『一見さん』とは初めて来店した客のことです。どのような使われ方をするのでしょうか?辞書にも載っている一般的な意味とともに、最近見られる表現についても紹介します。加えて『一見さん』を使った例文も見ていきましょう。
「一見さん」の読み方や意味
『一見さん』を正しく読んだり使ったりできるよう、まずは読み方や意味を解説します。
「一見」の読み方は2種類
漢字で『一見』と書くと、読み方は『いっけん』『いちげん』の二通りです。どちらの読み方でも正解ですが、意味は異なります。
『いっけん』と読む場合、少し見る・一度見るという意味です。例えば『一見(いっけん)本物のようだが、よく見ると偽物と分かる』というように使います。
『いちげん』と読むときの意味は、初めて会うことや初めて会う人です。また『一見さん』と表現するときの読み方が『いちげんさん』で『いっけんさん』とは読みません。
「一見さん」の意味
『一見さん』には初めて来た客という意味があります。店に関係者がいるわけでなく、なじみのほかの客から紹介を受けたわけでもない、その店へ初めて来た客のことです。
『一見さん』の『見』は、朝廷の宴会へ出席することや、相手を訪れ面会することなどを意味する『見参(げんざん)』の略といわれています。初めての見参に来た人のため『一見さん』と呼びます。
特に旅館や料理屋などを訪れる客に対して使われるケースが多いでしょう。
「一見さんお断り」の意味は?
初めての客を意味する『一見さん』の使い方としてよく知られているのは『一見さんお断り』です。どのような意味を持つ言い回しなのでしょうか?
紹介されないと入れないこと
『一見さんお断り』は紹介されることなく店を訪れても、中へ入れてもらえないことをいいます。格式が高いことを表す言葉として用いられることもよくあり、『紹介されないと入れないくらいすごい店』といった評価の高さも含む表現です。
ただし初めて訪れて入店を断られたとしても、本当に『一見さんお断り』をシステムとしている店であるとは限りません。中には十分なおもてなしができる状態が整っていないことを理由に断られたのを、『一見さんお断りなのだ』と客が感じているケースもあるようです。
システムとしての『一見さんお断り』を実施しているのは、花街のお茶屋さんくらいだといわれています。
花街のお茶屋さんが「一見さんお断り」の理由
花街のお茶屋さんで遊ぶときには財布が必要ありません。クレジットカードもスマホ決済も不要です。客の飲食代や帰りのタクシー代・二次会の店代まで、お茶屋さんが立て替えます。
仮に客が立て替えた料金を踏み倒した場合、お茶屋さんはその客の紹介者へ連絡し請求します。もしも立て替えた料金を踏み倒したのが初めて来た客で紹介者もいなければ、お茶屋さんにとっては大きな損失です。
お茶屋さんが立て替える独自のシステムだからこそ、客をなじみの信用できる人とその人から紹介された人に限定し、万が一の場合にも店に損失が出ないようにしていると考えられます。
予備知識がない人に不親切という意味も
花街のお茶屋さんに特徴的なシステムとしての『一見さんお断り』以外にも、初めて訪れた店で『一見さんお断りだから』と席が空いているのに入店を断られたという経験を持つ人もいるようです。中には『せっかく来たのに不親切だ』と感じる人もいます。
この不親切というニュアンスで使われる『一見さんお断り』もあります。特定のジャンルについて、何も知らない人が初めて見たり聞いたりして難解なときに使われる言い回しです。
ここでは初めての客という意味の『一見さん』に、何も知らない初心者といった意味合いも込められています。
「一見さん」の例文
『一見さん』の使い方を理解できるよう例文を紹介します。初めて来た客という意味の『一見さん』、予備知識のない初心者という意味の『一見さん』両方の例文を見ていきましょう。
初めての客という意味の一見さん
誰からの紹介もなく初めてやってきた客という意味の『一見さん』の例文は以下の通りです。
- 一見さんはお断りしています。
- あそこのご主人は個性的なので一見さんは驚くかもしれません。
- あの店はなじみ客ばかりで、一見さんが行くのには向いていないかもしれません。
- 花街のお茶屋さんは一見さんお断りなので、紹介がなければ著名人でも入れません。
- たまたま知り合った人がなじみの客だったため、一見さんお断りの店へ初めて入りました。
この場合の『一見さん』はお店に関連して用いられることがほとんどです。
初心者という意味の一見さん
初心者やまだ特定のジャンルに触れて日が浅い人を『一見さん』というときには、アニメや漫画などについて触れているケースが多いようです。
- これまでのストーリーや設定の説明がなく、一見さんお断りの内容だった。
- 一見さんお断りの作品だから、見るなら初期のシリーズを読んでからの方が楽しめるよ。
- この説明では理解に苦しむ。一見さんお断りといわれても仕方がない。
作品を理解するのに特別な知識や教養が必要であるにもかかわらず、いきさつなどに触れていない場合に使われます。
構成/編集部