昨年、ローソンでテスト販売された『味のしない?飴』。SNSで話題となりすぐ品薄となったが、今年6月より満を持しての正式販売(予定)が決定した。味がない飴というのは正直おいしそうには思えないが、ヒットにつながったのはなぜか? 流通アナリストの渡辺広明氏は、この現象を以下のように分析する。
「この商品がヒットした際はSNSで〝虚無味〟と評されました。最近の若い世代は特に、過剰なサービス価値を否定した〝無の境地〟に惹かれる傾向があるようです」
また最近は飴に加えて、水のような透明感が特徴の『水グミ』(UHA味覚糖)をはじめ、具が入っていない『ボンカレークック』(大食品)や、麺とつゆだけのカップ麺(明星食品)、さらには香りのしない入浴剤や柔軟剤といった、本来あるはずのものが〝ない〟商品が続々登場している。
「無の商品の方向性は主に3つあると思います。1つ目はカスタマイズ性で、レトルトカレーやカップ麺が、それに該当。2つ目は『水グミ』のように透明感を楽しむもの。一方柔軟剤や洗剤、入浴剤については、香りよりも商品本来の効果を重視したいニーズに応えたものだといえます。特にランドリー市場では強烈な香りを楽しむ『ダウニー』が流行しましたが、その反動として香りを苦手とする人が増えたことも影響しているかもしれませんね」(渡辺氏)
香りや色といった要素を排除することは、ある意味ごまかしが利かなくなるともいえる。そして消費者もまた、本当にその価値がわかるのか、試されている。無の商品はメーカーと消費者の真剣勝負なのかもしれない。
味/色なし系
水のような透明感で後味も爽やか
UHA味覚糖『水グミ 巨峰味/ピーチ味※』各138円
スーパークリア製法により、今までにない透明感があるグミが実現。ぷにぷにとした弾力を持たせつつ、口どけの良さも意識されている。水を意識したすっきりとした後味も◎。
開発理由
フレーバーウオーターのヒットを受け、消費者に驚きを与えたいという思いから、水をコンセプトとしたグミを開発した。
〈WATANABE’S EYE〉下のローソンの飴とは違い、味はあります。あっさりしているので、飽きずに食べられます。
いい意味で虚無的。新しすぎる飴
ローソン『カンロ 味のしない?飴』189円(※2022年発売当時)
乾燥予防などで飴をなめたいが、甘い味が苦手という層を中心に大反響を呼ぶ。原料は「ポリデキストロース」という甘さの少ない食物繊維を使用。 2023年6月に販売予定だ。
開発理由
ローソンと食品メーカーで開催した『テスト品総選挙』をきっかけに開発。約1年の開発期間を経てテスト販売された。
〈WATANABE’S EYE〉SNSで話題になり、販売1週間後には商品が品薄に。話題性もヒットの要因といえます。
具なし系
具材がないのでアレンジ無限
大食品『ボンカレークック 甘口/中辛』各320円 ※価格は編集部調べ
開発理由
調理ニーズの高まりを受け「つくるためのレトルトカレー」として誕生。冷蔵庫にある食材で、パパッとカレーが完成する。
〈WATANABE’S EYE〉具材がなくてもソースだけで勝負できる。大塚食品が培った技術の蓄積のたまものです。
具材を省いてお手頃価格を実現
明星食品『かけそばでっせ』127円 『すうどんでっせ』127円 『かけラーでっせ醤油ラーメン』127円 『かけラーでっせ塩ラーメン』127円
麺とスープだけのシンプルカップ麺。好きな具材を入れてアレンジするのはもちろん、主食の汁物として食べたりなど、様々な食シーンに合わせることが想定されている。
開発理由
消費者の生活防衛意識の高まりを受け、シンプルな商品構成にすることによって安価で提供できる商品として開発された。
〈WATANABE’S EYE〉カップ麺単体で1食済ませるのではく、主食に付け足す。そういった人はこれで十分です。
無色・無臭系
アース製薬『バスロマン 無添加タイプ 無香料無着色』603円(想定価格)
成分の99.99%が食品成分でできた、無香料無着色の入浴剤。保湿成分のシアバターをたっぷり配合し、肌にすっとなじんで全身がうるおう。香りも一切なく、新しい感覚がクセになる。
開発理由
合成香料、合成着色料、パラベン、アルコールフリー。これらの添加物が気になる消費者の声をもとに開発された。
〈WATANABE’S EYE〉色や香りでごまかさない。メーカーの自信を感じる商品と言えますね。
原材料のかすかなニオイも徹底排除
NSファーファ・ジャパン『ファーファ Free&』シリーズ
(左)超コンパクト液体洗剤 無香料 547円 (右)濃縮柔軟剤 547円
『ファーファ Free&』は2018年に誕生し、無香・無添加が特徴。その後、リニューアルを経て原材料のかすかなニオイも排除。満足感のある洗いあがりも重視した。
開発理由
ランドリー市場で無香料の商品に関する問い合わせが増加。その声に応える形で無香料・無添加のシリーズを誕生させた。
〈WATANABE’S EYE〉本来洗剤は汚れを落とすもの、柔軟剤は柔らかく仕上げるもの。原点回帰の商品です。
取材・文/高山 惠 撮影/佐藤健太
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2023年2月28日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。