いつの時代でも、性別を問わず他者を大切にするさまざまな愛のかたちがある。「Aセクシャル」は、そんな多様なセクシャリティを表す言葉の一つだ。普段、身近に感じる機会が少ない言葉かもしれないが、漫画やドラマの中で使われたり、著名人がカミングアウトしたりするなどの影響により、近年では徐々に認知度が高まってきた。
そこで本記事では、Aセクシャルの意味と他のセクシャリティの違いを詳しく解説していく。ぜひこの機会に理解を深めておこう。
Aセクシャルとは?
まずはAセクシャルの意味と、混同しがちな他のセクシャリティとの違いを解説する。
Aセクシャルとは
「Aセクシャル」の読み方は「アセクシャル」または「エイセクシャル」。「無性愛者」と表記する場合もある。いずれも、他者に対して恋愛感情の有無にかかわらず性的欲求を抱かないセクシャリティを意味する。また、日本国内においては、他者に対して恋愛感情を抱くことがない人も含めてAセクシャルと定義する場合がある。全体の人口に占める割合は3%未満と見られているが、「自分もAセクシャルかもしれない」と自覚する者は増加傾向にあるという。
アロマンティックとの違い
「アロマンティック」は他者に対して恋愛感情を抱かないセクシャリティ。Aセクシャルが性的欲求の有無を表すのに対して、アロマンティックは恋愛感情の有無を表す点に違いがある。他者に対して恋愛感情は抱くものの、性的欲求を抱かない人のことを「ロマンティック・アセクシャル」、恋愛感情も性的欲求も抱かない人のことを「アロマンティック・アセクシャル」と呼ぶ場合もある。
ノンセクシャルとの違い
「ノンセクシャル」はパートナーや他者に対して恋愛感情を抱くことはあっても性的欲求を抱くことはないセクシャリティを指す。漢字表記で「非性愛者」と表す場合もある。ノンセクシャルは、先ほど紹介した「ロマンティック・アセクシャル」と同じ意味で使われることが多い。
Aセクシャルの特徴
次に、Aセクシャルについてより理解を深めるために、「恋愛感情」「性的欲求」「結婚願望」の3つの観点から、それぞれの特徴を見ていこう。
恋愛感情
他者に対して恋愛感情を抱かないアロマンティック・アセクシャルも、他者に対してまったく魅力を感じないわけではなく、直感的に一目惚れする場合もある。また、相手と恋愛に発展しない場合でも、自分なりの愛情表現でコミュニケーションを深めたり、互いを支え合ったりしながら日常生活を共にすることはできる。
性的欲求
Aセクシャルは、パートナーとの肉体的な繋がりよりも精神的な繋がりを優先したいと考える傾向にある。ドラマや映画などでロマンチックなシーンを観た時、自分自身が性的な行為をしたいと思わないことに気が付き、初めて自らがAセクシャルだと認識したというケースもあるようだ。
結婚願望
Aセクシャルが、将来的に結婚を視野に入れるかどうかには個人差がある。例えば、選択肢の一つとして性行為を伴わない「友情結婚」をするカップルも存在する。従来の結婚の型にこだわらなければ、パートナーのセクシャリティを受け入れて共に手を取り合って歩んでいくことも可能だ。また、最近では、マイノリティに理解のある結婚相談所やマッチングサービスも増え、さまざまなセクシャリティの人が利用している。
その他にも多様なセクシャリティが存在する
最近では「LGBTQ」という言葉が有名になってきたが、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア、さらに今回紹介したAセクシャル以外にも多様なセクシャリティが存在する。その一部を見ていこう。
ヘテロセクシャル
「ヘテロセクシャル」とは、異性に対して恋愛感情や性的欲求を抱くセクシャリティのこと。出生時から自認した性別が同じであり、なおかつ同性をパートナーに選ばないのが特徴的で「異性愛者」とも表記される。一般的には男女が恋愛し、結婚するものと言われているが、ヘテロセクシャルは「当たり前」ではなく、一つの性のあり方だ。
パンセクシャル
「パンセクシャル」は、他者に対して、相手の性別にかかわらず恋愛感情や性的欲求を抱くセクシャリティ。漢字表記では「全性愛者」となる。
間違われやすいセクシャリティとして「オムニセクシャル」があるが、オムニセクシャルが「相手の性別を認識した上で」どの性別に対しても恋愛感情を抱くのに対し、パンセクシャルは性自認が確定していない「Xジェンダー」を含み、他者の性を意識せずに恋愛ができるという点に違いがある。
デミセクシャル
「デミセクシャル」の特徴は、性別に関係なく、深い信頼関係を築いた相手に対して恋愛感情や性的欲求を抱くセクシャリティだ。漢字表記では「半性愛者」となる。デミセクシャルは最も親しい存在の人にのみ惹かれ、相手といる時の安心感や、長い年月を共に過ごしてきた過程を大切に考えながら恋愛に発展することが多い。
文/編集部