完パケとは、主にテレビ・映像・音楽業界や、舞台演劇の世界などで使われる業界用語です。日常ではなかなか使う機会がありませんが、知識の一つとして覚えておくのもよいでしょう。完パケの意味や使うシチュエーション、さらには例文や類義語を紹介します。
完パケとは
完パケという言葉には、どのような意味があるのでしょうか?詳しく紹介します。
「完全パッケージ」を略した言葉
完パケとは『完全パッケージ』『完成パッケージ』を略した言葉です。一般的にはあまり使われる言葉ではありませんが、テレビ番組の制作現場や広告代理店、映像・放送業界、演劇業界などでは、ごく一般的に使われています。
完パケが何の完全パッケージを指すのかは、業界によってさまざまです。例えばテレビ制作や広告代理店などで完パケという場合は、そのままオンエアできる状態のビデオテープを指します。
テレビに流す映像は、素材を収録した後に編集作業を行ったりナレーションやBGMを加えたりしなければなりません。『完パケ』と呼ばれるビデオテープは、必要な作業が全て終わった状態です。
業界ごとの「完パケ」の意味と使い方
映像やテレビ・広告業界以外にも、完パケという言葉を日常的に使う業界があります。業界別に完パケの意味や使い方を見ていきましょう。
音楽業界
音楽業界で『完パケ』と表現する場合、全ての作業が終わった状態の音源を指すのが一般的です。CDを制作する際は、録音した音源のトラックダウンの後、音量や音質・音圧の調整(マスタリング)が必要となります。
全ての作業を完遂し、『あとはCDにプレスするだけ』となった状態が完パケです。このほかに、プレスからジャケット制作・印刷までが完全に終わった状態を完パケと呼ぶケースもあります。またミュージシャンやバンドマンなどが使う『完パケ』は、コンサートやライブのプログラムが全て終わった状態を指すのが一般的です。
音楽業界で『完パケ』という表現を用いる場合、以下のような使い方が可能です。
- 音量バランスさえ調整すれば、すぐにも完パケできます
- 今日のコンサートが完パケしたら、しばらく休みたい
同じ音楽業界でも、シチュエーションによって完パケの意味するものは異なります。
声優・アニメ業界
声優・アニメ業界での完パケは、全ての作業が終了したアニメ作品を指します。テレビ業界の完パケと同様に、そのままオンエアできる状態です。
1本のアニメを作るためには、企画から始まって絵コンテや原画の制作が必要となります。原画が完成すれば動画や背景を制作したり、3D加工や特殊効果を加えるといった作業を行わなければなりません。
編集が終わり映像が完成すると、次は音声を入れる作業です。声優が各キャラクターに声を入れたり、BGMや効果音を加えたりといった作業が行われます。これら全ての作業が終わって、ようやく作品は『完パケ』と呼ばれるのです。
完パケを使った例文として、以下のようなものが挙げられます。
- 完パケした『○○』は、来月のオンエアに乗る予定だ
- 声優が声を入れただけの状態では、完パケからは程遠い
『完パケ=完成品』と理解しておけば、さまざまなシチュエーションで使えるでしょう。
演劇業界
演劇業界における『完パケ』は、会場からお客さんが完全に出ていくことを意味します。映像やアニメ業界とは意味が異なりますが、どちらも『終わり』を表わす点は同じです。
演劇業界の完パケは、お客さんに対して使うケースもあればスタッフに対して使うケースもあります。例えば『お客さんが完パケしました!スタッフは片付けに入ってください!』などと使われる場合は、『完パケ』という言葉から全ての観客が会場から去ったことが分かります。
また『あと○分で完パケになります!完パケ後は、速やかな退出を促してください』などと話す場合における『完パケ』は、舞台が終わる時間です。ステージに幕が下りた状態が完パケとなります。
完パケの同義語・関連語
完パケのように、『完成物』を表わす言葉や近い意味を持つ言葉にはさまざまなものがあります。完パケの同義語や関連語を確認しましょう。
黒
映像業界では、『黒』は完パケと同様に『完成物』を意味する言葉です。完全に編集済みで字幕まで入った映像について『黒素材』と呼ぶ場合もあります。
黒と関連して、『黒送り』もよく使われる言葉です。黒送りとは、映像を放送した局と完全に同じ素材を、マイクロ回線でインターネット番組に送信することを指します。
ただし、CMをローカル局側で入れる場合は、CM部分のみ空白にして差し替えられるようにしなければなりません。CM部分のみ空白で送信する映像は、『白送り』と呼ばれます。
白完・白完パケ
『白完』『白完パケ』は、完パケの一歩手前の状態です。素材の編集そのものは完了していますが、字幕・テロップ・ワイプなどは入っていません。『白マザー』などと呼ばれる場合もあります。
制作した映像は、一度使ったら終わりというわけではありません。テロップを差し替えて使用されるケースがあるため、完パケになる前の状態のものが必要です。
映像業界では、余計なものが入っていない白完の状態で、いったん映像を保管します。状況やニーズに合わせてテロップや字幕・ワイプなどを追加し、完パケとするのが一般的です。なお、白完はまっさらで何も入っていない状態であるため『クリーン』と呼ばれるケースもあります。
ハケる
そもそも演劇業界やイベント業界の『完パケ』は、『完全にハケる』を略した言葉です。『ハケる』とは、舞台から演者や大道具・小道具などがなくなることを意味します。
例えば舞台などで演者が素早く袖に引っ込む必要がある場合は、『早くハケて』などと言われます。すぐに次の人の登場を促す際は『○○さんがハケたら、すぐに出て』など表現するでしょう。
ハケるとよく似た言葉に『わらう』があります。ただしこれは、物に対して使われる言葉で、人には用いません。例えば『あそこの大道具、後でわらっておいて』『わらった小物は、またすぐに出せるようにしておいて』などと使うのが一般的です。
構成/編集部