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ICカードが普及した今、なぜJR東日本は「QR乗車」を始めるのか?

2023.04.19

QR乗車の開始でチケットレス化が加速

2024年度以降、JR東日本はQRコードを利用した乗車サービス(以下、QR乗車)を順次開始するという。ウィズコロナ・ポストコロナ社会における「非接触」のニーズに応えるため、またSDGsの観点から持続可能な社会実現のために、Suicaを軸とした「きっぷ」のチケットレス化を推し進めている。そのチケットレス化の1つの手段として、QRコードに白羽の矢が立った格好だ。

開発中のえきねっとアプリの画面イメージ。表示されたQRコードを対応する自動改札機にかざすことで、通過できる。

乗車券類を予約・購入する際に、ブラウザ・もしくはアプリの「えきねっと」にて「QR乗車」が選択できるようになるのだという。チケットの購入後は、スマホからえきねっとアプリを開いてQRコードを表示。そのQRコードを、自動改札機にかざすことで通過できる仕組みだ。

QRコードに対応した新型自動改札機の設置も徐々に進められている。2022年12月から老朽化した自動改札機の交換が始まり、同月11日にはJR代々木駅、同月18日には宇都宮線東大宮駅の自動改札機が取り替えられ、QRコードに対応した新しい自動改札機が導入された。

この新型自動改札機は、それまでのSuicaなど交通系ICカードや磁気切符を利用して通過する従来の改札機に、「QRコードのチケットレス乗車」機能を付け加えたもの。すべての改札機をQRコード対応の新型自動改札機に置き換えていくのではなく、「QR+IC」「QR+切符」「QR+IC+切符」「IC+切符」といった設置パターンで、各駅の利用条件に応じて適切に配置していくことになるだろう。

QRコードの読み取りの場合は、ICカードのように「タッチ」ではなく「かざして」読み取らせる必要が出てくるため、ICカードよりスムーズさに欠けて渋滞が起きてしまうのでは? と不安に思う人もいるかもしれない。その点について、JR東日本広報より回答をもらった。

「QRコードを使用したサービスに関して、お客さまのご利用には支障のない程度の処理性能となります。QRコードのかざし方による体感の違いはあると考えますが、ICカードと同等レベルの処理性能を目標としています」(JR東日本広報)

交通系ICカードとQR乗車は競合しない?

そもそも、「Suica首都圏エリア」と呼ばれるSuica対応(一部対応も含む)駅の広範な地域において、約95%の鉄道利用者は交通系ICカードを使用して電車に乗っている。これほどまでに、ICカードが普及しているのであれば新たにQRコードを利用する必要はないのではないか? と思う人もいるかもしれない。

「QRコードを使用した新たな乗車サービスの導入により、 ICご利用エリア外を含む移動もチケットレスにてシームレスなご利用が可能となります。ICカードをお持ちでないお客さまのご旅行や、現在は『新幹線eチケット』や紙の切符を組合せてしかご利用になれない区間であっても、ひとつのQRでご乗車いただくことができます。今後もSuicaエリアの拡大を進めていくと共に、お客さまのご利用状況にあわせ、必要なチケットレス施策の推進を行ってまいります」(JR東日本広報)

JR東日本によるプレスリリース(2022年11月8日付け)では、QR乗車の利用イメージとして、岩手県の上盛岡駅から東京都の新宿駅までの区間が例としてあげられている。遠方に旅行や出張で出かける際、ICカードや紙の切符を使わなくても、スマホのQRコード1つで移動できるようになるということだ。

QR乗車の利用イメージ。1つのQRコードに集約して、シームレスに新幹線や在来線を利用することができる。

一般に新幹線を利用する場合、特急券と乗車券の2枚分の券を購入する必要があって、紛失のリスクなど切符を管理する必要も出てくる。

現在、新幹線にチケットレスで乗車できるサービスは「新幹線eチケット」と「タッチでGo!新幹線」の2つ。

新幹線eチケットは、QR乗車と同じくえきねっとから購入できる特急券と乗車券がセットになった商品だ。ただ、新幹線eチケットの利用には、ICカードを登録する必要がある。

タッチでGo!新幹線は、初めて利用する場合は駅の自動券売機等での利用登録かスマホのSuicaアプリ上でタッチでGo!新幹線の利用設定をONにしておく一手間が必要だが、以降はICカードの残高から運賃料金分が差し引かれて新幹線の自由席に乗車できるようになるサービスだ。当然ながら、こちらもICカードの利用が必須となる。

今後、SuicaなどICカードが利用できる駅も増えていくだろうが、例えば関東でも烏山線(栃木県)や久留里線(千葉県)などSuicaが使えない路線も存在する。また、ICカードはJR各社によって利用可能エリアが定められている。例えば、新潟県の駅から在来線を使って関東の駅に移動したとしても、「新潟エリア」「首都圏エリア」でエリアをまたぐ形となりICカードを使っての下車はできない。

事前にえきねっとで乗車券類を購入してQRコードを表示できるようにすれば、仮に無人駅であっても駅での手続きなく乗車して、降車もしくは乗換駅でQRコードをかざすことで、スマホ1つで新幹線も含めて電車の利用ができるようになる。

つまり、普段首都圏エリア内で移動するだけの人は、これまで通りICカードを利用した移動で問題はなく、「ICカードが使えなくて不便だ」というポイントの利便性を高める狙いがあるようだ。

これからはQR乗車“も”利用できる

QRと言えば、「PayPay」などQR決済サービスが頭に浮かびやすい。将来的に、QR決済サービスで乗車券類の予約・購入は行われるのだろうか。

「『〇〇Pay』のようなQR決済サービスでの乗車券類の予約・購入の導入予定はございません」(JR東日本広報)

あくまでQR「乗車」が目的であり、乗車券類をQRコード化して表示し、ICカードや磁気切符を使用せずとも自動改札機を通過できるようにすることと、乗車券類の予約・購入のためにQR決済サービスを使うということは、まったく別の話ということだ。

現在のところ、QR乗車では「定期券」や「周遊券」の導入予定はないそうで、ICカードや磁気切符と完全な互換性があるわけではないようだ。

QRコード読み取りが可能な新型自動改札機の設置は、JR東日本以外のJR各社や相互乗り入れを行っている私鉄でも今後検討されていくだろうが、ICカードを使用して乗車する利用者が主流であることは変わらない。ただ、「困った時の選択肢」として、QR乗車の存在を覚えておくといいかもしれない。

文/清談社・小森 重秀

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