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〝不治の病〟がなくなる日は来るのか?生存率が大幅にアップした医療の最新事情

2023.05.11

多くの人が元気に長生きできる時代になったのは、医学の進歩の影響が非常に大きい。不治といわれる病を治すため新薬の研究が世界中で進む中、最新の医療の〝新常識〟と〝熱い話題〟を追った。

この30年で世界の医療は超スピードの進歩を遂げた

 かつては治療が困難で、多くの人が死を恐れた病気でも、治療法が確立してきたものが数多くある。例えば結核やコレラ、ペストなどのように外部から侵入した病原体が疾病を起こすものは、原因となる菌を特定できたことで、抗菌薬が開発され、治るようになった。

 人間の体の中の構造をミクロな単位で理解しようとする分子生物学が発展したのは1970年以降。そして2000年に入ると人の遺伝子配列を解析する技術も進み、病気の構造が詳しくわかるように。それを解析して得た情報をビッグデータ化できる時代になった。

 今、日本で使える薬の数は、「処方薬」と「市販薬」を合わせると、何と約2万5000種類もある。数多くある疾病に対して〝何を投与すればよいのか〟という情報が着実に築き上げられているわけだ。

 薬に頼らない治療でいえば、手術や放射線治療の技術も向上している。まだ治療法として確立されていない数多くの病気があるものの、ここ30年ほどで世界の医療は革新的に進歩し、多くの人の命が救われてきた。

かつての「不治の病」に対抗策が続々登場!

かつての「不治の病」に対抗策が続々登場!

治る病気と進行を抑えられる病気

「死亡原因1位のがんに、効果的な治療法が確立されてきた」

村上和巳さん医療ジャーナリスト  村上和巳さん
医療専門紙記者を経てジャーナリストとして活動。国際紛争、災害・防災なども取材する。近著に『二人に一人がガンになる』(マイナビ新書)などがある。

 かつては罹患すると数年もすれば死ぬといわれていた病気が、継続して治療することで寿命を全うできたり、著しくQOL(生活の質)を下げてしまうような病気でも薬によって進行を抑制できるようになってきました。

 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)のように、ウイルスが感染することで身体に大きな弊害をもたらすものは、まずウイルスの特性を研究。そして、体内でウイルスの増殖を防ぐような抗ウイルス薬の開発が進められます。

 がんも発症した部位によっては、治らない病ではなくなってきました。がん治療といえば「手術」「放射線治療」「薬物療法」の3本柱でしたが、がんの特徴がより詳しくわかってきたことで薬物治療の新たな軸として「免疫治療」が出てきました。

「免疫治療」で使われるのが免疫チェックポイント阻害剤です。有名な薬が「オプジーボ」。メラノーマという皮膚のがんは、オプジーボの登場で、劇的に状況が変わりました。がん細胞はある段階に達すると、人間の免疫細胞にブレーキをかけてきます。そのブレーキを抑制することで、人間本来の免疫力を目覚めさせ、がんと闘わせる。これが免疫チェックポイント阻害剤です。

 そのほか、生存率が大幅にアップした病気が、慢性骨髄性白血病。20年ほど前までは、抗がん剤を投薬し、脱毛や吐き気などつらい副作用に耐えたとしても発病後2〜3年で多くの人が亡くなってしまう病気でした。しかし、慢性骨髄性白血病特有のがん細胞を成長させる酵素が特定され、その働きをストップさせる治療薬ができた。薬を飲み続けることで、多くの人が天寿を全うできるほどです。

 ほかにも、私が注目している最近臨床試験が行なわれたばかりの研究が、心不全の人の壊死した心筋をiPS細胞を使って復活させるという取り組み。実現すれば、死亡者数第2位の心疾患の数字も大幅に変わるでしょう。

予防できる病気

「重篤な病気でも、事前に対策できるようになりつつある」

尾崎章彦さん常磐病院  尾崎章彦さん
外科専門医、乳腺外科専門医、消化器外科専門医。2010年東京大学医学部卒業。被災地の医療に貢献したいという思いから2012年に福島県に移住。

 病気によっては原因となる要素が解明され、罹らないように対策ができるようになってきました。幼い頃に風疹やはしかなどいろいろなワクチンを打ってきている人が多いと思いますが、今も予防といえばワクチンが主な選択肢です。

 実は、がんに関しても予防できるワクチンがあります。がんには、乳がんや大腸がんのように複数の原因が考えられ予防が難しいがんと、子宮頸がん、胃がん、肝細胞がんのように、大きな原因となる要素が特定されているものがあります。

 子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因。子宮頸がんは罹患してしまうと進行スピードが速く、転移もしやすい。なぜなら子宮頸部はほかの臓器の構造と近く、すぐにがんが周りに広がるためです。前がん段階といわれる、子宮頸部異形成ですら、手術で病変部の切除が必要なケースもあり、早産や流産のリスクにもなります。一般に子宮頸がんの治療は大変で、リンパ浮腫などQOLの低下にもつながるため、予防するという意識がとても大切ながんです。

 胃がんの原因も複数あるものの、ピロリ菌の影響が大きいことがわかってきました。ピロリ菌を除菌することで、胃がんのリスクを大幅に下げられるといわれています。

 そして、予防とともに大切なことが、病気を早期発見すること。早期であればあるほど治療が楽であり、治る確率も高まる。術後のダメージも少なく回復が早いです。特に今導入が進んでいるのが、画像診断+AIです。胃カメラや超音波検査は人がリアルタイムに行なうため、その人の技量にかなり精度が左右されます。AIが自動認識できると、経験の浅い人だとしてもベテランと同じレベルまで判別することができるようになります。乳がんのマンモグラフィーでは、読影した時に「これが怪しいです」と指摘するようなソフトウェアも出てきました。

予防できる病気

取材・文/田村菜津季

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