ビジネスパーソンにとって、質の良い睡眠は命。睡眠周りのグッズの需要も高い。近年は寝具も進化が目覚ましいが、取り入れやすく睡眠の質に大きく影響をもたらしそうなのが「枕」だ。
進化系の枕が増えている中で、ヒットした2つの枕について、なぜ多くの人々に受け入れられたのか要因を探った。
1)太陽「ヒツジのいらない枕」
インパクトのあるネーミングの「ヒツジのいらない枕」は、株式会社太陽が2020年に応援購入サービスのMakuakeで初販売した際、目標金額30万円のところ、 6,000万円を超える応援購入が集まったことで、そのポテンシャルの高さを感じさせた。その後、シリーズ累計販売数9万個を超えるヒット商品となった。確かにヒツジを数える間もなく、「秒」で寝落ちできそうな予感がする。
「ヒツジのいらない枕ー至極ー」15,800円(税込)
まるで水に浮いているかのように、フワッと頭部を包み込み、同社いわく「ぷにょんぽにょん」な質感で寝心地が抜群。その他、さまざまな機能で寝落ちをサポートしてくれる仕様になっている。
代表取締役の川嶋 伶氏にヒットの要因や枕の特性、今後の展望について話を聞いた。
●ヒットの要因は?
「高品質素材と圧力分散構造が生み出す圧倒的な寝やすさとネーミングの2点をお客様に気に入っていただけたのだと思っています。
TPE(熱可塑性エラストマー)という素材を使用しており、丈夫で柔らかく、しなやかさがあるのが特徴です。本製品では、TPEにさらに消臭の性質がある活性炭も練り込んでいるため、長く使用しても匂いが気になりにくくなっています」
「また圧力分散構造とは、枕の形状を一般的な正方形格子から三角格子構造にすることで、頭部や肩に瞬時にフィットさせ、うまく圧力を分散させる構造のことです。寝入りが早くなったり、睡眠中の寝返りがしやすくなるなどのメリットがあります。
実際にお客様から『非常に楽な枕』『一度も目が覚めませんでした』などのお声をいただいております」
●ネーミングはどうやって決めた?
「実は、最初にMakuakeで皆さまに披露した際は、枕のフィット感を強調するために『モフィット』という名前にしていました。当時のMakuakeの応援購入でも目標金額を大幅に達成する応援購入をいただいた際、もっと『よく眠れる』という機能性と『ふわふわのヒツジ』という安心感をお客さまに伝えられないものかと考えているうちに、ふと、日本でもなじみのある、就寝時にヒツジを数える習慣を思い出しました。この習慣を、わかりやすくて覚えやすく、かつ、ユーモアも兼ね備えた名前に落とし込もうと意見を出し合って決まったのが、ヒツジを延々と数えなくていい枕 = 『ヒツジのいらない枕』でした。
大変ありがたいことに『日本ネーミング大賞2021』ルーキー部門の最優秀賞をいただきました。お笑い芸人の爆笑問題 太田 光審査委員長からは『想像力を掻き立てられる』『シュールで文学的』とお褒めの言葉をいただいています」
●最速の寝落ち時間は?
「一般の方にご協力いただいた実験は行っておりませんが、実際に私を含めた弊社社員全員で使用を開始してから、これまでより圧倒的に入眠のスピードが加速しました。『ヒツジのいらない枕」』=『ヒツジを数えることなく眠れることを目指した枕』ですので、『2秒で寝落ち!?』というキャッチフレーズはいわば『ヒツジのいらない枕』の代名詞のようなものと考えています。実際にお客様で、『製品が届いてちょっと試してみよう、とソファーで横になってみたら本当にいつの間にか寝てしまった』といったお声もいただいております」
「ちなみに睡眠の質に直結する『寝返りのしやすさ』の実験では、一般的な羽毛枕と比べて寝返りがしやすく、『ヒツジのいらない枕』では、流れるようにスムーズな寝返りが実現できるという結果が出ています。また通気性が良いため、熱を放出するために不必要に寝返りの回数が多くなることも予防できます」
●MOON-Xグループに入った理由
「株式会社太陽 代表取締役 川嶋 伶氏(左)とMOON-X株式会社 代表取締役CEO 長谷川 晋氏(右)
ところで同社は、2023年3月にMOON-X株式会社と共創型M&Aを果たし、統合した。
共創型M&AはMOON-Xが提唱する施策で、「どちらかがもう一方に吸収されるのではなく、お互いの強みを持ち寄り、一つのチームとなってブランドの更なる飛躍と継続的な成長を目指す」というもの。
ヒット商品を持つ太陽が、なぜMOON-Xグループに入ることに至ったのか。
「今後はより革新的な製品を開発し、グローバルも見据えるような広い視点を持つことが大切だと考えました。代表の長谷川さんを中心とした素敵なMOON-Xメンバーに出逢い、直感的に惹かれ、事業計画やブランドの将来のお話しをする中で、直感は確信に代わりました。MOON-Xの持つ経営資源も活用して、これまで以上にお客様に寄り添った製品を開発し、お客様に喜ばれる体験を提供し続けたいという思いがより一層強くなりました」
●今後の展望
「これまで太陽が大切にしてきた『驚きが愛着に変わる』こだわりのモノづくりをベースとし、ここにMOON-Xが持つデジタルやブランディング領域におけるノウハウや、他カテゴリーで培った知見をかけ合わせることで、今まで以上にお客様の生活に寄り添った製品を通じて信頼されるトップブランドを目指せると考えています。
最終的には世界中で『寝具やリラックス製品と言えば、ヒツジのいらない枕の太陽ブランド』というイメージの確立を目指します。そのために、日々お客様のニーズに耳を傾けながら、製品を購入してくださったお客様の生活が少しでも良くなる製品を開発し続けます」