3. 損害賠償命令を申し立てる際の手続き
犯罪被害者が損害賠償命令を申し立てる場合、手続きの流れは以下のとおりです。
①損害賠償命令の申立て
②裁判所による審理
③損害賠償命令等の決定
④異議申立て
3-1. 損害賠償命令の申立て
刑事裁判(公判手続き)の弁論が終結するまで、被害者(またはその相続人など)は、刑事裁判と同じ裁判所に対して損害賠償命令を申し立てることができます(法23条1項)
損害賠償命令の申立書は、不適法として却下される場合を除き、遅滞なく被告人へ送達されます(法24条)。
3-2. 裁判所による審理
被告人について有罪判決が言い渡された場合に限り、損害賠償命令の申立てについて審理が行われます(法30条1項)。無罪判決が言い渡された場合、損害賠償命令の申立ては不適法として却下されます(法27条1項3号)。
裁判所は、刑事訴訟記録を取り調べた上で、原則として4回以内の期日で審理を終結させます(法30条3項、4項)。
当事者である被害者・被告人は呼び出されますが(同条2項)、公開の口頭弁論の開催は必須とされておらず、当事者に対する審尋(非公開で事情を聴くこと)のみが行われるケースも多いです(法29条1項、2項)。
なお、4回以内の審理期日での終結が困難と認める場合、裁判所は審理を打ち切り、自動的に民事訴訟の手続きへ移行します(法38条4項、34条)。
3-3. 損害賠償命令等の決定
審理が熟した段階で、裁判所は審理期日の終結を宣言し(法31条)、損害賠償命令の申立てについての決定を行います(法32条1項)。
原則として決定書が当事者へ送達されますが(同条3項)、裁判所が相当と認めるときは、当事者が出頭する審理期日において、口頭で決定内容を告知することもできます(同条4項)。
3-4. 異議申立て
決定書の送達日または決定の告知日から2週間以内であれば、当事者は異議を申し立てることができます(法33条1項)。
異議申立てに関する決定(認容・却下)は同じ裁判所が行い、認容されれば損害賠償命令の申立てについての決定は失効します(同条4項)。
異議申立てに関する決定に対しては、即時抗告が認められています(同条3項)。即時抗告期間は、決定の告知を受けた日から1週間です(法40条、民事訴訟法332条)。
適法な異議申立てがないことが確定した場合、損害賠償命令の申立てについての裁判は確定判決と同一の効力を有します(法33条5項)。
被害者は、確定した損害賠償命令の決定書を債務名義として、加害者に対する強制執行を申し立てることができます(民事執行法22条7号)。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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