犯罪被害者は加害者に対して、不法行為に基づく損害賠償を請求できます(民法709条)。
損害賠償請求は民事訴訟等によるのが原則ですが、一部の犯罪については「損害賠償命令制度」により、刑事裁判を通じた損害賠償請求が認められています。
今回は、犯罪被害者が利用できる「損害賠償命令制度」について、対象となる犯罪や手続きの流れなどをまとめました。
凡例
法:犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律
1. 損害賠償命令制度とは
損害賠償命令制度とは、犯罪被害者の加害者に対する損害賠償請求の審理を、刑事裁判と同じ裁判所(裁判官)が担当する制度です。2007年に創設されました。
犯罪被害について損害賠償を請求する民事訴訟では、被害者が損害賠償請求権の存在を立証しなければなりません。しかし、民事訴訟のルールに従ってゼロから立証を行うのは、時間・費用などの面で被害者の負担が重すぎるという問題がありました。
そこで損害賠償命令制度が創設され、一部の犯罪については被害者の申立てにより、損害賠償請求を刑事裁判と同じ裁判所が担当できるようになりました。
事件に関する事情をよく知っている裁判所が審理することで、被害者の立証負担が軽減されます。