ワーキングホリデーとは、日本と相互協定を結んでいる国で一定期間にわたり滞在できる制度です。観光・就学・就労が認められるのが特徴で、自由に海外体験を楽しみたい人に人気があります。ワーキングホリデーの詳細や、ビザの申請方法・人気の国を紹介します。
目次
ワーキングホリデーとは?
ワーキングホリデーは、コストを抑えつつ海外で暮らしてみたいと考える人にとって、大きな助けとなる制度です。どのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。
国・地域間で一定期間の休暇&就労を認める制度
ワーキングホリデーは、日本が相互協定を結んだ国や地域で休暇を過ごせる制度です。海外旅行・留学との大きな違いは、就労が認められている点です。ワーキングホリデーなら、アルバイトなどで生活費や旅行費を稼ぎながら生活できます。コスト面の不安を感じずに、現地滞在を楽しむことが可能です。
ワーキングホリデーの対象となる国や地域は、アジアからヨーロッパ・オセアニアまで幅広くあります。ただしアメリカ本土は対象外です。
2023年4月には、イスラエルとのワーキングホリデー協定への署名が行われました。 これにより、中東地域でのワーキングホリデーが実現する予定です。
「ワーキングホリデービザ」で滞在
ワーキングホリデービザとは、観光・就学のほか、就労も可能なビザです。ただし就労はあくまでも付随的なものであり、渡航の主目的とすることは認められません。
ワーキングホリデービザの発給要件は国や地域によって異なりますが、基本的には以下の条件を満たすことが必要です。
- 日本国籍を持ち、日本に居住していること
- 対象国・地域で『一定期間以上休暇を過ごすこと』を主目的とすること
- ビザ申請時の年齢が18歳以上30歳以下であること(一部の国・地域による違いあり)
- 子どもや扶養者を同伴しないこと
- 有効な旅券と復路のチケットまたはチケット購入代金を所有すること
- 滞在当初の生計を維持する上で必要な資金を持っていること
- 健康に問題がないこと
- 過去にワーキングホリデービザの発給を受けていないこと
海外での就労が可能になるビザはまれであり、非常に自由度の高いビザといえます。
対象年齢は原則18歳以上30歳以下
ワーキングホリデーの目的は、青少年に他国・他地域の文化や生活様式に触れるチャンスを与え、相互理解を深めることです。そのためワーキングホリデービザの発給対象は、青少年と見なされる18歳以上30歳以下の人のみに限定されます(一部の国・地域により違いあり)。
なおオーストラリアのワーキングホリデービザについて、一部の人種を対象に2019年より『35歳まで』の年齢制限の緩和が認められましたが、日本に関しては対象外です。
日本からワーキングホリデーに出かける場合、『申請のリミットは対象国の全てで30歳まで』と覚えておきましょう。
ワーキングホリデーに必要な費用
ワーキングホリデーで日本を離れる場合、気になるのが費用です。どのような費用が必要となるのか、確認しましょう。
ビザ申請料金・学費・生活費など
ワーキングホリデーに最低限必要なのは、ビザ申請費用・渡航のための費用・現地で生活するための費用です。具体的には、以下のような費用を準備しておく必要があります。
- ビザ申請料金
- 航空券代
- 保険代
- 語学学校の学費
- 当面の生活費
ビザの申請料金は、渡航先によって異なります。航空券代は航空会社や購入のタイミングによっても異なるので、ベストなレートをチェックしましょう。
保険は強制ではないものの、国によっては加入が求められます。ただし、必須かどうかに関係なく、1年間不安なく過ごすためには、保険に入っておいて損はありません。
またワーキングホリデーでは『語学学校で言葉を学んでから就労』という流れが一般的とされます。語学学校に行く場合は、入学金や授業料の準備も必要です。
このほかに、就業先がなくても慌てずに済むよう、一定額以上の生活費も準備しましょう。
仕事が見つからなくてもしのげる資金が必要
ワーキングホリデーでは就業が認められていますが、すぐに働き先が見つかるとは限りません。語学力に課題があるうちは就業先も限定されるため、収入がなくても暮らせるだけのお金は必須です。
ワーキングホリデーの目的を『異文化体験』と考えれば、就労を前提とした渡航はあまりおすすめできません。現地での収入を当てにしていたものの目論見がはずれて生活に困窮しないよう、余裕をもった資金計画が必要です。
ワーキングホリデーの費用を抑えるコツ
LCCが運航している地域なら、LCCを選択すると渡航費を抑えられます。フルサービスキャリアを選択する場合でも、オフシーズンを選んだり早割を上手に使ったりすることで、よりリーズナブルな渡航が可能です。
