連載/ゴン川野のPC Audio Lab 今度こそ中野サンプラザで最後のヘッドフォン祭
毎回、書いているような気がするが、中野サンプラザで最後のヘッドフォン祭が4月29日に開催された。次回の「夏のヘッドフォン祭 mini 2023」は7月15日開催予定で、会場はステーションコンファレンス東京と告知されたので、今度こそ本当に中野サンプラザは最後なのだ。
4フロアを使っての展示に発表会とイベントと盛りだくさんの内容のため、1日では周りきれない。さらに試聴するのに整理券を配るブースが増えたため、本日分の整理券は終了という無情の宣告に出会うことも。
今回はそんな中で、個人の耳に合わせたカスタマイズイヤホンに対して、finalが提案する新たなアプローチ。そしてイタリアから上陸したVolumioを採用したデジタルストリーマー。ドイツのプロ機器メーカーの作るヘッドホンアンプ「Violectric」を中心にレポートする。
finalが提案するVR空間での音のフラット化
日本のヘッドホンメーカーfinalはハイエンドワイヤレスイヤホン「ZE8000」を発売したときに予告したカスタムイヤピース提供サービスの詳細を発表した。名付けて「自分ダミーヘッド」である。カスタムイヤーピースと言えばシリコンで耳型を採ってというのがオーソドックスな方法だが、今回は違う。まず、3Dスキャンを使って耳型と上半身のデータを取得する。
これを使ってVR空間にダミーヘッドを作り、理想的なイヤーピースと音響特性をハードウエアとソフトウエアの両面から追求するサービスなのだ。そのためユーザーは3回来社する必要があり、サービス提供価格はイヤホンの価格を上回ることになるという。
カスタムイヤモニターを作成すれば自分の耳にピッタリのイヤピースが完成するが、耳の特性を測定してソフトウエアでカスタマイズする機能は、ANC機能を持つ完全ワイヤレスイヤホンに搭載されることが多い。なぜなら測定に利用できるマイクがイヤホンに内蔵されており、音楽信号をデジタル処理するためDSPも搭載されているからだ。
このため今まではハードとソフトの両面から自分の耳の特性に合ったカスタマイズをする製品は存在しなかった。finalは夏頃からサービスを開始したいとの意向だ。実は「ZE8000」のケースは最初から大きめに作れており、カスタムイヤピースを装着したまま収納できるそうだ。今までのソフトウエアを使った音質補正は、主に音場感や音像定位の向上に効果があったが、同社はそのイヤホンが持つ、本来の音色を正確に再現することを主眼にしているという。この試みは先進的なので私もぜひ体験&記事化したいと考えている。
「自分ダミーヘッド」では測定と調整で3回の来社が必要となる予定
シリコンの型取りではカバー出来ない範囲も精密に測定できる3Dスキャンを採用
耳だけでなく上半全体のデータを使いVRダミーヘッドを作成する
finalオリジナルソフトウエアによりVR空間での音響物理量を調整する
finalはカスタムイヤピースとソフトウエアとDSPにより今まで到達できなかった個人の耳に合わせたカスタマイズを追求する