小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

教員の残業代が支払われないのはなぜ?改正が議論される「給特法」の問題点

2023.04.23

3. 現代にそぐわない「給特法」の問題点

公立学校の教員に残業代を支給しない旨を定めた「給特法」は、現代にそぐわず大きな問題があると指摘されています。

給特法によって残業代の代わりに支給される教職調整額は、1966年当時の平均超過勤務時間(=1か月当たり8時間)を参考に、給料月額の4%と定められました。

しかし現代では、一般に教員の労働時間はきわめて長いことが知られています。

出典:教員勤務実態調査(平成28年度) (確定値)について p13|文部科学省

上記のグラフは、文部科学省が平成28年度(2016年度)に実施した「教員勤務実態調査」のデータを引用したものです。

たとえば小学校教諭を例にとると、平成18年度の時点で学内総勤務時間が1週間当たり53時間16分、平成28年度では1週間当たり57時間29分です。

中学校教諭では、平成18年度の時点で58時間6分、平成28年度では63時間20分といっそう長くなっています。

労働基準法上の法定労働時間は「1週間当たり40時間」です。したがって1週間単位で見ても、小学校教諭は17時間29分、中学校教諭は23時間20分の超過勤務時間が発生しています。

月単位(1か月=31日)に換算すると、超過勤務時間は小学校教諭が77時間26分、中学校教諭が103時間20分です。

しかも、上記のデータには持ち帰り残業の時間が含まれていないので、実際にはさらに長時間の労働が発生している可能性があります。

このような実態がある中で、労働時間に応じた正規の残業代を支払わず、1か月当たり8時間を基準とした教職調整額しか支給しないのは、現代における実情から乖離していると言わざるを得ません。

4. 改正が議論される給特法|法改正の見込みは?

給特法に関する問題意識は、教員の長時間労働が社会問題化する中で、近年認知度が高まっている状況です。

文部科学省でも調査研究会を設け、給特法の改正を含めた論点整理を行っています。

参考:質の高い教師の確保のための教職の魅力向上に向けた環境の在り方等に関する調査研究会(第4回)会議資料|文部科学省

具体的な法改正の見込みは立っていませんが、給特法に対しては社会的な批判が大いに集まっているため、近年中の法改正に期待したいところです。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年4月16日(火) 発売

DIME最新号は「名探偵コナン」特集!進化を続ける人気作品の魅力、制作の舞台裏まで徹底取材!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。