また渡航先の希望が特にない場合は、生活費ができるだけ低い国を選ぶ方法もあります。ワーキングホリデー対象国は、『最低賃金が高い国』『職探しが容易な国』『物価が安い国』『居住費が安い国』など多様です。諸条件を比較して、生活しやすい国を選びましょう。
ワーキングホリデーに出発するまでの流れ
ワーキングホリデーに行きたいと考えた場合、どのように手続きや準備を進めていけばよいのでしょうか?目的地の決定から渡航まで、一連の流れを紹介します。
目的と行き先を決める
まずは『ワーキングホリデーで何を達成したいのか』『どのような経験をしたいのか』を考えましょう。滞在の目的を明確にすることで、行き先を絞りやすくなるはずです。
例えば英語を学びたい人は、カナダ・イギリス・アイルランド・オーストラリア・ニュージーランドなどから選択できます。最新のIT技術を学ぶなら、IT先進国といわれるエストニアなどを選択するのもよいかもしれません。
ワーキングホリデービザは、基本的に1カ国につき1回のみです。せっかくのチャンスをムダにしないよう、将来の夢や今の自分の課題などと向き合って、目的・行き先を設定することをおすすめします。
渡航前の諸手続きを行う
ビザの申請は、パスポートを所有した状態で行います。持っていない人は、すぐに都道府県のパスポート申請窓口で手続きを行いましょう。
一方パスポートがすでに手元にある場合は、各国の移民局などのWebサイトでビザの申請条件をチェックします。必要な書類や証明は国によって異なるので、詳細をきちんと理解することが必要です。言葉に自信がない人は、代行サービスを利用してスムーズな申請を目指すのも一つの方法です。
なおビザの発給後にパスポートを更新すると、旅券番号が変更になります。再度発給国に報告しなければならないため、ビザの申請前にパスポートを更新しましょう。基本的には、パスポートの残存期間が6カ月未満なら更新が必要です。
語学学校や滞在先を手配する
言葉に自信がない場合、語学学校で言語を学ぶのがおすすめです。自分のレベルに合った語学学校を探し、申し込みを行います。
またワーキングホリデーは、ホームステイや学生寮からスタートするのが一般的です。自分で滞在先を探すのが難しい場合は、留学やワーキングホリデーのサポートを手掛ける旅行会社などに相談しましょう。現地の情報も教えてもらえるので、条件に合う学校やステイ先を見つけやすくなります。
シェアルームもワーキングホリデーでは定番ですが、その国に慣れないうちは危険です。シェアルームを活用するのは、現地の生活に慣れ、友人をたくさん作った後でも遅くはありません。
航空券・資金の準備・保険への加入
ワーキングホリデーの航空券は、片道のみの購入が基本です。ただし国によっては、帰国用の航空券が求められるケースもあります。航空券を購入する前にビザの申請条件を確認しましょう。
また海外で暮らすなら、クレジットカードが必要になるケースが少なくありません。国際ブランドのクレジットカードを持っていない人は、早めに作っておくのがおすすめです。併せてキャッシュパスポートと呼ばれるプリペイドカードも作っておくと、現金が必要になったときにも慌てずに済みます。
このほかに、ワーキングホリデー保険・海外留学保険などに加入して、もしものときのトラブルリスクを減らしておくことも必要です。
公的手続きや歯科検診
現地での滞在期間が1年を超える場合は、居住している自治体に海外転出届の提出が必要です。手続きをせずに渡航すると、渡航中も住民税や国民健康保険料を請求されてしまいます。郵便物の差止や水道・電気・ガスなどの停止とともに、渡航前に必ず手続きを行いましょう。ただし国民年金については、海外滞在中も納付が可能です。
また海外で歯のトラブルに遭うと、莫大な金額を請求されるおそれがあります。日本にいるうちに悪いところを治し、不安なく過ごせるようにしておくのが理想です。
オーストラリアのワーキングホリデー
ワーキングホリデー対象国の中でも、とりわけ人気が高いのがオーストラリアです。オーストラリアのワーキングホリデーについて詳しく見ていきましょう。
ビザの条件・申請方法
オーストラリアのワーキングホリデービザを申請するためには、以下の書類や料金を用意することが必要です。
- パスポート
- 戸籍謄本
- 婚姻等で名前が変わった場合は、氏名変更に関する書類
- 5,000オーストラリアドル(45万7,500円※)相当の資金を証明できる銀行の残高証明など
- 帰りの航空券または航空代金の証明書
- 申請料金として510オーストラリアドル(4万6,665円※)
