■連載/石野純也のガチレビュー
サムスン電子のフラッグシップモデル、Galaxy S23シリーズがついに日本でも発売になった。ドコモとauは「Galaxy S23 Ultra」と「Galaxy S23」の2機種を、楽天モバイルはGalaxy S23を取り扱う。Galaxy S23シリーズは、カメラ性能を大幅に強化しており、チップセットも同モデル専用にクロック周波数などの性能を高めた「Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxy」を採用。高いスペックを誇るGalaxyシリーズの持ち味はそのままに、その性能をさらに上げてきた格好だ。
一方で、カメラ性能については2億画素カメラを搭載しているGalaxy S23 Ultraがフィーチャーされることが、どちらかと言えば多い。Galaxy Noteシリーズから受け継いだSペンや、サイズの大きなディスプレイも、同モデルの特徴だ。シリーズの中心であるはずのGalaxy S23は、どこかUltraの影に隠れてしまっている印象も受ける。とは言え、チップセットはシリーズで共通。Galaxy S23はデザインも刷新しており、Ultraとの共通性を高めている。
2023年4月20日に発売されたGalaxy S23。レビューしたのはドコモ版だが、auや楽天モバイルも同機を取り扱っている
Ultraに比べると価格が抑えられていることもあり、ユーザーが手に取りやすいのはGalaxy S23と言えるだろう。Ultraがつく最上位モデルの性能が高いのは当たり前。標準機であるGalaxy S23をどう仕上げているかも、シリーズ全体を評価するうえで重要だ。本連載ではGalaxy S23 Ultraのグローバル版をすでにレビューしているが、国内発売にあたり、あらためてGalaxy S23のドコモ版を使ってみた。ここでは、その評価をお届けしよう。
コンパクトで手になじむデザイン、バッテリーの持ちも向上
大型化が進むフラッグシップスマホの中で、Galaxy S23は比較的コンパクトに仕上がっている。ディスプレイサイズは6.1インチ。最上位モデルのGalaxy S23 Ultraは6.8インチと大きく、片手で持つ際の収まりはよくない一方で、Galaxy S23は持ちやすい印象を受ける。フレームがわずかに丸み帯びているため、手のひらへの当たりが優しい点も、持ちやすさに貢献している。フラッグシップモデルとして、王道のサイズ感と言えるだろう。
フレームが丸みを帯びているため、手に優しい。滑りにくい塗装なのも評価できる
どちらかと言えばフレームが直線的なGalaxy S23 Ultraに対し、Galaxy S23は四隅も丸みを帯びているため、デザインも柔らかい。Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxyを搭載したフラッグシップモデルながら、見た目のとげとげしさはなく、万人受けするスマホに仕上がっている。とがった端末を求める人は物足りなさを覚えるかもしれないが、ベーシックながら上質なデザインにまとめられた端末は思いのほか少ない。その意味で、Galaxy S23は貴重な存在と言えるかもしれない。
一方で、Galaxy S22シリーズまでとは異なり、カメラ回りのデザインはGalaxy S23 Ultraと共通性を持たせている。Galaxy S22が3つのカメラが仮面のように見えるユニットにまとめられていたのに対し、Galaxy S23では背面ガラスの上にレンズが直付けされている。こうしたデザインの変更もあり、よりシンプルさが際立った格好だ。
ディスプレイはフラットだが、ベゼルが細いため映像への没入感は高い。リフレッシュレートが最大120Hzに対応していることもあり、動きも非常に滑らか。エントリーモデルやミッドレンジモデルの一部で見られるような、スクロールの引っかかりはほぼない。Galaxy S23 Ultraとの違いは、最低リフレッシュレートが48Hzと高い点。1Hzまで落とせるGalaxy S23 Ultraより、バッテリーが消費しやすくなるのは難点だ。
ディスプレイはフラットタイプだが、ベゼルが細く、没入感は高い
ただし、実際に使ってみると、バッテリーの持ちは昨年までのモデルよりもしっかり改善されていることがわかる。バッテリー容量自体がGalaxy S22の3700mAhから3900mAhへと拡大していることに加え、最適化が進んでいる印象を受ける。チップセットとして採用したSnapdragon 8 Gen 2 for Galaxyの性能も効いているはずだ。公式スペックでも動画の連続再生時間が18時間から22時に間に増えているが、実利用でもそれを体感できる。
バッテリー容量が前モデルから増加。チューニングもあってか、持ちがよくなっている印象だ
変わっていないようで大きく変わったカメラ性能、鍵はAIにあり
一方で、カメラのスペックは、先代の「Galaxy S22」からあまり変わっていないようにも見える。広角、標準、望遠の3眼構成で、メインとなる標準カメラは5000万画素なのも同じ。望遠カメラは光学3倍の1000万画素。デジタルズームを使うと、最大30倍まで寄れるのも同じだ。センサーサイズが大きくなったといった変化もない。メインカメラを2億画素に刷新したGalaxy S23 Ultraとは、この点が大きな違いと言えるだろう。
カメラは広角、標準、望遠の3眼構成。画素数などのスペックは、Galaxy S22から変わっていない
ところが、実際に使ってみると、画質が大きく向上していることがわかる。特に、暗所で撮影された写真のクオリティが、一段も二段も高くなっている。ディテールがより鮮明になり、昨年までのモデルだと潰れてしまっていたような個所まできれいに映る。これは、AIによる処理が改善された成果だ。ソフトウエア的な改善効果が大きいため、望遠カメラを使った撮影でもその効果が大きく出ている。率直に言って、この暗所の写りには驚いた。
上がGalaxy S22とカメラのスペックが同じGalaxy Z Fold4、下がGalaxy S23。どちらも望遠で撮影したが、ディテールの鮮明さやノイズの少なさでは、Galaxy S23に軍配が上がる
ネオンやビル明かりが強い夜景でも、その効果は非常に大きい。デフォルト設定のままで撮ると、明かりが強調され、きらびやかな街並みが浮かび上がる。ナイトモードを使うと、絵作りの傾向が変わり、より夜空の暗さを強調したような写真が撮れる。いずれも光の強い看板などが白飛びしていない一方で、黒潰れもなく、ダイナミックレンジは広い。標準モードはやや絵を作りすぎている感もあるが、クオリティは高いと言えるだろう。
ナイトモードなしで撮影した夜景。やや彩度が高すぎるきらいもあるが、これはこれできれいな写真と言えるだろう
ナイトモードをオンにすると、夜空の黒がグッと締まった。こちらの方が、加工感は薄くなっている
もちろん、料理などを撮るにも十分なスペックだ。室内でそれなりに明るければ、ノイズが少ない写真が撮れる。発色のバランスもいい。ハードウエア的な変化が少なかったため、あなどっていたところはあるが、カメラの進化は想像以上だった。また、暗所性能は動画撮影時にも発揮される。スペック的なインパクトは薄かったものの、サムスンが「ナイトグラフィー」を強調している理由がよくわかった。
料理を撮った際の発色も、バランスがいい。AIの被写体判別や処理の仕方が、改善されている印象
そのカメラ機能を支えるSnapdragon 8 Gen 2 for Galaxyは、処理能力も非常に高く、アプリもサクサク動く。発熱も抑えられており、動作は快適だ。ベンチマークアプリのスコアも、その性能の高さを証明している。以下は、「Geekbench 6」で計測したスコア。シングルコア、マルチコアともに数値が向上しており、スマホの中ではトップクラスの性能と言える。ここは、最上位モデルのGalaxy S23 Ultraと比べても遜色ないポイントだ。