韓国では、推しのアイドルや有名人の誕生日をお祝いするために、ファン同士がお金を出し合って広告を出稿する文化があり、街中であらゆる形態の広告が見かけられる。この広告は「センイル広告」と呼ばれ、近年日本でも取り入れられるようになってきた広告手法だ。
そこで本記事では、センイル広告とは何かをはじめ、流行の背景や主な事例、出稿方法について解説する。
そもそも「センイル広告」って何?
「センイル」とは、韓国語で「誕生日」のこと。一般的な広告との違いは、広告を出すきっかけや目的にある。まずはセンイル広告の特徴や普及の背景について確認していこう。
センイル広告の特徴
韓国では、ファン個人が営利目的ではなく、純粋に「好きなアイドルの誕生日をお祝いしたい」という気持ちから出資し合って打ち出す広告を「センイル広告」と呼ぶ。日本語では、「応援広告」の一つに位置付けされる。
一般的な広告は、商品やサービスの利益向上のために打ち出されるものだ。一方で、応援広告は、依頼人の精神的充足感や優先され、推しへの想いを表現するための手段として用いられる。センイル広告を出稿する具体的なメリットとしては、「推しの存在を世間に広められる」「ファン同士の一体感が演出できる」「有名人本人へ応援の気持ちや感謝をダイレクトに届けられる」などがある。
センイル広告が日本でも注目されるようになった背景
韓国の文化であるセンイル広告が日本でも注目されるようになったきっかけは、2019年に放送・配信された公開オーディション番組「PRODUCE101」だ。この番組に出演したオーディション参加者の宣材写真を応援目的で使用することが公式的に認められたことから、ファンの間で自らの推しを応援するためにさまざまな場所で広告出稿をする動きが見られた。
センイル広告の具体的な事例
ここからは、近年実施されている韓国・日本それぞれのセンイル広告の事例を紹介していこう。
韓国での事例
韓国では、ラッピングバスや宣伝カー、駅構内に掲示されるポスターを使ったセンイル広告が打ち出されることが多い。また、他にもSNS広告やカップホルダー広告も韓国では一般的な広告手法だ。「カップホルダー広告」は、日本ではあまりなじみのない手法だが、韓国ではコーヒー文化が盛んなことから、カフェで提供されるコーヒーカップホルダーに広告を入れることがよくある。飲んだ後も手元に残せることから、推しのカップホルダーのコレクションを楽しむファンも多くいるようだ。韓国でカップホルダー広告を目にしたファンが日本国内でもこのような広告手法を取り入れようとする例も存在する。
日本での事例
日本では、まだ街中でセンイル広告を目にする機会が少ないが、西武新宿駅の目の前にある大型ビジョン「ユニカビジョン」では、有志のファンが協力して推しの誕生日をお祝いする映像が放映されることがある。また、推しの広告を録画したり、記念撮影をしたりするためにファンたちがユニカビジョンの前に集まる現象も見られる。
センイル広告以外の応援広告は?
センイル広告以外にも、応援広告にはいくつかの種類があるが、「周記念日広告」「イベント告知広告」の2種類が有名だ。
・周記念日広告
推しの芸能人の周年記念を祝うためにファンが出稿する広告のこと
・イベント告知広告
ライブイベントや新曲リリース発売などがある時に、推しの活動を応援するために出される広告
センイル広告・応援広告の出稿方法
最後に、実際にセンイル広告や応援広告を出稿する手順や費用について見ていこう。
出稿の流れ
日本国内では、個人が広告出稿をすることへのハードルがまだ高い状況だ。そのため、SNSやクラウドファンディングを使い協力者や資金を集め、広告代理店に依頼をして広告出稿が進められるケースが多い。広告を企画してから出稿されるまでの主な流れは以下の通りだ。
【出稿手順】
- 広告費用の資金調達
- 広告代理店を探す
- センイル広告の作成で使用する素材集めと画像の使用許可の取得
- デザインを制作する
- 広告を出稿する
費用
必要なコストについては、企業がビジネスとして打ち出すPR広告と大差はないと言われている。また、一般的には多くの人の目に留まる場所ほど、広告の値段が高くなる傾向にあるため、目立つ場所に広告を出したい場合は莫大な費用を要することも珍しくない。
※データは2023年4月上旬時点のもの。
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文/編集部