株式会社グリーンディスプレイ・株式会社ニソールの共同開発製品「botanical light」
再生可能エネルギーを活用した発電方法は太陽光、風力、水力といった主要なものをはじめ、太陽熱発電や海洋エネルギー発電など多岐にわたる。そんななか、国内では2021年に「植物発電」なるものが登場。なんでも、土や水に電極を挿しておくだけで、植物が元気に育つ環境があれば電力を得ることができるという。
どのようなメカニズムで発電が可能となるのか、新エネルギー植物発電「N-Energy(エヌ・エナジー)」を考案した株式会社ニソール(埼玉県狭山市)に、開発の経緯などとあわせて聞いた。
マグネシウム板(−)と備長炭(+)を電極として活用し、土壌のイオン化を促進
株式会社ニソールは基板設計やCADソフトの開発・販売を手がけてきたが、社長の田崎勝也氏は、電源周りにも事業の幅を広げていきたいという考えを抱いていたそうだ。
「植物発電の開発に取り組み始めたきっかけは、『雑草が生い茂って荒れた休耕田を持て余している』という知人からの相談だったそうです。電力開発と環境問題は相反するものというイメージはつきまといがちですが、環境に配慮した新しいエネルギーを作って世の中を良くしていきたい。その想いで2019年から試行錯誤を続け、約2年で今の植物発電のかたちにたどり着きました」(株式会社ニソール 営業部 田崎奈穂氏、以下同)
植物発電「N-Energy」とは、植物の根から発生する糖(デンプン)や微生物、水中の水草や微生物の循環作用から発生するエネルギーを効率よく電極に集め、発電する技術である。
電子を集める電極にて土壌の水とミネラルのイオン化を促進し、植物のミネラル吸収を補助することで発電力がアップする。
「マグネシウム板(−)と備長炭(+)を電極として土や水に入れるだけの簡単な設置構造で、発電による環境への害がなく、植物や環境に優しいというのが特徴です。夜間でも植物が育つ環境である限り24時間発電が可能という点が、太陽光発電との大きな違いです」
マグネシウムは非常用電源にも使われるぐらい発電量が大きい一方、溶けて劣化するという問題がある。溶け出たとしても植物の肥料となるため環境に対してとくに悪影響はないが、酸化チタン入り樹脂コーティング技術(特許出願中)で金属反応を抑えてマグネシウムが溶けにくい加工を施すことで、最長2年間使用できるようになった。
太陽光が届きにくい山林や室内でも日照量や天候に左右されずに発電できるため、イルミネーションやIot機器センサー電源など、電力供給が困難な場所で広く活用されているそうだ。
「過去には、山の中に設置されているイノシシ除けの柵の感知センサーの電源として提供したことがあります。最近は農業分野での問い合わせが多く、育成中の作物の水分量を測定してデータ取得する際のIoT機器の電源として使用したいというご相談もいただいています」
一般向けに植物発電を体験できるキットも販売
植物発電関連の商品としては現在、株式会社グリーンディスプレイとの共同開発製品である「botanical light」という照明器具(電球100球)と、N-Energy植物発電実験キット(電球1個/10個)を展開中だ。
N-Energy植物発電実験キット(税込8,690円)。内容:マグネシウム板×1、備長炭×1、LED制御基板×1、ケーブル×1
発電力:電圧(入力時)0.7〜1.2V、電圧(昇圧後)1.6V〜3V、電流0.1〜20mA
「お子さんから大人の方まで、植物発電はいったいどういう原理なんですか? というお問い合わせを多くいただいたので、それをご自身で試して実感してもらえるようにこの実験キットを作りました。山形大学との産学共同研究では、何もない土よりも、植物が関与している土壌の方が電気の出力密度が高いという結果が出ていますし、海などの塩水でも発電量が大きくなることが判明しています。いろんな条件の環境で試して、電球の光り方の違いなどを比べて楽しんでいただきたいですね」
現状は電極となるマグネシウム板と備長炭がかさばってしまうため、より小さな面積で取得エネルギーを増大させることが課題だ。また、マグネシウムの劣化に加え、備長炭には土に還るという特性もあるため、初期の発電量の長期的な維持も目指すという。
「今後の展開としては、コンポストで生ゴミを堆肥にするエコな資源リサイクルでの発電や、蓄電池への活用に注目しています。24時間ただ発電し続けるだけだともったいないので、たとえば学校の給食で出た食料残渣を堆肥にする。その堆肥を学校の敷地内の土に撒いてそこで発電して、非常用電源として蓄電するといったことができるようになると面白いですね」
株式会社ニソールでは、エネルギー問題を考えてもらうきっかけづくりとして、この夏に「植物発電キット」を活用した作品コンテストを実施予定だ。
「電極を庭の土に挿しても良いですし、家の中のもの、たとえばお風呂の水に入れてみるのもアリです。ぜひいろんなアイデアを出していただければと思います」
―【コンテスト概要】―
・作品投稿期間
2023年8月1日~9月20日
・結果発表
2023年9月29日(金)
・応募方法
株式会社ニソールのアカウントをフォローし、植物発電キットを活用した作品を写した写真をInstagram もしくは Twitter にハッシュタグ #植物発電コンテスト とつけて投稿。
コンテストは、誰でも投稿可能。
最優秀賞(1名)には、賞品 アマゾンギフト券(3万円分)を進呈。その他、特別賞も用意。
詳細はこちらのサイトから。
文/清談社・松嶋 千春