4月16日のFC Girasole(ジラソーレ)戦で監督初勝利を挙げた槙野(筆者撮影)
「監督になりたい」と踏み出したセカンドキャリアの第一歩
「主役である選手を最高に輝かせられる監督になりたい。『あの監督、面白いよね』って思ってもらえる監督になりたいです」
2022年12月26日。17年間のプロサッカー選手生活にピリオドを打った2018年ロシアワールドカップ(W杯)日本代表の槙野智章は力強く宣言した。自作のパワーポイントで自らのビジョンを熱っぽく説明した引退会見には、女優の妻・高梨臨さんも駆けつけ、華やかな現役ラストとなった。
2022年12月26日の引退会見。プレゼン形式で進められた(筆者撮影)
メディアにビジネスにと引っ張りだこ
そして2023年になり、槙野劇場の第2章が本格的にスタートした。
サッカー界きっての明るさとトーク力、人脈の広さを誇る「お祭り男」だけに、当然のごとくメディア系の仕事は次々と押し寄せる。現在も「DAZN」や「ABEMA」、NHKなど地上波のサッカー中継で週数回は解説を務めており、バラエティ番組などへの露出も数多く見受けられる。
今月からは日テレ系「DayDay.」の月曜日コメンテーターに就任。同局の4月20日放送のバラエティ「THE5連覇無双【超一流料理人が方が肩書隠して勝負】約2区&鮨2大グルメ対決」などにもゲスト出演するなど、彼の姿を見ない日がないほどだ。
ある意味、引っ張りだこの状態で、彼は「サッカーを盛り上げる」という壮大なテーマに向かって突き進んでいる。
カタールW杯で解説を務めた際に小野伸二、内田篤人らと記念写真も(筆者撮影)
一方で、槙野は2018年9月に創業した株式会社ハルテンジャパンリミテッドの代表取締役CEOとしてビジネスにも力を入れている。
「ヘアケアを中心としたブランドとしてハルテンを立ち上げた当初から、スキンケア商品をずっと気に留めており、自分の手で納得いくものを作って世の中に届けたいと思っていました。肌ケアをすることが自信につながり、いい笑顔が生まれるとパフォーマンスの向上にもつながっていく。そう考えています」と昨年6月のメンズコスメリリース時にも語っていたが、今も新商品開発や営業活動に余念がないという。
普通に考えれば、解説・タレント・会社経営の3本柱を成り立たせるのは至難の業だが、彼にはさらにもう1つの顔がある。それが、神奈川県社会人リーグ2部・品川CCセカンドの指揮官。3月から指導を始め、平日は火・水の21時からのトレーニングと土日の練習・試合に赴いて、仕事とサッカーを両立させている選手たちと真剣に向き合っているのだ。
元代表DFの最大の目標は、冒頭の通り、Jリーグの監督として活躍すること。そのために、いくら別の活動で多忙であっても現場に駆けつけ、選手と向き合う時間を大切にしたいという強い思いがある。その熱意を品川CC側も受け止め、槙野のスケジュールに最大限寄り添う形での受け入れを決めたのだ。
真剣な表情で選手に指示を送る槙野(筆者撮影)
しかも、トップチームではなく、若手中心のセカンドを任せることにしたという。トップチームには元Jリーガーもいるが、セカンドは予備軍の集団。それだけ選手の伸びしろは大きいということだ。指導者として発展途上にある自分を高められる環境を与えてくれたクラブに感謝しつつ、槙野はピッチに立っているのである。
「自分のやりたいサッカーをどうしたら言語化して選手たちに落とし込めるかというのが1つ試されるところ。監督に理想はあるけど、落とし込めない人が沢山いると思うんです。どうしたら伝わりやすいかを工夫しないといけないし、選手に寄り添わないといけない。そこを第一に考えてやってます」と彼は目を輝かせる。