非正社員『採用予定がある』割合、飲食店やホテルなど個人消費関連業種で高い
規模別に非正社員の『採用予定がある』割合をみると正社員と同様に企業規模が小さいほど割合が低くなっている。業界別では、『農・林・水産』が60.2%で最も高く、『小売』(58.8%)、『運輸・倉庫』(56.9%)も6割近くで続いた。一方、採用予定がない企業は39.2%(同1.9ポイント減)となった。
主な業種別では「飲食店」(91.4%)や「旅館・ホテル」(80.5%)、「飲食料品小売」(75.3%)、「娯楽サービス」(73.4%)など、個人消費関連の業種で『採用予定がある』割合が高い傾向となっている。なかでも、「飲食店」では採用人数が「増加する」企業が約5割にのぼった。新型コロナ感染対策の緩和による人流の増加で人手不足感が高まり、採用が活発となっているとみられる。
企業からは、「新型コロナ禍が収束を見せ、人材の奪い合いになっている」(菓子小売、東京都)のほか、「特に接客業や料理人の確保が難しく求人費用が増加している」(一般食堂、三重県)や「ホテル業界は採用環境が非常に厳しい。人員補充ができず機会損失がすでに発生している」(旅館・ホテル、東京都)といった人手不足の深刻化を訴える声が聞かれた。
企業が求める職種、販売・営業職が42.1%。求める職種も業種によっては多様化
どのような職種の人材を求めているか尋ねたところ、販売、営業職などの「販売の職業」(42.1%)がトップとなった(複数回答、以下同)。次いで、開発・製造技術者などの「専門的・技術的職業」(33.9%)、一般事務員などの「事務的職業」(20.8%)、役員や管理職などの「マネージメント職」(20.7%)が続いた。
業界に特化していない職種をみると、「販売の職業」については、特に『卸売』(71.7%、全体比+29.6ポイント)、『小売』(64.6%、同+22.5ポイント)、『金融』(53.7%、同+11.6ポイント)といった業界における割合が比較的高かった。
「専門的・技術的職業」は『製造』(53.9%、同+20.0ポイント)で高く、「事務的職業」は『金融』(39.5%、同+18.7ポイント)で目立っている。また、「マネージメント職」は『運輸・倉庫』(32.2%、同+11.5ポイント)で特に求められている。企業からは、「中間層の管理職が不足している」(一般貨物自動車運送、福岡県)といった声があがっていた。
ほかにも、データサイエンティスト、データエンジニアなど「データ分析・技術職」は『金融』(19.0%、同+11.4ポイント)で高くなっている。
賃上げを行う企業ほど採用に積極的
採用動向と賃上げの関係をみると、正社員・非正社員ともに賃上げを実施する予定の企業ほど採用予定のある企業の割合が高い。
正社員では、「採用予定がある」企業の63.9%が2023年度の賃上げを見込んでいる一方、「採用予定はない」企業は44.3%にとどまり、採用予定の有無において賃上げの実施割合に19.6ポイントの開きが確認できた。非正社員においても、「採用予定がある」企業の賃上げ割合(37.0%)は「採用予定はない」の賃上げ割合(15.4%)より21.6ポイント上回っている。
採用予定と賃上げの関係を主な業種別にみると、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応などを含めIT人材獲得の重要性が増す「情報サービス」で、採用と賃上げがいずれも高水準となった。総じて、賃上げと採用予定には緩やかな相関関係がみられ(相関係数0.373)、賃上げ割合が1ポイント上昇すると採用予定割合が0.5ポイント上昇するという傾向が表れていた[1]。
企業からは、「人手不足感があるが、採用レベルを下げずに雇用を進める。特にパートタイム勤務者について近隣地域の賃金を調査し、見劣る部分は時給を上げる」(医療用品製造、栃木県)や「本年度は雇用条件(賃金)をアップしハローワークへ提出したものの、応募が高齢者以外はない状況」(冷暖房設備工事、岐阜県)といった声が聞かれた。
<調査概要>
調査期間:2023年2月14日~2月28日(インターネット調査)。なお、雇用動向に関する調査は2005年2月以降、毎年実施し、今回で19回目
調査対象:調査対象は全国2万7,607社で、有効回答企業数は1万203社(回答率37.0%)
調査機関:帝国データバンク
出典元:帝国データバンク
構成/こじへい