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「桃鉄」の教育版も登場!ゲーム×教育で子どもの力を伸ばす学びと遊びのバランス

2023.05.11

『マインクラフト』や『桃太郎電鉄』といった人気ゲームの教育現場向けタイトルが相次いでリリースされている。ゲームといえば遊びのイメージが強いが、使い方次第では子どもの能力を伸ばすきっかけにもなる。ゲームを通して、子どもの考える力を伸ばすオンラインスクール「ゲームカレッジ Lv.99」運営担当者に、ゲームがもたらす学びへの可能性と、家庭で遊ぶ際にどうやって学びに結びつけるか聞いた。

増加する「教育版ゲーム」

ゲームは子どもの遊びで、ともすれば子どもに悪影響を及ぼすというイメージを持たれがちだ。子どもへの制限はもちろん、中には禁止しているという家庭も存在するだろう。しかし現在、ゲームを競技として捉えるeスポーツのように、ゲームの持つ様々な価値について見直され始めている。その一つに「教育」がある。

マイクロソフトがサービス提供している『マインクラフト』は、いち早く教育という側面に着目し、2016年11月に教育版をリリースしている。3Dの立方体ブロックで構成されたオープンワールドでものづくりや探検を楽しむことを通じて、子どもの創意工夫や課題解決能力が育まれる。

また、ハドソンから販売されている人気ゲームシリーズ『桃鉄』こと『桃太郎電鉄』の教育版が2023年1月にリリースされている。日本や世界を舞台に鉄道会社を経営するというボードゲーム形式のゲームで、地域にちなんだ物件を購入したりイベントを経験したりすることで、地理や歴史に興味を持つきっかけとなる。筆者自身、喜多方の名物である「喜多方ラーメン」などを知ったきっかけが『桃鉄』だった。

公式サイトより
『桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~』は、タブレットやPCからの操作に対応するため、Webブラウザからのプレイとなっている。各地の名産品や主要産業、歴史に関する情報を表示する機能が追加された他、「貧乏神」のような妨害する要素を一部非搭載としている。

大手企業も「ゲーム×教育」に参戦

ゲーム分野以外の大手企業も「ゲーム×教育」への参入を始めている。イオングループ系列企業のイオンファンタジーは、2021年2月より子ども向けのオンラインゲームレッスンサービス『ゲームカレッジ Lv.99』を運営している。オンラインゲームスクール事業の責任者である犬飼信二さんによると、生徒数の累計入会数は600名を超えるそうだ。

「コーチは12名で、1レッスンあたり4〜5人の子どもを受け持ちます。レッスンは夕方17時から19時から1回60分程度で、1ヶ月に4回程度のペースで行っています。生徒の年齢は5歳から中学生までと幅広く、年上の子どもが年下からゲームを学ぶといった光景は珍しくありません」

レッスンに使用しているゲームタイトルは『マインクラフト』と『ポケモンユナイト』の2つ。『マインクラフト』は保護者からの認知度が高く、子どもたちからも人気だという。『ポケモンユナイト』を採用した理由としては、1回の試合が10分程度で完結する点にあると犬飼さんは語る。

「野球や将棋などは1試合に1時間以上かかり、課題発見や解決までに時間がかかってしまいます。『ポケモンユナイト』なら実践とフィードバックを高速でサイクルできるので、論理的思考や課題発見能力、協調性やコミュニケーション能力を高い密度で養うことができます。それぞれのコースには英会話コースも設けており、遊びながら英語の勉強も可能です」

保護者からの評判は上々だ。

「レッスン内では『死ぬ』といったネガティブな言葉は禁止しています。その結果『息子の言葉遣いが良くなった』という意見を頂きました。また協調性が磨かれて、友達のために行動する機会が増えたり、自分の考えを簡潔に話してくるようになったりしたお子さんもいらっしゃるようです」

¥ゲームカレッジ Lv.99のレッスンは、東京大学大学院情報学環准教授の藤本徹さん、および「教育界のノーベル賞」と言われるGlobal Teacher Prize 2019 でトップ10に選出された正頭英和さんが監修を手掛けている。

「学び」一辺倒にならないバランス感覚が重要

運営元のイオンファンタジーは、ショッピングモール内の子ども向けアミューズメント施設の運営を主たる事業としている。施設で子どもたちがカードゲーム機で遊んでいる様子が『ゲームカレッジ Lv.99』立ち上げのきっかけになったと犬飼さんは語る。

「持ち寄ったカードの効果をうまく組み合わせて遊ぶ様子を見て『これはゲームで子どもたちの想像力が鍛えられているのでは』と考えました。実際に調べたら、海外では既に研究で実証されているのを知り、事業として子どもの成長をゲームという側面からサポートしたいと思うようになりました」

犬飼さんはゲームを教育に取り入れる最大のメリットとして「継続性」を挙げている。

「前提として、ゲームとは楽しいもの。楽しくてつい長続きするのが一番の強みですね。『学び』の要素を感じずに夢中になってプレイして、気づいたら成長しているという構図が最も理想的です。逆に『学び』を入れすぎて子どもたちが察してしまうと、彼らはすぐに冷めてしまいます。そのバランス感覚はレッスンをする上でとても大事にしています」

家庭で子どもにうまくゲームで教育を促すためには、まず子どものゲームをしたい気持ちを尊重することが必要だという。

「タイトルの選定やプレイ時間の設定など、親御さんがある程度制御することは必要ですが、ゲームに割く時間そのものを否定してはいけません。勉強やお手伝いなど、家庭の中でやるべきことをクリアした上で目一杯遊ばせるなど、ゲームへの向き合い方を家庭の中でしっかり決めさえいれば、後は難しく考えなくても子どもは自分の力でどんどん成長していきます」

今後は全国の放課後等デイサービスなどの児童向け施設などと連携して、サービスをより幅広く展開したいと犬飼さんは語る。

「学校でうまく居場所を作れない子どもたちが、新しい自分の居場所をゲームをきっかけに作れるような世の中にしたいと考えています。また、グローバル展開も見据えて、まずは東南アジアでの事業展開を構想しています」

時間や場所に縛られず、言語や文化といった垣根を越えて交流ができることも、ゲームの持つ強みの一つだ。「ゲーム」と「教育」という、一見相反するような組み合わせによって、世界中の子どもたちにとっての新しい未来が生まれる日はそう遠くないかもしれない。

取材・文/桑元康平(すいのこ)
1990年、鹿児島県生まれ。プロゲーマー。鹿児島大学大学院で焼酎製造学を専攻。卒業後、大手焼酎メーカー勤務などを経て、2019年5月から2022年8月まで、eスポーツのイベント運営等を行うウェルプレイド・ライゼストに所属。現在はフリーエージェントの「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズのプロ選手として活動中。代表作に『eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか』(小学館新書)。

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