本来、江戸時代にキリシタン宗門を厳禁するために使われていた「踏み絵」という言葉。ビジネスシーンで用いる場合は、前後の文脈やその場の状況を考慮して使う必要がある。
そこで本記事では、ビジネス用語の「踏み絵」の意味、使用シーンや類語、その他に職場で使われるビジネス用語を紹介していく。
踏み絵とは
まず、「踏み絵」の意味から見ていこう。併せて紹介する本来の「踏み絵」と「絵踏み」の違い、言葉の使用シーンと例文についてもぜひチェックしてほしい。
現代における「踏み絵」の意味
「踏み絵」とは、ある人の思想や主義などを強権的に調べること、またその手段のことを意味する言葉だ。
踏み絵は、江戸時代のキリスト教弾圧。当時、キリスト教の信仰を禁ずる政策のもとで、キリスト教の信者を見分けるためにマリア像・キリスト十字架像などを刻んだ木板や銅板を足で踏ませる「絵踏み」が行われていた。この時に使用される絵が「踏み絵」だ。
キリスト教を弾圧するために使用された「踏み絵」が転じて、現代においても人の思想を調べることの例えとしてこの表現が使われるようになった。
使用シーンと例文
「踏み絵」は、業務を任せたり、社内で昇進させたりする際の基準や、あるコミュニティに入会する際の物差しのことを指して使われることがある。
【例文】
「私の知らないところで、昇進するための踏み絵が仕込まれていた」
「踏み絵を設けることは、場合によっては仕方がないことだ」
「入会にあたり踏み絵を設けることになった」
「踏み絵」の類語
次に、「踏み絵」と似た意味を持つ言葉をいくつか紹介する。表現の幅を広げるのにぜひ役立ててほしい。
1. 判断基準(はんだんきじゅん)
業務の方針を決めたり選択したりする場合に、よりどころとして用いる物事や数値のこと。
【例文】
「この判断基準では、チームがまとまらないよ」
「人材採用の判断基準が改めて見直しされた」
「世の中の判断基準は一つではないのかもしれない」
2. リトマス試験紙(りとますしけんし)
対立する意見や方策などの良し悪し、真偽、効能を判定する資料となるもののことを表す言葉。
【例文】
「今回の売上成績が、今後の動向を占うリトマス試験紙となるだろう」
「昇進基準となるリトマス試験紙を設けることにした」
「内定におけるリトマス試験紙の存在は、入社前から知っていた」
3. 調査手段(ちょうさしゅだん)
物事の方向性を判断する際に用いる尺度のことを意味する表現。
【例文】
「彼は、面接の際に大きい声で挨拶できるか否かを採用の調査手段としていた」
「彼女は仕方なく調査手段を用いることになった」
「社内の昇進における調査手段があることは伏せておいてほしい」
4. 小手調べ(こてしらべ)
本格的に始める前に、物事を少し試してみることを指す言葉。
【例文】
「課長から、これくらいはほんの小手調べだと言われた」
「この後の大きなプレゼン大会の小手調べとして、今回の大会に掛けてみようと思う」
「これまでの試みは失敗だったが、僕にとってはまだ小手調べにすぎなかった」
ビジネス用語には比喩的な表現が多い?
「踏み絵」以外にも、本来の意味とは別に、比喩的な意味で使われるビジネス用語は多い。ここでは例として4つのビジネス用語を紹介しよう。
土俵際(どひょうぎわ)
物事がまさに決着しようとする間際、追い詰められている様子、ギリギリの最終局面のことを表す際に使う言葉だ。
【例文】
「プレゼン大会で、劣勢の状態で土俵際に追い込まれた」
「土俵際だったが、当プロジェクトは皆の頑張りで逆転することができた」
「彼は昇進するには土俵際の年代だろう」
三振かホームラン(さんしんかほーむらん)
大失敗か大成功のことを指す表現。
【例文】
「投資は、三振かホームランかと思い切るように心掛けている」
「彼女の起業家としての才能は、三振かホームランかのどちらかだろう」
「三振かホームランかになるかは、今後の努力次第だ」
蕎麦屋の出前(そばやのでまえ)
物事の進捗に関するいい加減な返事や当てにならない様子を表す場合に使う表現。
もともとは、蕎麦屋がこれから作るところなのにも関わらず「今ちょうど出るところです」といったいい加減な返事をする状況の例えが言葉の由来だ。
【例文】
「彼の企画書はまるで蕎麦屋の出前だ」
「B社のクライアントに対する態度はそば屋の出前のようだと言われている」
「この間の蕎麦屋の出前のような言い訳はしないでほしい」
手弁当(てべんとう)
お金をもらわずに報酬なしで働くこと、経費を自分で負担すること、自腹を切ることを意味する言葉だ。
【例文】
「彼はこの業務を手弁当で手伝った」
「先輩から手弁当の仕事は受けるべきではないと忠告された」
「自分の経験値を高めるために慣れない仕事を手弁当で行った」
文/編集部