普段、カタカナで表記されている国名には、漢字表記がある国もあります。『比律賓』は、どの国のことなのでしょうか?正しい読み方を由来とともに紹介します。比律賓の基礎知識や日本との関係についても見ていきましょう。
比律賓の読み方は?
『比律賓』は、日常生活で頻繁に目にすることがないため、知らないと読み間違えやすい漢字です。まずは、正しい読み方を確認しましょう。
正しくは「フィリピン」
比律賓は、『フィリピン』と読みます。『非立賓』や『比国』と表記されることもあります。漢字1文字の略した表記は、『比』または『非』です。
比律賓は、音読みの音の響きを漢字に当てはめた『当て字』で、漢字そのものに意味はありません。
なお、普段フィリピンと呼ぶことが多いですが、正式な国名は『フィリピン共和国』です。英語では『Republic of the Philippines』になります。
比律賓の国名の由来
フィリピンの国名がどのように誕生したのか、知らない人も多いでしょう。国名の由来は、歴史的な出来事と深い関係があります。どのような由来があるのか見ていきましょう。
由来はスペインの皇太子の名前
国名は、スペインの皇太子の名前が由来です。国名が誕生したのは16世紀、スペインがフィリピンを植民地としていた時代です。
後にスペイン国王となった『フェリペ2世』の名前にちなんで、『フィリピナス諸島(Las Islas Filipinas)』と名付けられたことが由来になります。
フェリペ2世は絶対王政を築いた人物として知られ、父から受け継いだアメリカ大陸・ヨーロッパ・アジア・アフリカなど世界各地の領土を支配していました。熱心なカトリック教徒で、カトリックによる国家統合を目指し、政策を推し進めたことでも知られています。
スペインの植民地だったことから
1521年にマゼランがフィリピンに到達したことをきっかけに、1565年から300年以上にわたりスペインの植民地になりました。現在でもスペイン植民地時代の影響が残っています。
例えば、フィリピン人の多くがキリスト教徒であることが挙げられます。町の至る所にスペイン語の地名が残っているのも、植民地時代の名残です。
フィリピンの公用語であるフィリピノ語もスペイン語の影響を受けており、スペイン語が由来の言葉や同じ言葉が数多くあります。パエリアをはじめとするスペイン料理も広く浸透しています。
フィリピンの言語
フィリピンの公用語は『フィリピノ語』と『英語』です。しかし、日常生活で使われている言語は地域によって異なります。フィリピノ語の基礎となっているタガログ語をはじめ、セブアノ語やイロカノ語など、100種類以上の言語があるといわれています。
英語が公用語になっているのは、1898年からアメリカの統治下にあった影響です。1901年に公共教育が始まった際に、教育に英語が使われるようになったのです。現在でも小学校から英語教育が取り入れられています。
比律賓を知ろう
フィリピンはどのような国なのでしょうか?地理や産業、観光など基礎知識を紹介します。日本との関係についても確認しましょう。
フィリピン諸島を占める共和国
フィリピンは日本の8割程度の広さを有し、ルソン島やセブ島など7,641の島々があります。高級リゾート感溢れる島から手付かずの自然が残る島まで幅広くそろっているのが魅力の一つで、多くの観光客が訪れる国です。
人口は約1億900万人で、マレー系や中国系、インドネシア系など多民族が暮らしています。キリスト教国で、国民の約8割がカトリック教徒といわれています。
農業が盛んで、主な農産物はココナッツや砂糖などです。近年は半導体などの電子・電気機器や輸送用機器などの輸出にも力を入れており、主な輸出先は米国、日本、中国です。
フィリピンの首都
フィリピンの首都は『マニラ』で、北部に位置する『ルソン島』にあります。マニラの見どころの一つが、『イントラムロス』です。
スペイン植民地時代に作られ、マニラ最古の城壁都市として知られています。スペイン調の重厚な建物や街並みが多数残っており、歴史を感じながら観光を楽しめます。
中でもフィリピン最古の教会である『サン・アグスティン教会』は、世界遺産にも登録されており、人気の観光スポットです。1587~1606年頃に建築されたといわれていますが、現在も使われている歴史ある教会です。
軍事施設や刑務所として使われていた『サンチャゴ要塞』も歴史ある建物で、当時の様子を垣間見られる博物館や施設が残っています。
日本とは友好的なパートナー
日本とフィリピンが古くから交流があったことを知らない人も多いのではないでしょうか。交流の始まりは、16世紀にまでさかのぼります。
豊臣秀吉がスペインの植民地だったフィリピンに入貢を促す書簡を渡すために使節を派遣し、マニラのデイオラ地区に日本人を集団移住させたといわれています。
また、戦争が起こり敵対したフィリピンですが、2016年には日本とフィリピンの国交正常化60周年を迎えました。現在のフィリピンは、世界的に親日国として知られています。若者を中心に日本のアニメなどのサブカルチャーや、ラーメンなどの食文化が親しまれています。
貿易において日本は輸出シェアで2位、輸入シェア3位です。日本で目にするバナナやパイナップルの約9割がフィリピン産です。
構成/編集部