2017年1月1日、「日本で唯一、シワを改善する薬用化粧品」として華々しくデビューしたポーラの「リンクルショット メディカル セラム」。発売から6年以上経過した現在もその人気は継続され、2023年3月には累計販売が約512億円を突破している。
1本の美容液だけでこれだけの売上を達成した立役者の1人が、コミュニケーション企画チームの田中愛美さん(写真右)。爆発的大ヒットをした初代「リンクルショット メディカル セラム」に続くリニューアル品のプロモーションをメインに担当し、500億円達成にも大きく貢献した。田中さんが社運をかけたリニューアルで投じた戦略とは――美容業界の常識を変えたシワ改善美容液の軌跡を紐解きたい。
営業拠点140カ所以上を行脚し、想いを伝える。初代「リンクルショット メディカル セラム」
(左)2021年1月1日に発売し、現在も発売中の「リンクルショット メディカル セラム(税込14,850円)【医薬部外品】」。
リンクルショット メディカル セラムは日本で初めてシワを改善する医薬部外品有効成分として認められた、ポーラ独自の成分「ニールワン」を配合した美容液。それまで「シワを改善する」と断言できる有効成分はこの世に存在しておらず、美容業界に衝撃が走ったのは言うまでもない。
ポーラとしても「機能的に間違いなく売れるだろう」と自信を持っていたが、単に機能を訴求するだけではなく、「お客様に支持される要因とは何か」を熟考し、約20名のタスクフォースが編成された。
2017年1月1日に発売した初代「リンクルショット メディカル セラム」。
当時の部隊が実行したのは、「ハートに火を点ける作戦」。研究開発リーダーの末延則子さん(ポーラ化成工業)を筆頭に北海道から沖縄にある全国の営業拠点140カ所以上を発売前の1カ月間で行脚し、発見から承認に至るまで約15年の歳月を重ねたニールワン研究の苦労や想いを、現場であるポーラショップのビューティーディレクターに直接伝えに行ったのだ。
当時は研究員たちの話に涙するビューティーディレクターもいるほどで、想いのバトンを受け取った彼女たちがアンカーとして、客にその想いを伝えていった。
結果として2017年のリンクルショット メディカル セラムの売り上げは、年間約130億円。1本の美容液としては驚異的な売り上げを叩き出し、ポーラの「顔」となった。そして想定を上回る好調な推移により、コスト削減に成功。2018年1月1日には16,500円(税込)から14,850円(税込)に値下げし、2018年も約93億円を売り上げた。