発達障害と診断を受けた人は国内に48万人以上いるといわれている
電通においてDEI(※1)領域の調査・分析とソリューションの開発を専門に行なう組織「電通ダイバーシティ・ラボ(以下「DDL」)」(※2)と、電通メディカルコミュニケーションズ(※3)は、発達障害(※4)の診断を受けた子どもの保護者や、子どもの発達が気になる保護者を対象に実施した調査結果をもとに、子どもとその保護者の視点のギャップ(違い)を可視化した、課題発見支援ツール「GAP MIKKE(ギャップ ミッケ)」を共同開発した。
また同ツールを活用することにより、社会全体における発達障害への理解を深め、顧客企業とともに人々の暮らしの中の新たな課題を発見して価値共創を促すサービスの提供も開始する。
達障害の特性を起点とした課題発見やソリューション開発は多くの人にとって役立つ可能性
医師から発達障害と診断を受けた人は国内に48万人以上(※5)いるといわれている一方、その特性への理解は進んでいないという現状がある。
一方、発達障害の特性は他者からはわかりにくいこともあるため、社会全体での理解が進みづらく、その困りごとの解消に役立つ商品やサービスが少ないことも課題となっている。
さらに、その特性には「まぶしいのが苦手」「大きな音が苦手」「物事の見通しが立たないと不安」といった、程度の違いはあっても、発達障害の診断を受けていない人にも共通する困りごとが多くあるため、発達障害の特性を起点とした課題発見やソリューション開発は多くの人にとって役立つ可能性がある。
そこで今回DDLは、子どもの発達が気になる467組の家族へのオンラインアンケート、6組の家族へのヒアリングを行ない、困りごとや悩みに関して詳しく聞き取りを実施。
その中でも、発達に特性のある子ども側と保護者側では、同じひとつの事象に対しても感じ方や考え方にギャップがあることに着目し、第一弾として、家の中においてのギャップを可視化するツール「おうち育児 GAP MIKKE」の開発に至ったという。
視覚的にも特性を理解しやすいデザインを採用
調査で見えてきた家の中の育児におけるギャップを、部屋ごとのシチュエーションに分けてマップとカードで提示することで、視覚的にも特性を理解しやすいデザインを採用している。
このツールは、LITALICO 執行役員CQO(Chief Quality Officer)/LITALICO研究所所長の榎本 大貴氏、同社シニアスーパーバイザーで、Speech-Language Pathologist, CCC-SLP (米国の言語聴覚士国家資格)の増本 朱華氏、同社LITALICO研究所研究員で、作業療法士の野田 遥氏の監修のもとで開発された。
「おうち育児 GAP MIKKE」のマップとカードのイメージ
DDLと医療・ヘルスケア領域において知見のある電通メディカルコミュニケーションズは、今後もこのツールを活用したワークショップ・研修を通して、社会における発達障害の特性への理解を深め、課題を起点に広く顧客企業や教育機関、支援者とともにソリューション開発を進行。あらゆる人が暮らしやすい社会の実現を目指していくとコメントしている。
例えば、今回可視化したギャップに基づいた商品やサービスをハウスメーカー・インテリア用品小売業などと共同で開発することや、おうち育児から視点を広げ、教育現場の課題に特化した「みんなと学習 GAP MIKKE」や、商業施設での課題に特化した「おでかけ育児 GAP MIKKE」などへシリーズ展開することを検討しているという。
※1 「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」の略。社会における人々の多様性(ダイバーシティ)、公平性(エクイティ)、包摂性(インクルージョン)に関する課題と、それを高める対策のことを指す。
※2 2011年に創設。ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン視点で、自社と顧客の双方に対するソリューションの開発・提供を推進する電通の組織横断型専門タスクフォース。「ジェンダー」「障がい」「多文化」「ジェネレーション」の4つの主要テーマを中心に、20ほどの独自プロジェクトを約100名のメンバーで推進している。独自の調査・研究および外部の専門家・研究機関・当事者団体などとの協働を通じて、各種ソリューションの開発・提供、情報発信を行っている。
※3 「人々の”生きる”を支える」をビジョンに掲げ、医療用医薬品・医療機器のコミュニケーションに関する豊富な経験をもとに、メディカル・ヘルスケア領域に関わるさまざまなソリューションを幅広く提供し、同領域において電通グループをリードする専門会社。
※4 発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達の偏りによる障害。発達障害の分類は、自閉スペクトラム症(ASD)、ADHD(注意欠如・多動症)、限局性学習症(SLD)などに分かれており、本ツールにおいてはASDおよびADHDの特性に特化している。
※5 厚生労働省の「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」結果。
関連情報
https://www.dentsu.co.jp/news/business/2023/0406-010602.html
構成/清水眞希