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GAFAへの対抗策となるか?NTTや楽天モバイルが注力する「Open RAN」の将来性

2023.05.12

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、MWC2023で注目された「Open RAN(O-RAN)」について会議します。

「MWC Barcelona 2023」で注目された「Open RAN」

房野氏:スペイン・バルセロナでモバイル業界最大の展示会MWC Barcelona 2023が開催され、「Open RAN」がトレンドとして注目でしたね。NTTや楽天モバイルの取り組みが活発ですが、こちらについてお聞かせください。

石川氏:「Open RAN」は無線の送受信装置などの仕様を〝オープン〟にして、いろんなベンダーの製品を組み合わせて使うものです。うまく活かせれば富士通やNECに追い風が吹いてくる。まだ追い風程度ではありますが、存在感は増しつつあるのかなと感じます。

石野氏:5Gを「やってはみたけど儲からない」……これが世界中のキャリアが直面している問題になっています。そこで、儲けるためのユースケースを開拓すると同時に、コストを抑える手段の1つとしてOpen RANが注目されています。

石川氏:Open RANは何年も前から注目されていた技術ですが、なかなか進んでいないというか、また日本勢が若干先走っている感じがある。一方で世界的に、通信キャリアが「5Gに投資するほどお金がないよ」みたいな感じになっていたりもする。「だったらOpen RANを導入してコストを下げましょうよ」というアプローチと、「いやいや5Gにシフトして儲けましょう。5Gでマネタイズをどうしましょう」みたいな話になっていたりする。

 MWCをGSMAが仕切ったイベントの1つとして見ると、対GAFA的な位置付けもある。KDDIが「GSMA Open Gateway」構想の参画を発表しましたが、GSMA Open Gatewayはキャリア同士で共通APIを作って、共有してやっていきましょうというもので、キャリアのネットワークを使う時に課金システムを提供しますとか、5G SAでこういうサービスを世界で提供しますよっていう話なんです。キャリアは、今までGAFAにネットワークを勝手に使われてきたというか、大量のトラフィックを流されるだけで、あまりおいしい思いができなかったという考えがある。だからGSMA Open Gatewayを作ったというのが背景です。

 GAFA対GSMA的な構図で見ると、5Gのネットワーク部分でそういう動きがあることも、1つ注目点だと思います。マニアックな見方ですが、世界のキャリア勢としては危機感みたいなものを持っているんだろうなと感じました。

石野氏:一方で、GAFAの中のA(Amazon)は「コアネットワークをウチのクラウドに載せてください」みたいな話を進めていたりします。Microsoftも今はChatGPTで注目されていますけど、しっかりテレコム分野に進出していて、「コアネットワークをAzure上に載せませんか?」みたいになっている。クラウド事業者というかGAFAも徐々にキャリアの世界に接近してきているというか、徐々に「ウチのものを使ってください」って感じになってきているので、そこの攻めぎ合いは今後出てくるのかなって感じました。

石川氏:Open RANなら参入しやすくなるメリットもあります。また、5GでMEC(Multi-access Edge Computing)を活かそう、基地局の近くにサーバを置いて何かしましょうって時には、AmazonのAWSとかMicrosoftのAzureとか、さらに消費電力を下げようと思ったらNVIDIAのGPUを使うとかって話になってくる。キャリアとそういった企業との距離感がどう変わってくるのかは、1つ見ものになってくるでしょう。

衛星通信の進歩にも期待大

石川氏:MWCで注目された話といえば、衛星系も忘れてはいけませんね。NTN(Non-Terrestrial Network:非地上系ネットワーク)が出始めていて、ちょっと意外だったのがAT&Tやノキアでも衛星通信の展示をしていたこと。楽天モバイルは展示していなかったけど、ちゃんと話が動き始めている感じではありますね。

石野氏:衛星系はチップ側の対応も進んできていて、クアルコムが「Snapdragon Satellite」を出していたり、MediaTekが対応してきたりしています。イギリスのBullitt社が開発した「キャタピラー」ブランドのAndroid端末がMediaTekのチップを載せていて、静止衛星と接続します。iPhoneの「緊急SOS」みたいな使い方しかできませんが。MediaTekブースでは低軌道衛星のコンステレーションと通信する実験も公開していて、下りで6Mbpsくらい出ていました。ただこれは1対1の通信なので、極端な話、渋谷の駅前で端末が接続しまくったらどうなるんだろうなという心配がちょっとあったのと、上りがやっぱり今の段階でも遅くて1Mbpsを切っていました。楽天モバイルがAST(楽天グループが出資している米・AST SpaceMobile社)で通信する場合には上りがネックになりそうだなと。そこをどう解消していくのかが気になりました。

クアルコム「Snapdragon Satellite」

Bullitt「Cat S75」

石川氏:スマホが使っている周波数帯で、世界でサービスを提供するのは結構厳しいんじゃないかとKDDIの髙橋社長も言っていましたね。その辺の問題は、単に技術的な問題だけではない部分がある。欧州の場合は周波数帯をオークションで買ったりもするので、それを簡単にASTに使わせるのか、どれくらいの値段で貸すのかという問題になってくるし、ヨーロッパみたいに国が連なっている地域で、どうやってサービスを提供するのかという問題もあると思う。技術的にはあと数年でできそうだけど、その辺の法整備をどうするかが課題になってくると思います。

……続く!

次回は、MVNOの最新料金プランについて会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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