今、最も注目の航空会社が、JAL100%出資による国際線中長距離LCC「ZIPAIR」。〝一度乗るともう一度乗りたくなる〟というリピーター続出で勢いづく同エアラインの人気について、航空・旅行アナリストの鳥海高太朗さんに分析してもらった。
大型機材で快適に過ごせる
ZIPAIRは全機、機内空間が広いボーイング787型機で運航。通常の機体よりも湿度が高く、乾燥しにくいのもうれしいポイント。
機内Wi-Fiが無料で使える
国際線ではほとんどの機内インターネットが有料だが、ZIPAIRは無料。Webやメール、メッセージがいつでもチェックできる。
最小限の機内サービスで高コスパ
食事やアメニティー、座席指定などを有料化することで、格安運賃を実現。この自由選択権も支持される理由のひとつに。
座席数4割増で安さを実現
JALでは186席もしくは206席仕様のボーイング787-8型機を、ZIPAIRでは290席仕様に拡大、座席数を4割近く増やすことで安さを実現している。座席配列もJALでは2-4-2のところ、3-3-3列に。
使用機材/ボーイング787-8型機
座席数/ZIP Full-Flat 18席、Standard272席、横列3-3-3席
運航から2年で単月黒字を達成したモンスターLCC
近年の航空業界において、続々と新規参入が進むLCC。とはいえ、その多くは短距離路線で、国際線中長距離をターゲットとする航空会社は少なかった。特にアジアと北米を結ぶLCCは皆無の中、2018年に設立されたのが、JAL100%出資によるZIPAIRだ。
だが、その輝かしいスタートを目前に未曾有のパンデミックが世界を襲う。当初は2020年5月14日、成田~バンコク線で就航する計画だったが、結果、6月3日、客を乗せない貨物便という異例の形で運航を開始。その後10月16日に初の旅客定期便として成田~ソウル(仁川)線を開設、12月19日には成田~ホノルル線を就航。念願の北米乗り入れを成田~ロサンゼルス線の就航で実現したのは、さらに約1年たった2021年12月25日だった。
一方でコロナ禍においても、JALが集荷する貨物を搭載して収入を確保、その後は徐々に旅客収入を着実に増やし、2022年夏には、単月での黒字を達成している。
この短期間でこれほどの成果を収めた理由は、同社が最もこだわった国際線中長距離でも快適に移動できる空間づくりにある。
一般にLCC=座席が狭い、と思われがちだが、同社では、31インチ(約79cm)のシートピッチを実現。実際に座ってみると海外のFSC(フルサービスキャリア)のエコノミークラスと同等、もしくは若干広く感じるほど。さらに、機体前方には18席のフルフラットシート「ZIP Full-Flat」を用意。海外のFSCにも採用される同シートは、完全フルフラットかつ、全席通路側にアクセスできるとあって、この席から先に埋まることが多いほど、大人気だという。
ただしそこは低価格がウリのLCC。アップグレードはシートのみで、ラウンジの利用や優先搭乗などのサービスはなし。機内食も有料とすることで、割安な運賃水準を維持しているのだ。例えばアメリカ西海岸へは安い時で片道10万円台前半とFSCの約半額。エコノミークラス相当の「Standard」は、アメリカ西海岸まで、片道3万円台で販売されることもあり、多くの旅行好きを歓喜させている。
一方で注意すべき点が、購入チケットについては原則、払い戻し・変更が一切不可になること。シートモニターも非搭載だが、国際線では珍しく機内Wi-Fiがネット接続含めすべて無料なので、タブレットやスマホで十分こと足りる。
また、最近ではインバウンドの利用もうなぎ上り。来年3月に始動するANAの第3ブランド「AirJapan」とともに、両社がインバウンドを呼び込む起爆剤となることも期待されている。
そしてその勢いのまま、この夏新たにサンフランシスコとマニラへ。それに先んじてハワイ線では全便カーボンニュートラル、通年を通してCO2排出量ゼロとなる世界初の取り組みを行なうなど環境問題にも意欲的だ。こうした動きを含め、同社が国際線中長距離LCCマーケットを牽引する存在になることは間違いない。
今年は新たに2路線の就航が決定
アジアはソウル、バンコク、シンガポールに次いで、アジアではマニラ線、アメリカでは4路線目として今年夏前にサンフランシスコへの就航が予定されている。
◆就航都市とダイヤ、料金例(〜10/28)
※料金は成田発の片道、1席当たりの金額。運賃額のほかに空港使用料、各種諸税を含む。運賃には機内持ち込み手荷物(7kgまで)を含む。※GWや夏季は特別ダイヤあり。
鳥海高太朗さんが伝授!「ZIPAIR」7つのお得な活用術
RULE 01|離陸後に座席をアップグレード!
一部航空会社ではチェックイン時、追加料金でアップグレードできるが、ZIPAIRでは離陸後、空席があればフルフラットシートに変更可能。操作は、機内販売のセルフオーダーシステムで。
◆機内座席アップグレード料金表
RULE 02|片道利用こそ上級テクニック
LCCの特徴のひとつが片道単位の航空券販売。例えば韓国へは往路・成田発ZIPAIR、復路・羽田着Peachで。深夜1時着にはなるが、滞在時間が長く取れ、翌朝から仕事ができる。
◆韓国行きのベストチョイスは「行きZIPAIR」「帰りPeach」
※価格は目安です
RULE 03|機内販売で種類豊富なお酒を注文
ドリンクやお菓子・おつまみなどの事前予約不要の機内販売も充実。ビール、ハイボール、チューハイ、ワイン、日本酒、さらにソフトドリンクなど種類豊富だ。
RULE 04|子供と一緒ならお得な定額運賃「U6」
6歳以下の子供に適用される定額運賃が「U6」。子供用の席1席に加え、通常は有料の事前座席指定料金が無料、かつ隣の席が確保できるお得でうれしいサービスだ。
RULE 05|JALマイルが1.5倍になる「ZIPポイント」に交換
JALマイレージバンクで貯めたマイルを1ポイント=1円で使える「ZIPポイント」に交換可能。1万マイル=1万5000ZIPポイントで交換し、ZIPAIR航空券に充当可能。
RULE 06|LCC随一の機内食は予約締め切り時間に注意
日本発着LCCで有料販売の機内食が最も充実。ただしメニューによって予約締め切り時間が異なるので注意。24時間前まで注文できるメニューも。
◆機内食予約時間締め切りの一例
RULE 07|毛布と枕は持ち込みで
サービスの簡略化でコストを抑えているため、枕やブランケットなど、FSC ではデフォルトのアメニティーもオプション扱い。安く済ませたいなら持ち込みで!
◆ZIPAIR 追加サービスパッケージ
取材・文/鳥海高太朗
※運航スケジュールは2023年3月末時点の情報で変更になる場合があります。
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