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ゴールドウインがサステナブルな次世代素材「Brewed Protein」の採用を決めた理由

2023.04.20

ゴールドウイン社長が答える「Brewed Proteinの採用経緯」

ゴールドウイン社 代表取締役社長 渡辺貴生氏に、Brewed Proteinの採用経緯を聞いた。

写真右)株式会社ゴールドウイン 代表取締役社長 渡辺貴生氏
写真左)Spiber株式会社 取締役 兼 代表執行役 関山和秀氏

「初めて青い糸を見せてもらったのが2014年4月のこと。『これが人工的な糸?』と非常に驚きました。Spiberの取締役 兼 代表執行役の関山和秀さんから、『たんぱく質は20種類のアミノ酸の組み合わせによってさまざまな機能が実現できる。それが20種類あるので、宇宙の星の数ほど組み合わせがある。我々が要求する素材や機能が作ることができる』と聞き、いつかさまざまな素材を作ってもらいたいと思いました。

テスト段階では、水に弱いなどスポーツブランドの素材では使えない性質があったのですが、解決していけばものづくりとコストのバランスは合ってくるのではないか。失敗を繰り返していけばかえって良いものが作れるのではないか、巨大なマーケットができるのではないかと思いました」

「Brewed Protein」の開発秘話

果たして、Brewed Proteinはどのようにして生まれたのか。Spiberの関山和秀氏に、Brewed Proteinの開発秘話についてインタビューを行った。

Spiber株式会社 取締役 兼 代表執行役 関山和秀氏

●開発背景

――Brewed Proteinの開発背景を教えてください。

「地球のバランスは植物と微生物、つまりセルロースとタンパク質で成り立っています。その中でもたんぱく質は20種類のアミノ酸の組み合わせにより無限のバリエーションで素材をつくりあげることができます。

我々はクモの糸から研究を開始。少なくとも35万種類くらいのクモの糸が地球上で確認されており、たんぱく質のメカニズムを理解する上で非常に重要な教材です。これをもとにデータベースを発表しました。今回のプロジェクトのためにも、1,000種類以上のクモを捕獲し、さらに400種類以上の糸のサンプリングを行い、構造のデータなどを取って関連付けることで世界最大規模の構造タンパク質素材のデータベースとなりました。こういった自然界で当たり前に行われていることが、まさに我々が目指すバイオものづくりの姿です」

――開発にあたって苦労した点は?

「作る過程では、微生物の生産性だけを考えればいいというわけではありません。たんぱく質を産業化しようとすると、材料としての機能を満たさなければなりませんが、現実的に買ってもらえるコストにしないといけないとなると、非常に高い生産性で微生物に作らせなければなりません。例えば、たんぱく質を構成するアミノ酸の配列を変えると、モノによっては全然作ってくれない一方で、作ってくれるモノもあるなど、違いが出てきます。すべての工程を満たせる条件をクリアできるスーパーエリートなアミノ酸配列を生み出さなければ実用化できません。

つまり自然界の進化のプロセスで、本来なら自然淘汰で徐々に選ばれていくものを、自分たちの手でデータをとってゼロからデザインしていかなければならない、という点に苦労しました」

――良い素材ができた後、衣服として実用化するのに必要なことは?

「コストは重要な問題です。コストは下がらないと普及しませんが、いきなり化学繊維と同じ水準で作るのは無理な話です。動物性の素材は優れている一方で、カシミヤのように、家畜を育てて何か得ようとすると温室効果への影響などの環境リスクが課題となります。そこで我々はソリューションとして、タイの量産プラント拡大により、今年中には最高級グレードのカシミヤと、少なくとも同レベルのコストにできると考えています。まずは普及させ、みなさんに使ってもらい、いい素材だというのを体感してもらえば、そこから規模が増え、コストも下げられます。

10年以内には、みなさんがお店に行けば買える服の素材として成立できるところまで確実にいけると考えています」

――サスティナブルな新素材開発に求められることを教えてください。

「Brewed Proteinの強みは、ゴミにならないこと。生物が食べられる材料だけでできているので、それをそのまま粉々にして、エサにすれば、また新しいBrewed Proteinを作ることができます。これまでは自然界のエコシステムに対して人工的なものを介入させることで環境を壊していたのを、新しいバランスで調和し、循環可能にすることが可能です。

これからの世の中で、たんぱく質の素材が求められる時代が来るということをイメージしていただきたいです」

今後のサスティナブルファッションの展望

ゴールドウイン社の渡辺氏は、今後の展望について次のように締めくくった。

「『循環をしていく』ということが大事です。回収して新たな原料として使いまわせるような技術を開発していきたいです。大切なのは意識を高めること。できる限り意識のある方に提案して、多くのアパレルメーカーやモノを作る人にBrewed Proteinを使ってもらえる機会を増やしていく。一つの会社でやるレベルではなく、地球規模で地球の持続可能を考える、一つの進化のための種と考えています」

同社は2021年に長期ビジョン「PLAY EARTH(プレイ・アース)2030」を策定した。そこで定められた一つ「環境負荷低減素材への移行」をさらに加速させたいと渡辺氏は述べる。

「2030年までに製品と材料の廃棄をゼロにするとともに、私たちの生産するすべてのプロダクツの商品の90%を環境負荷提言素材で作りたい。そのうちの10%をBrewed Proteinに置き換えることを目標にしています。Spiberとの取り組みが、世界の暮らしを大きく変革させるテクノロジーになると私たちは信じています。今後も共同開発を加速していきたいです」

新素材による環境配慮の繊維は可能性があるが、一方で開発面と価格面に特に課題があることがわかった。課題解決の第一歩は、消費者が意識を高め、積極的に使うことであるようだ。

【取材協力】
ゴールドウイン「未来を見据えて~Spiber株式会社との共同開発 構造タンパク質「ブリュード・プロテイン」~」

取材・文/石原亜香利

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