家庭での掃除に使われることもある重曹ですが、具体的にどのようなものなのか知らない人もいるでしょう。そこで、重曹の種類や特徴と併せて、掃除に用いる際の効果的な使い方を場所別に紹介します。食用としての使い方や注意点も確認しましょう。
「重曹(炭酸水素ナトリウム)」とは
重曹は、『NaHCO3』という化学式を持つ『炭酸水素ナトリウム』のことで、『重炭酸ソーダ』と呼ばれることもあります。重曹の種類や掃除に使われる理由、クエン酸との違いについて見ていきましょう。
掃除用と食用で違いがある
重曹は、『医療用』『掃除用』『食用』の3種類に分かれます。医薬用としては、胃薬をはじめ、さまざまな医薬品や点滴などに幅広く使われています。
掃除用は工業用として販売されており、スーパーや薬局で日用品や洗剤などと一緒に売られているものです。食用は『食品添加物』として販売されており、調味料やお菓子売り場に置かれています。
食用は掃除用として代用できますが、掃除用を食用に使うことはできません。食用のように『食品衛生法』に基づいて製造されていないためです。重曹を使用する際は、用途に合うものを用意しましょう。
重曹が掃除に使われる理由
重曹が掃除に使いやすいとされる理由の一つは、自然由来であることです。特に小さい子どもやペットのいる家庭では、人体や環境に負担の少ない安心な成分を使った『ナチュラルクリーニング』を心がけていることも少なくありません。重曹はナチュラルクリーニングのアイテムとして人気なのです。
また、重曹は弱アルカリ性であるため、ガスやIHコンロの軽い油汚れに強いという特徴もあります。水に溶けにくいため、クレンザーとしても優れており、鍋の焦げ付きなどを落とすことも可能です。
消臭作用もあり、冷蔵庫や排水口の掃除や消臭にも役立つなど、さまざまな用途に使えます。
クエン酸との違い
クエン酸も自然由来であるため、ナチュラルクリーニングに使われることが多い成分です。重曹との大きな違いは、クエン酸が酸性である点です。
アルカリ性の汚れに強く、キッチンや浴室の水あかやトイレの尿石などの掃除に適しています。除菌力や消臭力にも優れているので、まな板などの除菌や消臭にも使えます。
ただし、塩素系の洗剤と混ぜると有毒ガスを発生させるため、注意が必要です。アルミや鉄、大理石などに使うと劣化や変色する恐れもあるため、実際に使う前に使用可能な素材か確認しましょう。
重曹の使い方【掃除用(水回り)】
毎日のように使用する水回りは汚れやすい場所で、日頃から小まめに掃除することが大切です。重曹を使った水回りの掃除方法を場所別に詳しく紹介します。
ガス・IHコンロの油汚れに
揚げ物をした後などは、特にガスやIHコンロに油汚れが付きやすくなります。きれいに落とすには、100mLのぬるま湯に重曹小さじ1杯を混ぜて作った『重曹スプレー』がおすすめです。汚れている部分にスプレーを吹きかけて、布やペーパータオルなどでしっかり拭き取りましょう。
五徳の汚れには、『重曹で煮洗い』が適しています。水100mLに対し小さじ1杯の重曹を鍋に入れます。鍋に五徳を入れ、10分煮ましょう。その後、10分冷ましてから歯ブラシなどを使って汚れをこすり落とし、最後に水ですすぎます。
電子レンジを簡単に掃除
電子レンジの汚れの掃除は簡単で、重曹を水で溶かしたものを電子レンジで加熱するだけです。重曹水からの水蒸気が庫内に行き渡り、汚れを浮き上がらせてくれます。
まず、耐熱容器に水1カップに対し大さじ1杯の重曹を溶かし、500Wで約5分加熱しましょう。加熱後は、電子レンジのドアを閉めたまま約15分放置してから、庫内を水でぬらした布などで拭きます。
こびりついて落ちなかった汚れは、歯ブラシなどに重曹を付けてこすって落としましょう。
レンジフードをピカピカに
レンジフードや換気扇カバーの掃除は、重曹スプレーが便利です。スプレーを吹きかけて汚れを浮かび上がらせ、布やキッチンペーパーなどで拭き取りましょう。
ファンやフィルターなどは、汚れがこびりついて落ちにくいこともあります。その場合は、重曹水を染み込ませたキッチンペーパーを乗せて、しばらくつけ置きすると落ちやすくなります。
水で溶かした重曹を入れた容器の中に、ファンやフィルターを入れてつけ置きする方法もおすすめです。細かい箇所は歯ブラシなどで掃除するとよいでしょう。
なお、後述しますが、重曹が使えない素材のレンジフードや換気扇もあるため、注意が必要です。
放置でOKお風呂の浴槽
お風呂の浴槽の掃除は、時間や手間がかからない、重曹を使ったつけ置きがおすすめです。基本的にスポンジやブラシでこする必要がないため、浴槽に傷を付ける心配もありません。
まず、浴槽の残り湯が温かいうちに、約1カップの重曹を溶かします。その中に、洗面器や風呂用の椅子、浴槽のふたなどを入れて、一晩つけ置きしましょう。
翌日に浴槽の水を流し、浴槽とつけ置きしたものをシャワーで流します。落としきれなかった汚れは、スポンジやブラシでこすって落とし、水気を取ります。
