社会人になるまで正しい読みを知らないままきてしまった漢字が、誰でも1語や2語はあるはず。「過不足」はそんな言葉の代表格だ。「かぶそく」と「かふそく」どちらの読みが正しいか、「過不足」の正確な意味など、自信を持って答えられる人は意外に少ないのではないだろうか。特に、経理や税務の仕事では「過不足」の付く専門用語が頻繁に登場するため、正しい読みを知っておくことは信頼度アップにも繋がる。
そこで本記事では、「過不足」の読みと意味、仕事で「過不足」が問われる場面や「過不足」に関連した用語について解説する。
「過不足」は何と読む?意味は?
過不足の正式な読みは「かふそく」。にごる方の「かぶそく」は誤用とされる。ただし、近年は本来誤用である「かぶそく」の読みも浸透しつつあるため、「かふそく」と「かぶそく」の両方の読みを記載した辞書や、どちらの入力でも「過不足」と変換される日本語ソフトも少なくない。
「過不足」は「多すぎること」と「足りないこと」を意味する言葉
「過不足」の意味は、多すぎることと少なすぎること。正反対の状態を同時に表すことで、プラスとマイナスの分岐であるゼロ地点からの差異が強調される言葉となっている。
また、否定形を伴って「過不足なく」「過不足ない」のように表現する場合も多い。
「過不足なく」とはどんな状態か?
「過不足」という言葉に、否定の意味を持つ形容詞「ない」「なく(“ない”の連用形)」をあわせることで、「多すぎも少なすぎもしない」すなわち「ちょうどよい」「適度な・適切な」状態を表す言葉となる。
「過不足」の使い方
「過不足」を使用する際は、「過不足」単体での使い方と、「過不足+ない(なく)」で使うケースの両方を知っておくと便利だ。
・「決算書を読むことで事業資金の過不足を把握できる」
・「現地の情報を過不足なく伝えてほしい」
・「ダイエットをするには過不足のないエネルギー摂取を心がける必要がある」
「過不足」の類語や言い換え・英語表現
「過不足」そのものは「多い」と「少ない」を同時に表現できる便利な言葉で汎用性が高いが、言い換えが必要となった場合の類語や、英語での表現も覚えておくと役に立つ。
過不足の類語・言い換え表現
・過不及(かふきゅう):多すぎることと及ばないことを同時に指す言葉。過不足と同じ意味になる。
・出入り(でいり):出ることと入ることを意味するが、主として金銭の超過と不足(または増減)の意味で使われる場合がある。例:思いのほか出入りがあった。
過不足を英語で言うと?
英文メールや英会話で「過不足」を表現したい場合は、“overs and shorts”や“overs and unders”“excess and deficiency”などを使うと良いだろう。
また、英語で「過不足なく」を言い表す際は、“neither too much nor too little(多すぎも少なすぎもせず)”“in the proper quantity(適切な量で)”などの表現を使うのがおすすめだ。
専門用語として使われる「過不足」も知っておこう
金銭と相性が良い「過不足」は、税務や会計用語としても使われるケースが多い。お金の知識の一貫として「過不足」の付く専門用語を知っておこう。
年末調整の「過不足税額(過不足額)」とは?
年末調整とは、会社員・公務員が毎月の給与所得から収めている仮の所得税(=源泉徴収)を毎年12月に年末調整によって正しい納税額に計算をし直すことを言う。
年末調整を行った結果、判明した源泉徴収税額と本来の納税額の差額を「過不足税額(過不足額)」と言い、納税した額が多すぎるようであれば還付され、少なすぎる場合は差額分が追加で徴収される。
会計上の「過不足金(現金過不足)」とは?
会計処理では手元の現金額と帳簿上の現金残高を照らし合わせて両者が一致していることを確認する。例えば、レジ閉めの後の売上金額とレジ金額のチェックなどがわかりやすい例だろう。この際に、実際の現金額と帳簿上の現金残高が合わないときの差額を「過不足金」「現金過不足」と言う。過不足の原因がすぐに解決しない場合は、現金出納帳や会計ソフトに「現金過不足」の勘定項目で記載する
現金過不足が発生した場合、お金の紛失や盗難を真っ先に疑いがちだが、現金の数え間違いやレジの操作ミスなど複数の要因が考えられるため冷静に対処したい。
文/編集部