ビジネスシーンで使われる言葉の中には、本来の意味とは異なる使われ方をするものも少なくない。「手触り感」もその一つだ。一見すると「手触り」や「触感」のことと思いがちだが、「手触り感」と表現することで独特の意味を持つケースがある。「手触り感のある仕事」という表現に出会った場合に何を意味しているかをイメージできると、相手の意図を汲み取り、仕事をスムーズに進める上で役立つはずだ。
今回は、ビジネスにおける「手触り感」の意味と使い方について解説する。
「手触り感」とはどんな意味?
「手触り感」という言葉は、主にビジネスシーンで使われる造語であり、国語辞典などの辞書には載っていない。語感の近い言葉として「手触り」「肌触り」「感触」「触感」などがあるが、これらは「手で触れたときの感触」「皮膚が感じる感覚」などを意味しており、ビジネスで使われる「手触り感」とは意味が異なる。
ビジネスの「手触り感」は、現場に直接関わりエンドユーザーの反応を感じること
「手触り感」は多くの場合、仕事の現場で使われる。例えば、新規の事業・店舗等を立ち上げることや、社内向けの業務改善を行うこと、自社のサービスや製品を消費者・顧客といったエンドユーザーに売り込むことなど、現場の反応を直接感じられる距離で行う仕事全般を指す。
特にコンサル業界における「手触り感」は、コンサルティング業務の一環である「市場調査」や「データ分析」の対局にある概念として「現場で起きていることを重視する」という意味で使われるケースが多い。
「手触り感のある仕事」とは
「手触り感のある仕事」という言葉は、「現場の反応を感じられる仕事」「自分で事業を動かしている実感を得られる仕事」などの意味で使われる。
一例としては、コンサルティングファームから事業会社に転職する場合の志望動機で「自分でビジネスを回したい」「消費者の声を聞ける距離で働きたい」と感じたことなどを「手触り感のある仕事をしたい」と表現するケースが挙げられる。
「手触り感」の言い換え表現・使い方
現場に触れることの大切さを表している「手触り感」という言葉だが、正確な日本語ではないことや、業界・年代によって知名度が異なることから、使える状況が限られる点に注意したい。幅広い相手やシチュエーションに通用させたい場合は、「手触り感」の類語・言い換え表現を知っておくと便利だ。
「手触り感」の類語・言い換え表現は?
「手触り感」は、複数のニュアンスを持つ言葉であるため、別の言葉に言い換える場合は、それぞれの文脈や強調したい内容に合わせて選ぶのが良い。例えば、事業上の課題やエンドユーザーの反応に現場で触れる行為について表現する場合は、「現場主義」「顧客主導型」などの言葉が類語として使える。
一方、事業に積極的に関わることで仕事の実感を得る行為を表現する場合は、一言で端的に言い表せる言葉がないため、「事業を大きくしていくやりがい」などのように具体的に説明すると良いだろう。
「手触り感」の使い方
「手触り感」の使い方をより具体的にイメージできる例文を紹介しよう。
【例文】
「データだけではわからない手触り感を得るためにも、若手社員を現場へ出向させるのは意義がある」
「マネージャーになって痛感したのは、現場の手触り感から遠ざかってしまったことでした」
「手触り感のある仕事をするために起業を決意した」
「手触り感」の英語表現
「手触り感」は日本のビジネスシーンで使い勝手の良い言葉だが、外国人の上司や同僚、海外の取引先などにニュアンスを説明する場合、どのように表現するか迷いがちだ。
「手触り感」を直接表現する英語はないため、相手にニュアンスを伝えたいときは日本語の類語・言い換え表現を参考に言葉を使い分ける方法がおすすめだ。例えば、「現場主義」であれば「on-the-job-experience」「hands-on approach」などの単語が該当する。また、「顧客主導型」であれば「customer driven」となる。よりシンプルに表現したい場合は「job satisfaction(働きがい)」や、やりがい「rewarding」「worthwhile(やりがい)」などを使用しても良いだろう。
文/編集部