重曹の使い方【掃除用(リビング・玄関)】
重曹は、水回り以外の掃除にも活躍します。汚れを落とすだけでなく消臭作用があるため、リビングや玄関の掃除にも取り入れてみましょう。
ラグ・カーペットの小まめな手入れに
ラグやカーペットは人が直接触れるため、ごみやほこりだけでなく、皮脂汚れも付着しています。掃除機では皮脂汚れは取り除けないので、重曹を使って小まめに手入れをしましょう。
まず、掃除機でごみやほこりを取り除きます。重曹を粉のまま、ラグやカーペットに振りかけ、ゴム手袋をはめた手で軽くなじませましょう。2~3時間放置した後に、掃除機で重曹を取り除きます。
ひどい汚れには、大さじ1杯の重曹と20mLの酸素系漂白剤を混ぜたものを塗って、しばらく経った後に拭き取る方法もあります。拭き取るときは、ぬらしたタオルを電子レンジで軽く温めたものを使い、たたくようにしましょう。最後に水を少しかけて乾いたタオルで軽くたたきます。
ただし、漂白剤を使用する際は、色落ちする可能性がある点に注意が必要です。
玄関タイル・靴箱の消臭に
靴に付いた泥汚れなどが付着している玄関のタイルの掃除にも、重曹が使えます。タイルに少量の重曹を振りかけて、湿らせたブラシでこするだけです。最後に雑巾で重曹を拭き取るか、水で流しましょう。
重曹は、靴箱の消臭にも使えます。口が広めの容器を用意し、重曹を7分目程度入れましょう。薄めの布やガーゼでふたをして、輪ゴムなどで留めます。
重曹を交換する目安は、2~3カ月です。ただし、重曹が固まっている場合は、湿気を吸い込んでいる状態であるため、交換しましょう。なお、使い終えた重曹は、掃除に使えます。
重曹の使い方【食用】
食用の重曹は、どのような使い方ができるのでしょうか?特徴や効果について紹介するので、日々の食事の準備などに役立てましょう。
料理の下ごしらえ
重曹は、さまざまな料理の下ごしらえに使えます。例えば、魚の調理をするときに、重曹を振りかけてから水で洗い流すと、ぬめりが取れます。1Lの水に大さじ1杯の重曹を溶かした重曹水で切り身を洗うと、臭みを取ることも可能です。
山菜や野菜のあく抜きにも使えます。重曹が繊維を柔らかくするため、あくが抜けやすくなるのです。1Lの水に対して小さじ1杯の重曹を入れて沸騰させたお湯に山菜や野菜を入れてゆでましょう。
また、野菜類をゆでるときにひとつまみの重曹を入れると、色が鮮やかになり見た目がよくなります。
生地を膨らませる効果
重曹は、ベーキングパウダーと同じく生地を膨らませる効果があるため、マフィンなどのお菓子作りなどに使われることが少なくありません。ベーキングパウダーの代わりに重曹を使うこともできますが、特徴や性質が異なるため、仕上がりに影響が出る場合もあります。
例えば、ベーキングパウダーは縦に膨らみますが、重曹は横に膨らみます。また、ベーキングパウダーは、焼き色や風味に影響しません。一方、重曹は焼き色が濃くなり、香りや塩味もあり、入れすぎると苦味が出やすくなります。
素材を柔らかくする効果
重曹は、肉や乾燥豆などを柔らかくする効果があります。例えば、肉を柔らかくしたいときは、肉に小さじ1杯の重曹をなじませ5分程度置きましょう。
時間があるときは、小さじ1杯の重曹を入れた250ccの水に肉を1時間程浸すという方法もおすすめです。焼くときに縮んで固くなってしまうことも防げます。
また、煮豆を作るときにもおすすめです。豆100gに対して小さじ1/3程度の重曹を入れて作ると、柔らかいながらも煮崩れしないふんわりとした煮豆に仕上がります。
重曹を使う際の注意点
重曹は自然由来の安全な成分ですが、使用する際に注意したいポイントもあります。実際に使用する前に、どのような点に注意したらよいのか確認しましょう。
素手で触り続けない
重曹は、入浴剤やパックなどのスキンケアアイテムに使われており、濃度が濃いものでも短時間であれば素手で触れても肌に影響がないといわれています。ただし、素手で長時間触り続けると、肌荒れを引き起こす場合があります。
長時間触れるときは、ゴム手袋をはめて肌を守りましょう。特に掃除に使用する場合は、思っていた以上に時間がかかることも多いため、最初からゴム手袋を用いるのがおすすめです。
また、人によっては短時間でも肌荒れを起こす恐れがあるため、ビニール手袋やゴム手袋をはめて対策しましょう。
使えない素材・場所がある
重曹はさまざまな用途に使える便利な掃除アイテムですが、使えない素材や場所があります。ステンレスなど柔らかい素材には注意しましょう。重曹には研磨作用があるため、傷を付けてしまう可能性があります。
アルミ素材の場合は、傷が付きやすいだけでなく、黒ずんでしまうこともあるため注意が必要です。
同様に注意したいのが、表面加工されていない木製のフローリングや畳の掃除時です。皮脂汚れを掃除しようと重曹を使ってしまうと、変色する可能性があります。ジュート素材のラグなどにも使用しないようにしましょう。
構成/編集部