かゆいところに手が届く使い勝手のよさは健在、Sシリーズ初の機能も
サムスンならではのカスタマイズが行き届いているため、使い勝手もいい。例えば、画面内指紋センサー。機能名だけでは差がわかりづらいが、Galaxy S23のそれは超音波式で、読み取りが非常に速い。カメラで指紋を認識するタイプのものは、指を当てる位置がシビアだったり、ロック解除までに時間がかかったりするが、Galaxy S23の指紋センサーは反応がよく、使いやすい。
Galaxy Sシリーズとしては初めてデュアルSIMやeSIMに対応したのも、見逃せないポイントだ。サムスン電子のフラッグシップモデルがeSIMに対応したのは、2022年後半に登場した「Galaxy Z Fold4」「Galaxy Z Flip4」から。昨年までのGalaxy Sシリーズは、物理SIMのみのシングルSIMだった。SIMを2枚組み合わせられるため、KDDIやソフトバンクが開始した「予備回線サービス」を利用できるほか、海外ローミング時に現地のSIMカードを入れるといったことも可能になった。
日本で発売されるGalaxy Sシリーズとしては、初めてeSIMに対応した
コンパクトながら、5GはSub-6だけでなく、ミリ波にも対応している。昨年のGalaxy S22シリーズと比べ、対応バンドが増えている点も見逃せないポイントだ。レビューしたのはドコモ版だが、auやソフトバンクのプラチナバンドにもきちんと対応しており、他社回線だからといってつながりにくくなったり、速度が落ちたりする心配がなくなった。2つ(以上)の回線を使い分けたい人にも、選びやすい端末になったと言えそうだ。
ビジネスユースでは、マイクロソフトのサービスがOSやアプリにきちんと統合されている点も評価できる。例えば、写真を管理するための「ギャラリー」は、クラウドサービスの「OneDrive」と同期できる。Windows搭載のPCとGalaxyを連携させる「Windowsにリンク」にも対応する。この機能を使うと、PC側からGalaxyを操作したり、クリップボードを共有したりといったことが可能になる。MacとiPhoneのような連携を、Windows PCとGalaxyでできるようになるというわけだ。
Windowsとの深い連携ができるのも、Galaxyの魅力。ビジネスユースにもうってつけの端末と言えるだろう
一見するとマイナーチェンジにも思えたGalaxy S23だが、特にカメラ性能やバッテリーの持ちは大きく改善されていた。ディスプレイサイズの大きな端末に慣れていると、手のひらに収まるサイズ感も新鮮に感じる。最上位モデルのGalaxy S23 Ultraと比べるとややおとなしい印象もある一方で、完成度は非常に高い端末だ。コンパクトかつ王道のハイエンドモデルを求めている人には、いい選択肢と言えるだろう。
【石野’s ジャッジメント】
質感 ★★★★
持ちやすさ ★★★★★
ディスプレイ性能 ★★★★★
UI ★★★★★
撮影性能 ★★★★★
音楽性能 ★★★★★
連携&ネットワーク ★★★★★
生体認証 ★★★★★
決済機能 ★★★★★
バッテリーもち ★★★★
*採点は各項目5点満点で判定
取材・文/石野純也
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。