登場するや否や、瞬く間に世界を席巻しているチャットGPT。こうした対話型AIをはじめとした高性能AIの出現により今、株式市場ではどんな動きが見られるようになっているのか。
三井住友DSアセットマネジメントはこのほど、チャットGPTのブームとそれに伴う株式市場の動きを考察する「AIの進化と市場拡大がけん引する半導体需要 チャットGPTブームで注目集まる半導体企業」と題したマーケットレポートを公開した。詳細は以下の通り。
チャットGPTブーム到来
米オープンAI社が開発した最先端の対話型人工知能(AI)、チャットGPTが世界的なブームを巻き起こしている。チャットGPTのアクティブユーザー数は発表後2カ月で1億人を突破し、業界関係者を大いに驚かせている。
ちなみに、動画投稿アプリ「ティック・トック」の同アクティブユーザー数が1億人を突破したのはサービス開始から9カ月後、写真共有アプリ「インスタグラム」は30カ月後、音楽ストリーミングアプリ「スポティファイ」では55カ月後といわれており、チャットGPTの人気の程が伺える。
チャットGPTブームともいえる状況だが、株式市場ではオープンAIや協業先のマイクロソフトだけでなく、半導体関連企業への関心が高まっている。
AIの「学習」と「推論」を支える高性能半導体
対話型AIが脚光を浴びる中で半導体株に関心が集まるのは、その開発や運用に高度な半導体が重要な役割をはたすからだ。AIはデータを「学習」し「推論」を組み立てることで、従来のコンピューターでは難しかった「判断」を行うことができるとされている。
チャットGPTも膨大なデータを「学習」し、「推論」を行うことで「言語モデル」を構築しているが、こうしたプロセスにはデータセンターを丸ごと稼働させても数カ月を要するとされている。
このため、データ処理能力や演算スピードに優れるAI向け高性能半導体企業が、俄然注目が集めているのだ。
【今後の展開】AIブームの追い風受ける半導体企業、銘柄選別には注意を
対話型AIに代表される高性能なAIの登場をきっかけに、株式市場では半導体株への関心がにわかに高まっている。今年の米株式市場はハイテク株を中心に堅調だが、半導体株全般の値動きを示すフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は、ハイテク銘柄を多く含むナスダック総合指数を大きく上回って推移している。
AI市場の拡大の恩恵を受ける半導体業界だが、銘柄選択には注意が必要だ。というのも、コロナ禍での「巣ごもり需要」に沸いたPCやスマートフォンはこのところ需要減速が鮮明で、半導体全般の引き合いは強くないからだ。
例えば、AIの「学習」プロセスを担う画像演算処理装置(GPU)最大手のエヌビディア(NVIDIA)や、同じくAI用サーバー向けGPUや「推論」プロセスで使われる中央演算処理装置(CPU)大手のアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)の株価は好調だ。
その一方で、PC向けCPUが主力のインテルや、フラッシュメモリーなど記憶媒体用の半導体を製造するマイクロン・テクノロジー(Micron)の株価は、年初来の戻り相場でも大きく出遅れている。
チャットGPTに代表される、膨大なデータを「学習」し、高度な「推論」を行う巨大AIについては、競合する米アルファベットや中国アリババなども開発を積極化させており、今後は様々な分野での利用拡大が続きそうだ。このため、AI関連の半導体銘柄への追い風は、当面続くことが期待できそうだ。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント
構成/こじへい