SNSの使い過ぎが摂食障害のリスクを高める可能性
TikTok、Twitter、Instagramなどのソーシャルメディア(SNS)に投稿されている若年女性の画像は、洗練された完璧なボディーであることが多い。
若い女性が、それらの非現実的とも言える画像にオンラインで絶え間なく接することが、摂食障害のリスクを高めている可能性のあることが分かった。
英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のAlexandra Dane氏とKomal Bhatia氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS Global Public Health」に2023年3月22日掲載された。
摂食障害は、時に命に関わることもある精神疾患の一つ。体重増加に対する強い恐怖、極度の食事制限あるいは過食、食事と嘔吐を繰り返す、食欲不振といった症状や行為が生じる。
SNSが一般的に利用されるようになって以降、SNS上にあふれている極端に痩せた人の画像、またはそのように加工された画像が、それらを閲覧した人たち自身のボディーイメージの評価を低下させてしまい、摂食障害のリスクを高める懸念が指摘されている。
ただし、公衆衛生上の問題としてはまだ十分に研究されていない。
そこでBhatia氏らは、このトピックに関するスコーピングレビューを行った。スコーピングレビューとは、メタ解析などの詳細な検討をするほど十分な研究報告がない、比較的新しいトピックについて、全体像を把握するために行うレビューのこと。
文献検索にはMEDLINE、PyscINFO、Web of Scienceというデータベースを利用。2016年1月~2021年7月に、それらに公開された、SNS利用とボディーイメージの懸念や摂食障害との関連に関する研究論文を検索。計17カ国から報告された50件の研究を抽出した。
それらの研究の多くは経済的に豊かな国で行われており、半数近くは米国とオーストラリアからの報告だった。研究対象者の年齢は10~24歳で、約半数は女性のみを対象としていた。
抽出された文献を解析した結果、SNSの利用が、極端な痩せ体型を理想的なものとして捉え、自分のボディーイメージに自信を失い始め、乱れた食行動(disordered eating)や摂食障害(eating disorder)、およびメンタルヘルスの悪化につながる可能性のあることが明らかになった。
一方、自分自身の外見に自信を持っている若者や、メディアリテラシーが高くSNSというメディアの特性を把握している若者は、マイナスの影響を受けにくいことも明らかになった。
ただし、このスコーピングレビューからは、SNS利用が自分自身のボディーイメージへの懸念や摂食障害のリスクをどのくらい高めるのか、定量的な把握はできない。
またBhatia氏は、「卵が先か鶏が先かという問いの答えも得られていない」と述べている。つまり本研究は、ボディーイメージへの懸念や摂食障害のリスクが高い若者が、そのような画像が投稿されているSNSをより頻繁に閲覧しているという結果を見ている可能性も否定できない。
そのため同氏は、「さらなる研究が必要とされる」としている。(HealthDay News 2023年3月23日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://journals.plos.org/globalpublichealth/article?id=10.1371/journal.pgph.0001091
構成/DIME編集部