『和蘭』は歴史上、日本と関わりが深い国を指しますが、正しく読めない人も多いでしょう。『和蘭』の読み方や意味、由来について紹介します。『和蘭』の概要や日本との関わりについても確認し、知識を深めましょう。
和蘭の読み方
国名である『和蘭』は、どのように読むのでしょうか?複数の漢字表記があるので、ほかの表記も併せて紹介します。国名の由来についても確認しましょう。
正しい読みは「オランダ」
和蘭の正しい読み方は、『オランダ』です。オランダを漢字1文字で表記すると『蘭』で、江戸時代にオランダを介して伝わってきた学問や技術は『蘭学』と呼ばれていました。
江戸時代に長く続いた鎖国の状況において、交易があった数少ない国の一つがオランダです。友好の証しの意味も込めて、『和蘭』と表記されるようになったとされています。
『阿蘭陀』や『和蘭陀』と表記されるケースもあります。他国での漢字表記に合わせて『阿蘭陀』としたものの、すでに『和蘭』が広く浸透していたため、『和蘭陀』と表記されるようになったとされているのです。
ちなみに、オランダの首都であるアムステルダムは『安特堤』、港湾都市として知られているロッテルダムは『鹿特担』と表記されます。
和蘭の国名の由来
オランダの正式名称は、『低地の王国』という意味を持つ『Koninkrijk der Nederlande(ネーデルランド王国)』ですが、古くから『Holland(ホラント)』とも呼ばれてきました。
オランダの国名は、正式名称と同じく低地という意味を持つホランドが由来です。ホランドの呼び名は主要な州の一つで、キリスト教布教のために日本に渡来したポルトガル人宣教師を通して伝わったといわれています。
なお、低地という意味を持つ国名を象徴するように、オランダは国土の1/4が海面より低い位置にあります。アムステルダムも、堤防で海を区切った埋め立て地に作られた町です。
和蘭の概要をチェック
オランダと聞いて、まず何を思い浮かべるでしょうか?どのような特徴を持つ国なのか、位置や産業、文化など基礎知識を紹介します。
ヨーロッパ北西部に位置するオランダ
オランダはヨーロッパ北西部に位置し、ドイツとベルギーに隣接しています。九州とほぼ同じ面積を有し、人口は約1,750万人、公用語はオランダ語で、主な宗教はキリスト教です。
首都はアムステルダムですが、実際に行政機能が置かれているのはデン・ハーグです。官庁や議事堂、各国の大使館、王宮の宮殿などが集まっています。
オランダの代表的な風景として知られているのが、『風車』と『チューリップ』です。16世紀頃にオランダに伝わったとされるチューリップは、数々の改良が重ねられ、現在では多種多様なチューリップが楽しめるようになりました。
和蘭の世界遺産
海を堤防で区切った埋め立て地に建設されたアムステルダムには、複数の運河が通っています。その運河の一部である『シンゲル運河内の17世紀の環状運河地区』は、世界遺産に登録されており、アムステルダムを代表する観光スポットです。
また、オランダ南部のキンデルダイクに残っている、18世紀に作られた19基の風車も世界遺産に登録されています。低地が多いオランダでは洪水を防ぐ必要があり、排水の動力として風車が作られたのです。排水が必要ないときには、製粉や製油にも使われていました。
和蘭の産業や文化
オランダは国土の約半分が農用地で、農業が盛んです。農産物の輸出額が世界第2位ということからも、農業大国であることが分かるでしょう。
酪農も盛んに行われており、世界的にチーズの産地としても知られています。ゴーダチーズなど有名なものだけでなく、ヤギ乳やスパイス入りのチーズなど多種多様なチーズが作られています。
またオランダは、ゴッホやフェルメール、レンブラントなどの、偉大な芸術家が生まれた国です。『アムステルダム国立美術館』や『ゴッホ美術館』『クレラー・ミュラー美術館』をはじめ、多くの美術館があります。
和蘭と日本の交流は400年以上
オランダと日本の歴史的な関わりについても確認しましょう。交流の始まりやどのような影響を受けたのか紹介します。日本との関わりを知ることで、オランダをより身近に感じられるでしょう。
ヤン・ヨーステンらが乗船の船が漂着
日本とオランダの交流は、1600年にリーフデ号という船舶が現在の大分県に漂着したことから始まりました。香辛料や銀などを求めて、1598年にオランダを出航した5隻のうちの1隻が漂着したのです。
将軍の徳川家康は、乗組員だったヤン・ヨーステンらを歓迎し、1609年には通商関係が本格化しました。200年以上続いた鎖国体制においても、長崎ではオランダとの貿易が行われていました。オランダがプロテスタント国で、布教しないことを約束したためです。
現在も日本の皇室とオランダの王室の間には交流が続いており、今後も親交を深めていくとされています。
和蘭由来の主な日本語
普段、何げなく使っている言葉の中には、オランダ語が由来というものが数多くあります。オランダ語の音をまねた、クッキー・コーヒー・コップ・ビール・ポン酢・缶・ゴム・ランドセル・カバンなどがその一例です。
医療用語にも多く見られ、メス・エレキテル・ギプス・ペスト・モルヒネ・リウマチなどが該当します。
地名である東京の『八重洲』は、リーフデ号の乗組員だったヤン・ヨーステンの名前が由来です。日本名の『耶楊子(ヤヨウス)』が転じて、八重洲になったとされています。