有効求人倍率は2022年6月から上昇し続け、同年12月には新型コロナの影響が出始めた2020年3月以降で最高となる1.45倍に上昇、2023年1月も引き続き高水準で推移している。
また、帝国データバンクが実施した調査によると、2023年2月における人手不足企業の割合は6カ月連続で正社員で5割、非正社員で3割を上回る高水準で推移している。
そこで、帝国データバンクはこのほど、2023年度の雇用動向に関する企業の意識について調査を実施し、その結果を発表した。本調査は、TDB景気動向調査2023年2月調査とともに行われている。
正社員の採用予定がある企業は63.0%、採用が増加する企業は引き続きコロナ前上回る
2023年度(2023年4月~2024年3月入社)の正社員の採用状況について尋ねたところ、『採用予定がある』(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)と考えている企業は前回調査(2022年2月実施)から0.8ポイント増の63.0%となり、2年連続で上昇した。
また、採用予定がある企業の内訳は、採用人数が「増加する」企業が25.7%(前年度比0.2ポイント増)と、新型コロナ前の2019年度(23.4%)を上回り、4社に1社で増加する見通しとなっている。
採用人数が「増加する」とした企業からは、「接客スタッフ(主に料飲、宿泊部門)が不足気味のため、新入社員を多めに採用」(旅館、神奈川県)や「人手不足は続いており、雇用は急務と考えている。
ただ技術職の採用については、成り手がいないことから、雇用の条件や会社自体の魅力作りに力を入れている」(木造建築工事、栃木県)などの声があがっており、多くの企業で人手不足が厳しいなかで、人材を引き寄せるために従業員への待遇などさまざまな工夫をしている様子もうかがえた。
一方で、「採用予定はない」企業は26.1%(同1.3ポイント減)となった。「電気代・燃料代の高騰で雇用に回せる余力がない」(普通洗濯、群馬県)や「地方の中小企業で正社員を採用するのは、非常に厳しくなっている。
さらに賃上げ圧力や利益の減少など難題も多く、採用できても維持していけるか疑問である」(ガソリンスタンド、山形県)などのコメントにあるように、原材料費や人件費などコストの高騰で経営が圧迫され、従業員を雇う余裕がない企業も一定数存在した。
正社員『採用予定がある』、「医療・福祉・保健衛生」が82.8%でトップ
規模別に正社員の『採用予定がある』割合をみると、「大企業」は86.3%と全体を大幅に上回った。一方で、「中小企業」は58.7%、「小規模企業」は41.8%となり、企業規模が小さいほど割合が低くなっている。
業界別における『採用予定がある』割合は、『運輸・倉庫』が70.0%で最も高くなった。次いで、『サービス』が69.0%、『建設』が68.1%で続いた。なかでも、『サービス』は約3社に1社が採用人数の増加を見込む。
さらに主な業種でみると、「医療・福祉・保健衛生」(82.8%)では8割超の企業が採用を予定しているほか、「旅館・ホテル」(79.3%)、「輸送用機械・器具製造」(76.8%)も8割近くにのぼる。また、「人材派遣・紹介」では採用が「増加する」企業は4割超となった。
企業からは、「賃上げを踏まえ、採用計画を思案中」(一般病院、長崎県)といった前向きな声が聞かれた。他方、「サービス業の中小零細企業にとって新卒採用はもとより、中途採用も難しく、大変厳しい状況になってきている。
理由は採用時の賃金などの条件面の優遇が些少しかできず、大企業も新卒採用を再開しているため、こちらへの応募が少ない。また、新型コロナでサービス産業に対するイメージが悪く、業界的に働きたい職種ではなくなっている」(旅館、島根県)というように、人材が集まらず厳しい状況にある企業も多くみられる。
非正社員の採用予定がある企業は47.3%、前年から1.0ポイント上昇
2023年度の非正社員の採用状況について尋ねたところ、「採用予定がある」(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)企業は47.3%(前年度比1.0ポイント増)と勢いは前年より衰えるも2年連続で上昇した。また、採用人数が増加する企業は13.4%(同0.9ポイント増)と新型コロナ前の2019年度を若干上回った。