年配者の間でよく使われていたビジネス用語の一つに「鉛筆なめなめ」がある。最近ではあまり使われなくなり、死語と化しつつあるため、若い世代の中には意味を知らないという方も少なくないだろう。
そこで本記事では、「鉛筆なめなめ」の意味や由来をはじめ、使い方や言い換え表現を紹介していく。この機会にぜひ、正しい使い方を覚えておこう。
鉛筆なめなめとは?
まずは、「鉛筆なめなめ」の意味と由来について確認していこう。
意味
「鉛筆なめなめ」には、大きく分けて2つの意味がある。まず、書類上の記述をつじつまが合うように(悪く言えば、でっち上げる)操作してごまかすこと。また、文書がより良くなるように丁寧に磨き上げて再検討することを表して使われることもある。
鉛筆なめなめの由来
鉛筆の質が今ほど良くなかった時代には、書いた文字がかすれてしまうことも多かったという。芯の先を舐めて湿らせると、黒々となめらかに書くことができることから、書類に文字を書く際に鉛筆の先を舐める癖のある人もいた。このことから、一生懸命苦労しながら考えて書くこと、さらには書類の情報を操作することの例えとして「鉛筆なめなめ」という言葉が使われるようになったとされている。
鉛筆なめなめの使い方
次に、「鉛筆なめなめ」の使用シーンと例文、使用時の注意点について見ていこう。
使用シーン・例文
ビジネスシーンでは、完全に嘘の記述とまではいかないものの、完全に正直なデータとは言えない曖昧な変更を加えることを表して使われることが多い。また、書類の完成度を高めるためによく考えることを意味するためにも使うことができる。
【例文】
・「この営業成績の報告書、鉛筆なめなめしといてくれる?」
(営業成績が振るわず、提出先に対してこちらが都合の悪い状況の時に、書類上のデータをこちらの都合の良いように曖昧にごまかして変更してほしいことを表すニュアンス)
・「〇〇の企画書、明日までに鉛筆なめなめしといて」
(企画書がより良くなるようによく考えて丁寧に再検討してほしいという意図がある)
使用時の注意点
「鉛筆なめなめ」という比喩表現を使う時は、意味が通じる相手かどうかを見極める必要がある。また、かしこまった表現ではないことから、目上の人や社外の人への使用は避けた方が良いだろう。使う相手を誤ると、よく理解されず、コミュニケーションにトラブルが生じてしまう場合もあるため、注意が必要だ。
「鉛筆なめなめ」の言い換え表現
「鉛筆なめなめ」の言い換え表現としては、「改ざん」「熟考」が挙げられる。ここからは、それぞれの具体的な意味を確認していこう。
改ざん
改ざんとは、文書などの字句を悪用目的で勝手に直すことを意味する。「鉛筆なめなめ」の「書類上の記述をでっち上げて操作すること」と同様の使い方ができる。
【例文】
「私の同僚は自社の利益のために報告書を改ざんした」
「公的文書を改ざんする行為は、あってはならないことだ」
熟考
熟考は、念を入れてよく考えることを意味する言葉。
【例文】
「その企画について私たちは熟考を重ねた」
「その問題について熟考した上で解決策を講じたい」
その他のおっさんビジネス用語
最後に、「鉛筆なめなめ」と同様、かつてよく使われていた「おっさんビジネス用語」をいくつか紹介する。この機会にぜひチェックしておこう。
ボールを持つ
責任の所在や仕事の担当者を表す比喩表現。野球やサッカーの世界では、ボールを持つ選手が、その瞬間において責任重大なポジションとされることから、生まれた野球用語がビジネスの現場でも用いられるようになったとされている。
ケツカッチン
その後の予定が詰まっていて、拘束時間に制限がある、余裕がない状態を指した業界用語。もともとは、映画やドラマの撮影現場で使われていたが、その後、映像業界以外でも使われる流行語として広まったと言われている。
テープを回して
「録音しておいて」という意味で使われる言葉。「テープを回して」の「テープ」は、今で言うボイスレコーダーなどの録音機のことを指す。現在は、死語になりつつある言葉でもあるが、現在も年配の世代の人たちを中心に使われることがある。
文/編集部