■連載/阿部純子のトレンド探検隊
アンケート調査からわかった「美と健康」「社会課題」と並らび関心が高かった「食」
ワコールが、食品や食卓まわりの雑貨を展開するモール型 ECサイト「WACOAL SPOON(ワコール・スプーン) 」を開設した。スイーツ、惣菜などの食品と雑貨をあわせた6カテゴリで、103の販売元、550 アイテム(2023年4月10日時点)を取り扱う。ワコールがプラットフォーマー、生産者が販売元となり、ユーザーがサイト内で決済すると販売元から商品が直送される。
インナーウエアを中心とした衣料品メーカーであるワコールがなぜ食品関連のECサイトを展開するようになったのか、ワコール 販売本部 通信販売事業部 WACOAL SPOON事業推進課長 後藤真由氏はこう話す。
「お客様ひとりひとりと“深く・広く・長く”の関係性を築く事業を進めている中で、昨年3月から開始された新会員サービス『ワコールメンバーズ』のスタートを見据えて、2020年末ごろから会員基盤を活かしたサービスの検討を開始しました。
ワコールメンバーズの方々が興味、関心があること、ワコールに期待されているサービスはなにかを明らかにしたいと、2021年7月ごろにワコーズメンバーズへのアンケート調査を実施。自身や身の回りのことだけでなく、社会課題にも関心のある方が多く、フードロス削減など食にまつわる課題への関心も高いことがわかりました。
アンケート調査の結果から見えてきた、“ワコールらしさ”である『女性視点』『美と健康』『社会課題』と、関心分野の『食』を掛け合わせ、ワコールメンバーズの方々に喜んでいただけるサービスの可能性として、ワコールらしい視点でセレクトした食品をお取り寄せできるサイト、美と健康や社会課題にまつわる情報も充実したサイトという方向性ができました」(後藤氏)
商品のセレクトにあたってはワコールの社員がバイヤーとなり、実際に現地に赴いて味わいを体験、“ぜひおすすめしたい”と感じたアイテムを厳選している。バイヤー担当は女性4名でうち2名は社内公募によりチームに加わった。バイヤーの一人、ワコール 販売本部 通信販売事業部 WACOAL SPOON事業推進課 小野寧莉氏はこう話す。
「”美味しい”の裏側に、たくさんの苦悩や努力があることを知りました。電話やオンラインで商談ができる時代ですが、実際にお伺いし、その土地の空気を感じ、生産者や職人と対話をすることでWACOAL SPOONの想いに共感いただき、ご出店いただくことが大切だと感じています。
商談で各地に足を運ぶ中、乗り慣れないローカル線での移動や、照りつける陽射しの中、山道を登っていったこともありました。そんなとき、冷たい飲み物をご用意して出迎えてくださったり、お忙しい中駅まで送っていってくださったり、搾りたての牛乳を飲ませていただいたり、工場を見学させてくださったり、生産者の方々の心暖かい対応が印象に残っています」(小野氏)
WACOAL SPOONのもう一つの特徴がサイト内のブログコンテンツ。食を通して社会課題の解決に取り組む販売元を取材した「ひと匙のサステナブログ」では、ものづくりへの想いやストーリー、サステナブルな取組みを紹介している。
また、からだとこころに焦点を当てた特集や、ワコールの創業の地・京都の四季にあわせた特集など、ワコールならではの視点の特集も展開する。
サイトオープニング記念して、和の要素を取り入れた京都の「京洋菓子司 一善や」オリジナルケーキ「黒無花果と加加阿(くろいちじくとかかお)」(5400円)を 300個限定で発売している。
酒粕に漬け込んだ黒無花果を、ひとつのケーキに5個使用。創業350周年を迎える老舗酒蔵「玉乃光酒造」の純米大吟醸酒粕を使用、酒粕の酵母の力が、ポリフェノールやアントシアニンが豊富といわれる黒無花果の甘みや食感を引き立てている。
「酒粕の酵母の力が、黒無花果の甘みや、ねっとり、つぶつぶした食感を際立たせつつ皮をやわらかくし、なめらかな生地との一体感を生んでいます。パリッと外側のチョコレートコーティングを破ると、じゅわっと滴るほどジューシーな黒無花果は贅沢な味わい。コーヒーや紅茶だけでなく、辛口のワインやシャンパン、日本酒との相性も抜群です」(小野氏)