ビジネスシーンで「仕切り」という言葉を聞いたことがある方も多いだろう。「仕切り」は、主に流通業界において、価格を表す専門用語「仕切り価格」の省略形として使われるが、場合によっては違う意味合いで使われることもある。
そこで本記事では、「仕切り」が表す主な2つの意味と、「仕切り価格」とよく似た「卸価格」や「小売価格」の意味、また仕切り価格の計算方法や英語表現を紹介する。ぜひこの機会にチェックしておこう。
ビジネスで使われる「仕切り」の意味とは?
ビジネスシーンで使用される「仕切り」には、主に2通りの意味がある。業界や、会話の中での前後の文脈によって意味合いが異なるため注意が必要だ。ここからはそれぞれの意味を見ていこう。
価格を表す「仕切り」
流通業界では、メーカーが自社の商品を卸売業者に販売する際の販売価格のことを「仕切り価格」と呼ぶ。仕事現場では、「仕切り値」や「仕切り」という呼び方がされる場合もある。また、「ネット価格」「下代(げだい)」も「仕切り価格」と同じ意味で使われる。業務形態や取引の中身によってはニュアンスが変わることもあるため、注意が必要だ。
責任の所在を表す「仕切り」
ビジネスシーンでは、責任の所在を表すために「仕切り」という表現が使われることもある。自身が責任を持って物事に取り組む「取り仕切る」を名詞化したもので、例えば「その工程は〇〇の仕切りで進めていて、今待ちの状況だ」のような形で使用できる。
また、会議や話し合いの場でその場の進行役のことを「仕切り」と呼ぶ場合もある。SNSで最近話題となった「おっさんビジネス用語」として取り上げられた単語の一つで、主に年配者を中心に用いられることが多い。
仕切り価格と混同しやすい、価格を表す用語
流通業界には「仕切り価格」以外にも価格を表す用語が存在する。ここからは、よく聞く「卸売価格」や「小売価格」との違いについて見ていこう。
卸売価格とは
卸売価格は、卸売業者が小売店に商品を販売する際の価格のこと。商品の種類や需要・供給状況、市場競合状況などによって設定価格は変動する。卸売価格は、卸売業者と小売店の二社間で行われる価格交渉によって決定されることが多く、交渉力のある小売店や大量仕入れをする業者は、より安い価格で商品を仕入れる傾向にある。
小売価格とは
小売価格は、商品を最終的に消費者へ販売する際の価格を指す。小売店は仕入れ価格に適切な利益を上乗せした価格を設定しなければ利益の確保ができず、ビジネスの維持も難しくなる。しかし、実際には商品の仕入れ価格やコスト以外にも、マーケティング戦略、競合状況、需要・供給状況などのさまざまな要素を加味しながら価格が設定される場合が多く、競合店舗との差別化を図るためにあえて小売価格を低めに設定するケースもある。
仕切り価格の計算方法
次に、仕切り価格の計算方法を解説する。仕切り価格がどのように決まるのかを知ることで、普段購入している商品の原価についてもイメージしやすくなるかもしれない。
仕切り価格を表す「掛け率」とは
商品の販売価格に対する原価の割合を「掛け率」という。例えば、原価100円の商品を150円で販売する場合の掛け率は1.5となる。つまり、販売価格は原価の1.5倍だ。
掛け率の相場は業界ごとに異なる。例えば、アパレル業界では50〜60%程度、食品・おもちゃ業界では70%、飲食業界では40%程度が掛け率の目安といわれている。また、売れ残り品や企業が戦略的に目玉品にした商品やサイズや色が偏った商品などのセール商品・人気商品は掛け率が低くなるほか、卸す側と仕入れる側の事情やトレンド、消費者のニーズによっても掛け率は変動する。
仕切り価格は、定価に掛け率をかけたもの
仕切り価格は、消費者が購入する際の定価に掛け率をかけることで求められる。例えば、定価2,000円の商品の掛け率が80%である場合は、2,000円×0.8=1,600円が仕切り価格となる。
「仕切り」を意味する英語表現
最後に「仕切り価格」「取り仕切ること」を表す英語表現をそれぞれ紹介する。仕事で英語を使う機会がある方はぜひ覚えておこう。
仕切り価格を表す英語表現
「仕切り価格」と同様の意味を表す英語表現としては“settlement price”が挙げられる。ちなみに、金融業界では「決済」「清算」を表す用語として“settlement”がよく使われる。
【例文】
The basic settlement price for this book is JPY 1100, but we’re offering it for JPY 900 as part of our promotion.
(この本の仕切り価格は1,100円ですが、当社のプロモーションの一環として900円で販売しています。)
取り仕切ることを表す英語表現
「担当する」「受け持つ」といったニュアンスを表したい時に使える熟語としては“be in charge of”や“to take charge of”が代表的だ。また、“to take responsibility for”には、「責任を負う」「請け負う」という意味があり、より責任感を強調したい場合にぴったりの表現といえる。
【例文】
He is in charge of conducting market research and gathering customer feedback.
(彼は市場調査と顧客フィードバックの収集を担当している)
He takes charge of managing project resources and allocating them effectively.
(彼はプロジェクトのリソース管理と効果的な割り当てを担当します)
She takes responsibility for troubleshooting any technical issues that arise during the project.
(彼女はプロジェクト中に発生するテクニカルな問題に関してトラブルシューティングを請け負っています)
文/編集部