製品イノベーションの舞台裏:検索とチャットの統合
Prometheusは注目すべき先駆的なAIベースのイノベーションだが、ユーザーエクスペリエンスの観点からその機能をBingにどう統合するべきか明確にはなっていなかった。Bingチームでの主な見解は以下の2つだ。
●検索は習慣として根付いているため、UXは現在のウェブ検索のようにして、PrometheusベースのChatアンサーをメインUXに追加すればいいのではないかという考えだ。Chatの回答も、他の回答と同様クエリとの関連性に基づいてその位置づけが決まる。
●これを機に検索のパラダイムを従来のウェブと回答結果から変更し、新しいインタラクティブなチャットベースの検索方法にするチャンスだという考えだ。
どちらの意見も一部正しいのだが、いずれも全体像を把握できていなかった。従来の検索を支持する人は、一般的にナビゲーショナルクエリを使って自分の意見を主張する一方、会話型アプローチを推進する人は、ショッピングや旅行などリサーチ風の検索セッションを提示していた。そこで、双方の意見を説明しようと、それぞれのクエリを以下のようなグラフにした。
すると、従来の検索モードでパフォーマンスが高まるクエリもあれば、会話型やチャットモードでより良い結果を出すクエリもあることが明らかになった。また、クエリの内容によってどちらか一方を好むユーザーもいる。つまり、理想的なBing検索サービスでは、ユーザーの意図や好みに応じて検索モードとチャットモードをスムーズに切り替える必要があったのだ。
そこでデザインチームがこの課題に取り組み、何度も繰り返し試みた結果、検索とチャットをひとつのインターフェイスに統合した新しいUXを開発した。これによりユーザーは、ページ内のUX要素をクリックするか、上下にスクロールまたはスワイプするだけで、UXを簡単に切り替えることが可能になる。
この製品、いやUXの革新は、間違いなくPrometheusテクノロジと肩を並べるほど重要だ。これにより、製品を直感的に最大限活用できるようになるのだ。以下のビデオは、旅行検索セッションで検索からチャットへ、またチャットから検索へとスムーズに移行している様子を示したものだ。
すべての舞台裏にあるのは人
Prometheusのパワーと新しい検索とチャットのインタラクションモデルは、今後のブログで解説する他のイノベーションと共に統合された。これが、検索に次のレベルのイノベーションをもたらす新しいBingの構築へとつながったのだ。検索はこれまでとは違うものになると、私は確信している。
新しいBingのユーザーは、より完全で文脈に沿った回答を得ることができ、場合によっては検索でのリサーチ時間を何時間も短縮できるようになるだろう。つまり、重要なことにより多くの時間を使えるようになるのだ。
<解説>
ジョーディ リバス (Jordi Ribas)氏/検索および AI 担当 コーポレートバイスプレジデント
出典元:日本マイクロソフト株式会社
構成/こじへい