丁寧表現
“would”は意思を表す“will”の過去形であり丁寧表現として使える。“Would you~?”は「あなたは~をする意思がありますか?」というニュアンスになる。
“Could you~?”は相手に実現可能かを尋ねる丁寧表現
“could”は可能性を表す“can”の過去形だ。“Could you~?”は「あなたは~することができますか?」というニュアンスになる。
以上の2点を踏まえた上で、次の例文をみてみよう。
“Would you help me carry these boxes ?”
“Could you help me carry these boxes ?”
2文とも「これらの箱を運ぶのを手伝っていただけませんか」を意味する。
しかし、“would”を使う場合は、「手伝ってくれる意思はあるのか」というニュアンスになり“could”のフレーズは「(相手の能力や時間の都合の面で)手伝うことは可能か」というニュアンスになる。
この場面では、相手の都合を気遣うニュアンスが含まれる“Could you~?”の方がより丁寧だと考えられる場合が多い。
覚えておくと便利な丁寧表現
ほかにも覚えておくと便利な英語の丁寧表現を紹介しよう。
“Can I just interrupt you for a second?”
(少々お時間いただいてよろしいでしょうか?)
“Could you open the window?”
(窓を開けていただけませんか?)
“I would be grateful if you could read the handout.”
(資料を読んでいただけると助かります)
“Would you mind if I smoke?”
(煙草を吸ってもよろしいですか?)
“Could you tell me the way to the station?”
(駅への道を教えてもいただいてもよろしいですか?)
“Would you do me a favor? I need some help.”
(お願いしてもよろしいですか?助けていただきたいです)
一般的に英語には尊敬語や謙譲語などの敬語はないと言われているが、相手との距離感に応じた丁寧な表現は存在する。特にビジネスシーンでは状況にあった英語の表現が重要だ。すぐに使える丁寧な英語のフレーズをいくつか覚えておくと、仕事や海外旅行の際にきっと役立つだろう。
文/編集部