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日本が目指すべきデータドリブンな社会とは?有識者4人が語るデジタルアイデンティティの課題

2023.05.20PR

分散型アイデンティティで働く個人と昭和を引きずる企業のギャップ

 Web3では、すべてのトランザクション(取引)が可視化されます。このIDはこんな仕事をして、こんな報酬を受け取っているということが可視化され、その実績をもとに仕事が得られる経済圏がすでにできています。どこの誰かを明かさなくても、IDがあればデジタル上で働いて、お金を稼ぐことができるようになっているわけです。これまでは学歴や職歴を使っていたわけですが、具体的な仕事の実績が追いかけられるようになれば、そうした経歴も不要だということです。

 IDは、1人に1つである必要はありません。その場ごとにIDを使い分けて個性を輝かせれば、その個性の実績によって新しい投資機会も得られるし、新しい仕事の報酬機会も得られる。自分の中にある個性を別のIDとして、それらをポートフォリオ運営していくのが、Web3的な分散型のアイデンティティなのではないかと思います。今はAIのおかげで言葉の壁、文化の壁も軽々と越えられるし、自分のアバターだったり、どんどん分散できるようになってきています。アイデンティティを分散すればするほど、国や会社に依存せずにポートフォリオを運営できるようになるはずです。

 Web3では個人が国や企業を超えて仕事ができます。フィジカルの制限がなくなる分、企業はこの先、良い人材を確保するのがますます難しくなっていくでしょう。個人がデジタルアイデンティティの活用を始めている一方で、日本の企業にはまだ、終身雇用文化が残っていて人材流動性も低い。このギャップをどう乗り越えるかが、日本の課題だと思います。

尾原和啓IT批評家  尾原和啓
マッキンゼー、NTTドコモ、リクルート、Google、楽天など多くの企業を経て、内閣府新AI戦略検討会議構成員、経産省対外通商政策委員などを歴任。『プロセスエコノミー』(幻冬舎)、『アフターデジタル』(共著、日経BP)ほか著書多数。

大量発生した「作家」と「編集者」の不在

 デジタルアイデンティティという時、認証のことが頭に浮かぶ人も多いと思います。インターネットでは当初から匿名性が特徴であり、本人しか知らないIDとパスワードで判別していました。

 スマホやSNSの登場によって、情報発信が容易になり、それを発信しているのは誰か? という問題も意識されるようになりました。本人名のアカウントのほかにいくつものアカウントを作り、使い分ける人は少なくありません。また匿名のアカウントも多く、フェイクニュースやデマの拡散の一因となっています。

 インターネットの登場で起きた最大の変化は、誰もが表現者、つまり「作家」になることが可能になったことだと思います。その数は約40億人もいるともいわれます。

 デジタルアイデンティティを考える際、本人の自己同一性の確認と同時に、表現者としての自己の存在を主張する「作家」に着目すべきです。ポイントとなるのは誰でも「作家」になれる一方で、コンテンツモデレーション(投稿の監視)をする「編集者」にはなれないということ。そして、ChatGPTのようなAIの登場で、さらに複雑な問題となってきています。

 もうひとつ欠けているのがプライバシーの視点です。私的な領域を他人に知られたくないという感覚ですが、現実世界では、プライバシーを気にする一方で、インターネットでは、ユーザーのデータを安易に提供し、それをもとにビッグテックが巨万の富を得ている。このことに多くの人が声を上げ始めています。だからこそデジタルアイデンティティの議論が盛り上がってきているのです。

武邑光裕メディア美学者、「武邑塾」塾長
武邑光裕
東京大学大学院などで教授職を歴任、激変するメディア環境を研究。2015年からベルリンに移り、欧州発のテックトレンドに独自の分析を加えた論考を発信。近著に『プライバシー・パラドックス データ監視社会と「わたし」の再発明』(黒鳥社)など。

Web3、ブロックチェーンに夢を見すぎてはいけない

 自分の情報がデジタル空間で紐づけられ、蓄積された結果、不当に評価されてしまわないか。デジタルアイデンティティの問題は、もはや他人事ではなくなってきています。すでにデジタル空間で、素性も知らない人とコミュニケーションをするシーンが多くあります。自分が自分であると証明することは社会のデジタル化が進むにつれて重要度が増していくでしょう。

 そもそも現実世界でも本人確認は至るところで行なっていますが、実はデジタル空間での本人確認は、現実世界よりも証明が難しく、認証情報が漏洩したら止めるのが難しいという特徴があります。

 データを民主的に利活用するための仕組みとしてWeb3とその技術的な背景であるブロックチェーンが注目されていますが、仮想通貨で成功していてもアイデンティティ情報の管理を同じ仕組みで構築するのは難しいと思います。ブロックチェーンはあくまでデータを記録して皆で相互監視できるようにした仕組みです。アイデンティティの管理のような現実とリンクするシステムでは脆弱な箇所の発生は避けられず、ブロックチェーン内だけで完結する仕組みにもなり得ないからです。

 また、ビットコインにはデータを保持したり、検証したりするインセンティブがありますが、アイデンティティではその対価もありません。逆に公的に必要な仕組みだからと政府がインセンティブをサポートしてしまうとWeb3の理想とは離れたものとなってしまいます。デジタルアイデンティティの問題は混沌としていますが、解決すべき問題も多い胸躍るフロンティアであると考えます。

岡嶋裕史中央大学
国際情報学部教授/政策文化総合研究所所長
岡嶋裕史
中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。博士(総合政策)。富士総合研究所、関東学院大学経済学部准教授・情報科学センター所長を経て、現在、中央大学国際情報学部教授。『メタバースとは何か』『Web3とは何か』(ともに光文社新書)など著書多数。

多様化するデジタルアイデンティティに行政は対応できるのか?

 自治体でDXアドバイザーを務めているのですが、デジタルアイデンティティが多様化した現在、行政や自治体に求められていることは何か、今後地方自治体の在り方はどう変わっていくのかなど、マイナンバーカードが政府の想定どおりに普及しない原因も含め、考えさせられることも多いです。

 行政や民間のサービスを利用する際、自分のデジタルアイデンティティをどこへ、どんな形で預け、その情報をどうコントロールすべきなのか、またデジタル化によって変わっていく自治体のサービスや納税の在り方についても検討していく必要があると思います。

 一方で、こういったテクノロジーの進化からこぼれ落ちる人たちも当然出てくるはずです。それにどう対処すべきか、デジタル庁が推進する「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。」の意味についても、システム構築の際に考えておくべきでしょう。

 また、ゲームクリエイターとしてオンラインゲームの開発に携わる立場からは、「メタバース」で使われるアバターのアイデンティティをどう扱うか。近年劇的に進化するAIに自分のデジタルアイデンティティを代理させるとどんなことが起こるのか。リアルとバーチャルが曖昧になっていく時代に合わせたルールメイキングやリテラシーの必要性も感じますね。

 個人的にはデジタルアイデンティティの預け先は本来、行政であるべきだと思います。本誌で連載中の近未来の東京を舞台にした社会小説『TOKYO2040』でも未来のID管理のあるべき姿を模索していますので併せて読んでいただくと理解が深まると思います。

沢しおん自治体DX推進アドバイザー、小説家
沢しおん
IT企業役員、小説家。2020年、東京都知事選挙に立候補(2万738票獲得、22人中9位で落選)。IT企業での経験をいかし、自治体顧問としてDX推進分野のアドバイザーに就任。近未来を舞台にした社会小説『TOKYO2040』を本誌で連載中。

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