裁判所の判断は?
X弁護士の勝訴です。
経営者弁護士の「キチント引き継ぎなどせずに辞めたよね」という主張に対して、裁判所はザックリ「業務引き継ぎを怠ったという経営者弁護士の主張を裏付ける証拠がない」などとして棄却。「特に問題ナシ」と判断しています。
お次は、パワハラについて。
パワハラ
▼ おめぇふざけんじゃねーぞ!
X弁護士さんがチョンボをしました。資料を郵送していないのに「郵送した」とウソをついちゃったんです。
相手から「届いてませんが…」と報告を受けた経営者弁護士は郵便事故かと思ってヒヤヒヤしたのでしょう。依頼者の個人情報が記載されていた資料だからです。
結局、X弁護士がウソをついていたことが発覚してブチギレ。
ワイシャツの胸ぐらをつかみ「嘘つきやろうが!」「おめぇふざけんじゃねーぞ!」とブチギレ、後ろのロッカーにものすご勢いで何度も叩きつけました。
別の弁護士が仲裁に入って止まった後も、土下座するようカナリ強い口調で命令しました。
▼ 同志が去る
この頃、別の弁護士が辞めます。裁判所に提出された【詫び状】には以下の記載が。
入所当初より面倒を見ていただいたにもかかわらず、恩を仇で返すことになり、●先生には不快な思いをさせてしまいました。全て、私の弱さ、能力の低さが原因であると考え、これ以上ご迷惑をおかけする訳にはいかないため辞める決意をいたしました。身勝手な判断だと分かっていますが、これ以上、精神的には耐えられず、最後の最後までご迷惑をおかけすることになり本当に申し訳ございませんでした
キツイ経営者弁護士だったんでしょう。
▼ フレッシュマンが入所!
その4ヶ月後くらいに、新たな弁護士が入所します。・・・が!
1ヶ月で退職します。
判決文からは退職理由は不明。でもまぁ、何かヤバイ匂いがプンプンしますね。
▼ 正座写真
経営者弁護士はX弁護士に指示を出します。その指示に従ってX弁護士が「お疲れさまです。写真をお送りいたします」というメールとともに、床の上で正座して撮影した写真も送信しました。
▼ クズメール
経営者弁護士はXさんに送信したメールの宛先表示を、クズヤマ・くず・クZと表示しました。
▼ 精神的疾病あつかいをする
経営者弁護士は、ADHD関係の本をX弁護士に渡して「本を読むなどして改善していかないとキミが困るのではないですか?」と「ちゃんと常識を持って行動しないと。●くんに笑われているだろう」とメール送信(●君は新人弁護士のこと)
▼ 暴言
経営者弁護士は、X弁護士のミスが多いと感じていました。依頼者や事務員から苦情があったこともあったようです。
叱るときに以下の発言をしました。
・テメエおら。どういうことやってんだおら
(おらの韻ふみ。ラッパー)
・何回トラブルばかりおこしてんだテメエは。どいうしていっつもこんなトラブルばっかり起こす。懲戒請求の話が出てんだぞ今
・テメエなんか無資格にしてやるぞコラ。そんなに俺のことが怖くて●さんんとかも怖くないんだったら俺が怖いってことを見せてやろうじゃねぇか
(フリーザが変身するときにこんなこと言ってましたね)
・テメエの人生奪うことができるぞオラ。懲戒請求で。ここにある始末書全部出すぞ。●社にも全部協力もとめて協力者全部あおぐぞ
(弁護士資格がなくなったくらいで人生は終わらない)
・クズ、バカタレ、ボケ
(るせー)
私の感想も入っちゃいましたが、X弁護士がほとんど反論しない中、執拗に叱り続けたと認定されています。
ーーー 裁判所さん、これらパワハラですよね?
裁判所
「はい。経営者弁護士の一連の行動は、優越的な立場を利用して、適正な指導の範囲を明らかに逸脱して行われており、違法なハラスメント行為に当たるというほかありません」
ーーー ほんで、なんぼですか?
裁判所
「慰謝料・・・・200万円!」
録音は最強
これレベルの暴言ってブラック企業なら日常茶飯事で飛びかってると思います。営業や体育会系の会社なら挨拶がわりですよね…。録音しましょう!録音は最強です。
あとは、パワハラを受けた時にメモを残す、誰かにメールやLINEを送っておくのも大事です。というのも今回、裁判官がこんなことを言ってたんですよ。胸ぐらをつかんでロッカーに叩きつけた事件を認定するときに。
裁判所
「X弁護士ともう1名の弁護士が経緯の客観的な裏付けを特に残さず、またメモを残すなどの事後的な証拠化もされた形跡がないところは不自然とも思えるが〜」
結局は胸ぐらつかみロッカーごりごりを認定してくれたんですが危なかったですね。裁判官によっては「こんだけ重大なことが起きたんだから何か行動を起こしてるはずでしょ」って考える方もいるので、何か証拠を残しておきましょう!証拠は合わせ技で強くなります。
相談するところ
パワハラの証拠があれば労働局でも損害賠償請求できます(相談無料・解決依頼も無料)。
ガッツリ戦いたい場合は社外の労働組合や弁護士に相談するのも手です。
今回は以上です。「こんな解説してほしいな〜」があれば下記URLからポストして下さい。ではまた次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
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