ビジネスシーンで使われる言葉の中には「全員野球」や「ボールを持つ」のように、元々は野球用語として使われていたものも多い。「三遊間」もその一つだ。年配者を中心に使われる傾向にあるため、若い世代の中には意味を知らないという方も少なくないだろう。
そこで本記事では、「三遊間」の意味と使い方を解説する。この機会にチェックしておこう。
ビジネスにおける「三遊間」の意味と由来
まずは、ビジネスシーンにおける「三遊間」の意味を解説する。野球で使われる本来の意味についてもチェックしてほしい。
「三遊間」は「担当者が曖昧な仕事」を指す
「三遊間」の読み方は「さんゆうかん」。ビジネスシーンでは、「担当者が決まっていないタスク」を指して使われる。また、「三遊間を抜かれた」は「仕事で失敗した」「相手に上手くやられた」という意味を表す。
言葉の由来は野球
「三遊間」は野球の守備において、三塁の周辺を守る「三塁手(サード)」と二塁と三塁の間を守る「遊撃手(ショート)」のそれぞれのポジションの中間に位置するエリアのことを指す。三遊間には、基本的に誰もいない状況であることから、ビジネスシーンでは「担当者のいないタスク」を意味する言葉として用いられるようになった。ちなみに、野球の試合では、「三遊間を抜けてヒット」「三遊間ゴロの打球」のような形で使われる。
類義語
ビジネスシーンで使用される三遊間を他の表現に言い換えたい場合は、「あやふや」や「不確か」などの言葉を使って「担当者があやふやな仕事」などと表すことができるだろう。
ビジネスにおける「三遊間」の使い方
ビジネスシーンでも、野球の場合と同様に「〜を抜く」「〜を拾う」などの言葉と一緒に使われることが多い。担当者が曖昧な仕事は厄介であることから、ネガティブなニュアンスを含む。
【例文】
「残念ながら三遊間の仕事を拾える余裕はない」
「勝てると思った競合他社に負けた。三遊間を抜かれた気分だ」
「このタスクは三遊間だから、手付かずなことに誰も気づかなかった」
「三遊間の仕事をなくすために、タスクリストを作成した」
「三遊間」の仕事が発生しないための対策
担当が曖昧な仕事を意味する「三遊間」。業務のスムーズな進行やトラブル回避のためにはタスクの割り振りをしっかりと行う必要がある。ここからは、三遊間の仕事をなくすための対策について解説する。
タスクを依頼する際のコミュニケーションに注意する
最近では、オンラインでのコミュニケーションが主流になっているチームや職場も少なくないだろう。その際、タスクの依頼の仕方によっては三遊間の仕事が発生するリスクが高まってしまう。特に、チームメンバー全員が参加しているチャット上などでタスクを依頼する際は、「誰に何を伝えたいか」をはっきりさせる必要がある。依頼相手が曖昧な状態の場合、メッセージを受け取る側は「誰かが答えるだろう」と反応しない可能性があるため、特にオンラインでのコミュニケーションの際は、曖昧な表現を使わないように気を付けよう。
役職意識ではなく役割意識を持つ
仮に担当者の曖昧なタスクがあった場合でも、誰かが早い段階で気付いて対応すれば最悪の事態は免れるだろう。しかし、三遊間の仕事があることを認識しているにもかかわらず、誰も取り組まないことがある。この場合、組織の構造や一人ひとりの意識に問題があると考えられる。
チーム全体が「この仕事は本来〇〇部署の仕事だから、私たちには関係がない」のような考え方になっていると、三遊間の仕事が放置されてしまう。このような事態を防ぐためにも、一人ひとりが当事者意識を持ち、全体を見ながら仕事をすることが必要といえるだろう。
「三遊間」の英語表現
「担当者が曖昧なタスク」を英語で表現したい場合は“No one has been assigned to that task.”(誰もそのタスクに割り当てられていない)のように表現できる。“assign”は、カタカナ英語で使われる「アサイン」と同様に「割り当てる」という意味を持つ。なお、ビジネスシーンでは“To be assigned”(担当者未定)を略した“TBA”がメールやチャットなどで使用されることもある。
ちなみに、担当者が不明な相手に英語でメールをする際の宛名には“To whom it may concern”(ご担当社様、関係者各位)」と記すのが一般的。ビジネス英語の知識としておさえておくと良いだろう。
文/編集部