上記を準備したら、オーストラリア移民局のWebサイトで『ImmiAccount』を作成して申請します。申請に添付する書類は、全て英語であることが必須です。申請が正しく行われた場合、1カ月ほどで手続きが終わるでしょう。
ワーキングホリデービザの交付を受ければ、入国日を起点として12カ月間滞在できます。同一の仕事先で働けるのは原則6カ月のみですが、特定地域の業種については、場所を変更すれば期間延長が可能です。
※1オーストラリアドル=91.50円で換算
オーストラリアのワーキングホリデーの魅力
多くの人がオーストラリアを選ぶのは、自然豊かで見どころが多い、生活インフラが整っていて治安がよいといった理由からです。衛生面や医療面の不安も少なく、安心して海外生活を楽しめます。
海外からの留学生が多いのは、オーストラリア最大の都市であるシドニーです。このほかメルボルンやキャンベラ、ブリスベンなども多くの外国人が生活しています。
2023年1月時点のオーストラリアの最低賃金は、21.38オーストラリアドル(約1,956円※)です。現地での就労により高収入を得やすい点も、人気の一つといえます。
ただしオーストラリア都市部の物価は、日本より高めです。特に居住費の負担が大きい傾向があるため、現状を理解した上で目的地とするかどうかを決めましょう。
※1オーストラリアドル=91.50円で換算
参考:豪州の賃金水準、生活コスト等について(シドニー) – 日本商工会議所
イギリスのワーキングホリデー
イギリスのワーキングホリデーは人気が高く、抽選制です。イギリスのビザを取得するための申請方法を紹介します。
ビザの条件・申請方法
イギリスのワーキングホリデービザは就労のためのビザで、年2回行われる抽選への申し込み(e-mal)が必要です。件名にはパスポートと同じ表記の申請者氏名、生年月日(日/月/年)、パスポート番号を英語のみで明記し、本文に以下を記載しましょう。
- Name(氏名)
- Date of Birth(生年月日)
- Passport Number(パスポート番号)
- Mobile Phone Number(携帯電話番号)
入国許可申請ができるのは、抽選に当たった人のみです。当選者は決められた日までにオンライン申請と、クレジットカードによるオンライン申請料金259ポンド(約4万4,278円※)の支払いを終えなければなりません。全て完了すれば、ビザ発給のための手続きを行えるようになります。
ビザの発給後は、就労・就学の制限なく2年間のイギリス滞在が可能です。
※1ポンド=170.96円で換算
Youth Mobility Scheme visa: Overview – GOV.UK
イギリスのワーキングホリデーの魅力
イギリスの魅力は、本場のキングズイングリッシュを学べること・ヨーロッパ各地へ足を運びやすいことなどです。観光スポットや博物館・美術館も豊富なため、充実したワーキングホリデーを過ごせます。
仕事を探しやすいのは首都ロンドンですが、ケンブリッジやリバプール、ブライトンなども人気があります。休日は車を使って、スコットランドや北アイルランドなどに足を運ぶのもよいかもしれません。
2023年4月時点のイギリスの最低賃金は、10.42ポンド(約1,781円※)です。都心部は生活費もかかるため、不安なく過ごすには十分な資金の準備が必要といえます。
※1ポンド=170.96円の場合
参考:最低賃金の改定
カナダのワーキングホリデー
アメリカに行きやすいカナダも、ワーキングホリデーの目的地として人気です。カナダのワーキングホリデーについて、詳しく紹介します。
ビザの条件・申請方法
カナダのワーキングホリデービザも、抽選制です。定員は6,500名で、申請への招待状 (ITA)を受け取った人のみが、ビザの発給を申請できます。
抽選に当選した場合は10日以内に招待を受け入れ、20日以内にカナダ政府のWebサイトからオンライン申請を行いましょう。申請が完了すると、提出が必要な書類のリストが提示されます。指示通りに書類を準備してアップロードすれば、申請は完了です。
このほかに、ワーキングホリデーによるビザの発給には、申請料金とオープンワークパーミット保有者手数料も必要です。また生体認証を提供する必要がある場合は、生体認証料金も求められます。
カナダに入国する前には2,500カナダドル(25万3,075円※)以上の残高証明の提出と、医療保険への加入が義務付けられているため、忘れないようにしましょう。
※1カナダドル=101.23円で換算
International Experience Canada: How to apply – Canada.ca
カナダのワーキングホリデーの魅力
