男女問わず美容への意識が高まっていると言われる今、脱毛サロンが人気を博している。
芸能人やインフルエンサーを広告塔に起用した大々的なプロモーションや「通い放題」などの謳い文句で注目を集めているが、その一方で、倒産件数が急増しているという。
帝国データバンクはこのほど、「脱毛サロン」の倒産発生状況について調査・分析を行い、その結果を発表した。
「通い放題」トラブル相次ぐ脱毛サロン、倒産が過去最多に
「通い放題」などの契約でトラブルが相次ぐ脱毛サロンの倒産が急増している。医療行為を伴わないエステ脱毛を専門とする「脱毛サロン」の倒産は、2022年度(22年4月-23年3月)に7件判明。
前年度の1件から大幅に増加して過去最多を更新したほか、年内には「脱毛ラボ」など大手脱毛サロンが経営破綻、3万人の一般利用者が被害を受けた。ただ、水面下の私的整理や廃業などを含めれば、実際はより多くの脱毛サロンが淘汰されたとみられる。
脱毛サロン業界では、医療レーザー脱毛に比べて施術難易度が低いことや、1台100万円以下の安価で高性能な脱毛マシンなどの普及から参入障壁が低く、異業種からの参入が相次いでいた。
また、会員獲得を目的に著名人を起用した大規模な広告、「月額1万円以下」「通い放題」など施術費用の低価格化で利用者が増加。女性だけでなく男性専用の脱毛サロンなど新たな事業領域の開拓も進んだほか、若者を中心にSNS映えなど美容意識の高まり、脱毛のステータス化も背景に一定の需要を獲得し、「脱毛サロン専門市場」は成長を続けてきた。
そうした一方で、店舗の急拡大や利用者急増で施術スタッフの確保が追い付かず「予約が取れない」などの契約トラブルを抱えて利用者の信用を失い、解約が増加するケースが少なくない。
新規の会員獲得も同業他店との顧客獲得競争で厳しく、低価格の施術費用も重なって広告宣伝費や固定費などの販管費が重くのしかかり、資金繰りが急激に悪化した脱毛サロンも過去に複数発生している。
安さを強調した顧客の目を引くための広告や、提供サービスの質など、利用者保護に立った脱毛サロンのありかたが問われている。
<調査概要>
集計期間:2022年4月1日~23年3月31日
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
調査機関:帝国データバンク
出典元:帝国データバンク
構成/こじへい