医療機関でのユニバーサルマスキングはもはや適切ではない
医療機関でのマスクの着用は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が登場する以前から、感染予防のための重要な手段とされてきた。
COVID-19パンデミックの発生を受けてマスクの着用が拡大され、公共の場と同様に、医療機関でも、医療従事者から患者や病院訪問者までの全ての人がマスクを着用する「ユニバーサルマスキング」が実施され、感染予防に役立ってきた。
しかし、パンデミックの内容や状況が大きく変化した今となっては、医療機関でのユニバーサルマスキングは、もはや適切ではないとする見解が、「Annals of Internal Medicine」に2023年4月18日掲載された。
COVID-19が人々にかける負荷は、新型コロナウイルス検査へのアクセスの改善、集団レベルでの免疫獲得、ウイルス自体の弱毒化、ワクチンや治療法の普及により、経時的に軽減されていった。
世界保健機関(WHO)と米国連邦政府は、すでにCOVID-19による公衆衛生上の緊急事態の終了を発表している。それにもかかわらず、医療現場では広範囲なマスク着用がいまだに義務付けられている。
米ハーバード大学医学大学院のErica S. Shenoy氏らはこの現実に着目し、医療現場におけるユニバーサルマスキングの有用性とその方針の維持がもたらす潜在的な負の影響について検討した。
Shenoy氏らは、感染を制限する他の戦略とともに実施されたマスクの着用は、公衆衛生ガイドラインや医療疫学の専門家により支持されており、パンデミック初期のCOVID-19に関する限られた知識と予防・治療選択肢の欠如を考えると、適切な対応であったと述べている。
しかし、COVID-19の負担が次第に軽減されるに伴い、多くの感染予防対策も実施されなくなったにもかかわらず、医療現場の多くでは、マスク着用も含めた感染予防対策が変わらず講じられている。
著者らは、マスク着用の維持は、患者と医療従事者間での感染リスクを低下させ得るという点ではわずかなベネフィットがあることを認めている。
しかし、そのベネフィットは、マスク着用により生じる犠牲や損失と比較検討されるべきだと主張する。
例えば、マスク着用は、コミュニケーションの妨げとなる。特に、英語を母語としない患者や、聴覚障害があり読唇やその他の非言語シグナルに頼ってコミュニケーションを取る必要がある患者への影響は大きい。
また、マスクを着用しての会話では、聞く側にいっそうの努力が必要になるため、認知機能にかかる負荷も増加する。
さらに、マスクを着用していると、表情が分かりづらくなったり、孤立感の増長につながったり、人同士のつながりや信頼、共感の認識に悪影響を及ぼす可能性があると述べている。
こうしたことを踏まえて著者らは、「2019年に新型コロナウイルスが最初に確認されて以来、その予防と管理において、われわれは大きな進歩を遂げた。われわれは今や、その成果を認識し、これまで講じてきた方針を継続しても得られるベネフィットが少ないと予想される場合には、その実施を撤回するべき時期にきている」と述べている。(HealthDay News 2023年4月17日)
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https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M23-0793
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構成/DIME編集部