年配の上司や顧客から「ツーカー」「ツーカーの仲」と言われて、なんのことだかわからずに戸惑った経験はないだろうか。言葉は世代によって浸透度の異なるものが多い。「ツーカー」もその一つだ。昭和の中頃から使われ始めたため、当時から働いていたビジネスパーソンにはお馴染みだが、令和の現在は聞いたことがない人も増えている。
とはいえ、簡単な言葉の意味や使われるシーンを知っておくと教養としてはもちろん、人間関係や働き方に対する上の世代のマインドを理解する上でも役立つはずだ。本記事では「ツーカー」の意味と言葉の由来、使い方や類語・言い換え表現について解説する。
「ツーカー」とはどんな意味?語源は?
まずは「ツーカー」の意味や言葉の由来から見ていこう。
「ツーカー」の意味
「ツーカー」とは1対1の人間関係を表す言葉の一つ。お互いをよく知る気心が知れた2人の人間の間柄を指し、「ツーカーの仲」と言えば、多くを話さなくてもお互いの気持ちを理解し合える親友や相棒、長年連れ添った夫婦、またはそれに匹敵する仲の良い相手を指すことが多い。
恋人や配偶者に対しても「ツーカー」という言葉は使われる場合があるが、「ツーカー」そのものに恋愛的な意味はなく、あくまで特定の2人の仲の良さを言い表す言葉である点を押さえておこう。
「つうといえばかあ」が言葉の由来
「ツーカー」の語源は「つうといえばかあ」を縮めたものとする説が有力だ。「つうことだ」と言った相手に対して「そうかあ」と答えるやりとりが、詳しい内容を話さなくても話が通じる(ほどに親しい)ことの表現として使われ、「つうといえばかあ」が「ツーカー」に発展したと言われる。
一方、「ツーカー」のツーが「通じる」を意味し、お互いに話の通じる(話しやすい)関係を指すようになったとする説もある。この場合、ツーカーの「カー」の方は「ツー」に対する語呂合わせで、深い意味はないとされる。
「ツーカー」の類語や使い方
ポジティブな人間関係を表現できる「ツーカー」という言葉だが、現在は知らない世代も増えている。社内報や議事録などの文書でも使いにくいため、同じ意味の言い換え表現や類語を知っておくと便利だ。
「ツーカー」の類語・言い換え表現は?
・以心伝心(いしんでんしん)
言葉や文字を使わずに自然と心が通じ合うこと。もとは禅宗の用語で、言葉で表せない悟りや真理を師から弟子へと伝えることを指した。
・阿吽の呼吸(あうんのこきゅう)
2人以上の人間が一緒に物事を行う際に、お互いが示す微妙な気持ちや様子。またはそれを巧みに一致させること。口を開いて息を吐く「阿(あ)」と、口を閉じて息を吸う「吽(うん)」を合わせて「阿吽(あうん)」と言い、能の立ち合いなどでお互いの呼吸を合わせることを指して「阿吽の呼吸」と言った。
また、四字熟語や慣用句を使わずに一般的な言葉で表現したい場合は、「気心の(が)知れた」「仲の良い」「気の置けない」「なじみの」「懇意にしている」などを使うと良いだろう。
「ツーカー」を使った例文
「A社の部長と私は、学生時代からの友人でツーカーの仲なんだ」
「刑事ドラマのようなツーカーのコンビに憧れる」
「“それ”や“あれ”と言うだけで話が通じるなんて、ツーカーな夫婦だ」
「ツーカー」は死語か?
「ツーカー」という言葉が使われだしたのは昭和40年代頃と言われている。昭和から平成の中頃まではビジネスシーンに限らず広く使われていたものの、平成の終わりから令和にかけて使用者が減少していき、現在の若い世代は知らないケースも多い。
また、インターネットやSNSで定期的に話題となる「おっさんビジネス用語」(年配の男性が使いがちな言葉)のラインナップに「ツーカー」も加わっていることから、言葉としての汎用性は低くなっていると言えそうだ。
「ツーカー(Tu-Ka)」「デジタルツーカー(Digital Tu-Ka)」とは?
一定以上の世代であれば、「ツーカー」と聞いて携帯電話関連のサービスを思い出す人も多いだろう。KDDIの携帯電話ブランド「ツーカー (Tu-Ka)」に加え、ソフトバンクの前身企業の一つである「デジタルツーカー(Digital Tu-Ka)」も、今はないが携帯電話の歴史に重要な役割を果たす存在なので、概要だけでもチェックしておこう。
KDDIの2G回線&携帯ブランド「ツーカー (Tu-Ka)」
「ツーカー (Tu-Ka)」は、かつて日本に存在した通信事業者「ツーカーセルラー東京」と「ツーカーセルラー東海」「ツーカーホン関西」が提供していた2G回線サービスと携帯電話ブランドの名称。ブランド名は「つうといえばかあ」の「ツーカー」が由来となっている。浜崎あゆみを起用したCM(2000年代初頭)も有名だ。
ソフトバンクの前身企業の一つ「デジタルツーカー(Digital Tu-Ka)」
「デジタルツーカー(Digital Tu-Ka)」は、かつて存在していた携帯電話事業者グループ。ソフトバンクの前身企業である「日本テレコム」と当時携帯電話事業に力を入れていた「日産自動車」が合同で設立した。
文/編集部