カナダは国土も広く、雄大な自然を楽しめるのが魅力です。トロントやバンクーバーといった都会がある一方、北極圏からほど近いイエローナイフではオーロラを楽しめます。
またカナダにはアジア系の移民も多く、外国人が暮らしやすい環境です。語学学校やアルバイト先などでは、さまざまな国の人と知り合えるでしょう。
カナダの最低賃金は、州によって異なります。例えばバンクーバーを含むブリティッシュコロンビア州の最低賃金は、2023年6月から16.75カナダドル(約1,696円※)になる見込みです。
※1カナダドル=101.23円で換算
参考:Minimum wage
ニュージーランドのワーキングホリデー
ニュージーランドはビザの発給についての制限がなく、ビザの取得難易度は低いといえます。ニュージーランドのワーキングホリデーについて確認しましょう。
ビザの条件・申請方法
ニュージーランドのワーキングホリデービザは、ニュージーランド移民局のWebサイトからのみ申請が可能です。申請料金として455ニュージーランドドル(約3万9,070円※)が必要となります。
ワーキングホリデービザの申請に必要な条件は、18~30歳まで・子どもの同伴不可など、他国と変わりません。
ただし十分な資金力があることを証明するため、4,200ニュージーランドドル(36万654円※)以上の残高証明や、復路の航空券または航空券分の代金を提示することが必要です。このほかの項目についても、場合によっては証明書類の提出を求められるケースがあります。
ワーキングホリデービザが発給されると、ニュージーランド国内に12カ月間滞在できます。このうち語学学校や専門学校に通えるのは6カ月のみです。
※1ニュージーランドドル=85.87円で換算
Japan Working Holiday Visa: Visa details | Immigration New Zealand
ニュージーランドのワーキングホリデーの魅力
ニュージーランドは、南北の二つの島と離島の数々で形成されています。いずれの島でも豊かな自然が広がっており、日本にはない風景や空気を楽しめるのが魅力です。
北部には経済の中心地オークランドや首都ウェリントンなどがあり、インフラも整っています。アジア系の移民も多い上に治安もよく、楽しく学んだり働いたりできるでしょう。
一方で南部には、「ガーデンシティ」と呼ばれるクライストチャーチがあります。周辺では牧畜業が盛んに行われており、多くの人がイメージするニュージーランドそのものです。
ニュージーランドの最低賃金は、2023年4月時点で22.7ニュージーランドドル(約1,949円※)となっています。
※1ニュージーランドドル=85.87円で換算
台湾のワーキングホリデー
台湾は、中国語を学びたい・使いたいというワーキングホリデー希望者から、特に注目を集めています。台湾のワーキングホリデーについて見ていきましょう。
ビザの条件・申請方法
台湾のワーキングホリデービザ申請は、居住地を管轄する台北駐日経済文化代表処(台湾領事館に相当)で可能です。申請は、出発希望日の1カ月前から行えます。
申請には以下のものが必要です。
- 残存期間6カ月以上のパスポート(原本)
- パスポートのコピー 1通(A4サイズ)
- ビザ申請書 1通(専用Webサイトにて個人情報を登録完了後、印刷)
- 6カ月以内に撮影し証明写真2枚
- 海外旅行保険の保険証券(加入期間1年以上、原本)
- 海外旅行保険の保険証券のコピー1通
- 申請者名義の残高証明書1通(20万円以上、口座のある金融機関または郵便局発行のもの)
- 申請者名義の往復航空券(30 万円以上の財力証明書があれば不要)
- 履歴及び予定行動表 1通
- 住民票(発行から3カ月以内のもの)
ビザの発給を受ければ、180日間の滞在が可能です。延長申請は1回のみ可能となっており、延長すれば最大で1年間滞在できます。
ワーキング・ホリデー査証申請要項 – 台北駐日経済文化代表処 Taipei Economic and Cultural Representative Office in Japan
台湾のワーキングホリデーの魅力
中国語圏でワーキングホリデー対象国は台湾と香港しかありません。中国語を学びたい人にとって、台湾は有力な目的地となるでしょう。最低賃金は176台湾ドル(約774円※)と決して高くはありませんが、その分物価も比較的安価です。
台湾は日本との文化的な共通点がある上に治安もよく、親日派が多いのもおすすめのポイントです。食事がおいしい・観光スポットが豊富などの魅力もあり、ヨーロッパや北米・オセアニアとは一味違ったワーキングホリデーを楽しめます。
※1台湾ドル=4.40円で換算
構成/編集部